百五拾二
6月21日(木)?時??分
「《コロシアム》」
俺は一言呟いて教室の扉を開いた。
扉の向こうには相も変わらず、すごい歓声と熱気。
やはりテンションを上げさせる【神器】でも使っているのかもしれない。
俺は鬼丸を構え、興奮渦巻く闘技場に飛び込んで行った。
6月21日(木)?時??分
【いやーやっぱりウルトラマンは強いね!】
【ええ、前回一度負けたのを除けば、ほぼ全勝ですからね】
【日に日に強くなってやがるな!闘いてー(≧∇≦)】
【さすがにまだあなたにはかなわないと思いますが…】
【そんなの関係ね~(≧∇≦)】
【はあ…とりあえず彼は次で三戦目です。次の対戦者は…おっと!彼もまた全戦全勝です】
【あ、こいつか!テンション上がってきたー!!】
【それではいきます…】
【【試合開始!!】】
6月21日(木)?時??分
歓声が【コロシアム】を埋め尽くし、熱気が闘技場を包み込んだ。
だが俺は一歩目を踏み出せなかった。
「…つね?」
「阿部ちゃん!」
今日最後の対戦者はつねだった。
総当たり戦だから当たり前だけど、知り合いと闘うのは初めて(たぶん)だ。
「ヒャッホー(≧∇≦)
まさか阿部ちゃんと当たるなんてラッキー☆≡」
つねはテンションMAXな様子で制服を脱ぎ始めた。
途端に観客席から上がる黄色い悲鳴。
「…はぁ」
まあつねの脱ぎ癖にはもう慣れた。
それにしてもよくこんな大勢に観られてる中で脱げるよ。逆に感心する。
「またあのおかめが脱ぎ始めたぞ!」
「なんて筋肉してやがる!」
「相変わらずすげーな、あいつ」
「大胸筋のあの引き締まりよう…!」
観戦席の反応を見るにつねは毎回こんな感じらしい。
…ということは一戦ごとに着脱を繰り返してるのかこいつは。
ともあれすでに試合は始まっている。
いくらつねでも負けるのはあれだし、全力でいこう。
それにしてもつねは上半身裸で準備体操をしているが、【神器】を出す気配もない。
「つね、トンちゃんさんは?」
一緒に修行をしていた時にはトンファーに鬼丸が防がれ、つねに致命傷を与えたことはほとんどなかった。
最近は一緒に修行する時間もないし、今のつねの実力は正確には分からない。
「ふっふっふっふ…」
何故かつねは奇っ怪なロボットダンスを始めた。
半裸のおかめ男のパフォーマンスに観客席からは拍手が!
「おれは試合で【神器】を使わないことにしたぜい!」
つねはロボットダンスを続けながらそう言った。
「童子切さんと闘って分かったんだ(‐ω‐)
おれに足りないのは危機感だと(笑)
よってさらなる縛りプレイを求めた結果、おれは1対1の闘いでは【神器】を使わないで闘うと決めた(ドヤ)」
そして自然な動作で斬馬刀を出現させる。
「って言ったそばから使ってるじゃん!」
つねの言動は無茶苦茶だった。
だがつねはさらに無茶苦茶な行動に出る。
「ああ、これ(ジミー)?これはこう使うんよ(ザクッ)」
つねは一切の躊躇いなく自分の左腕を肩の付け根から切り落とした。
「なっ…!」
「縛りプレイ追加~(笑)
おれはより不利な状態からさらに進化してみせるぜ(笑)」
吹き出す血を気にすらかけずにつねは斬馬刀を仕舞う。
そして次の瞬間には俺の目の前に移動していた。
「《縮地》が阿部ちゃんの専売特許だと思ったら大間違いだぜい?」
俺の体は¨巨大化した¨つねの右腕になぎ払われ、数十メートル先の壁に激突した。
6月21日(木)?時??分