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百五拾一

「村正」とは室町時代から戦国時代末にかけて、

伊勢国桑名にて三代続いた刀工の名で、その一派が打った作品の銘の事。


初代・村正は名工「正宗」の弟子だったと伝えられている。


村正一派の打った刀はどれも鋭い切れ味を持っており、

大きく波打つ波紋と刃の両面の波紋が揃っているのが特徴。


勿論、刀だけではなく短刀や槍も作り、特に短刀は数多く残している。


村正一派の刀が「妖刀」と呼ばれる様になったのは、

徳川家との因縁とその恐ろしいまでの切れ味の所為である。


家康の祖父・清康が家臣・阿部弥七郎によって斬り殺された際、使用された刀が「村正」であり、その切れ味の鋭さから、傷は右の肩先から左の脇腹まで達していたという。


父・広忠も家臣・岩松八弥にイキナリ斬り付けられて怪我を負ったが、この時の脇差がやはり「村正」であった。


また、家康自身も「村正」で何度か怪我をした事があり、

更に武田家との内通を疑われて切腹を命じられた息子・信康が、介錯の際に使用した刀も「村正」であった。


この様に何代にも亘って徳川家に何かと不幸を齎す「村正」は、次第に徳川家に反感を持つ者達に愛用される事となり、かの真田幸村や由井正雪も「村正」を愛用した。


その後、大衆の間で「村正」の噂が色々と脚色されて広まり、血を好む「妖刀 村正」として今に伝わっているのである。


6月21日(木)?時??分


【無制限共有フィールド・稲穂学園】


俺はまっすぐコロシアムに向かわずに2Lの教室の自分の机に座ってぼーっとしていた。


今日、いや昨日はいろいろありすぎた。


さすがに【シュールバルタの鏡】のときほどではないが、展開が早すぎて正直ついていけない。


あのまま気がつくと三日月(呼ぶときはともかく心の中では呼び捨てでいいや)は俺の【神器】として¨現実¨に留まっていた。


そして詳しい説明もないまま「…眠い」の一言で寝入ってしまった。


いくら他の人には見えないとはいえ、俺には見えるわけで、ああも無防備に俺の部屋で寝られてしまっては他のことに集中できるはずもなく。


…あれから時間を潰すのが大変だった。


とりあえず平常心に戻ってから【コロシアム】に行くとしよう。


【コロシアム】では時間の流れなんて気にしなくていいんだし。


6月20日(水)20時08分


中学校


すでに緊迫とした空気が数時間続いていた。


数回の接触を重ね、両者共に精神・体力が限界に近づいている。


¨夢¨や【無制限共有フィールド】ならばともかく、¨現実¨ではそこまでの体力も持久力もない。


いくら通常より活性化しているとはいえ生身である以上気合いで何とかなるわけではなかった。


宮崎は具現化させた【神器】のナイフや短剣を相手に向かって投げつけ、相手はそれを逆に投げ返して反撃する。


あくまでも具現化されただけのナイフや短剣のため、壁や学校の備品をすり抜けていくだけで傷はつけたりしない。


だが両者共に【神を堕とす者】の参戦者であるが故に常人には見えないし触れることもできない刃に傷を負っていた。


傷一つない校舎の陰では傷一つない衣服を身に纏けながらも全身服越しに傷だらけの二人が荒い息を整える。


激しい戦闘でありながら音もなく、跡もなく、ただ傷のみがある。


すでに両者はほぼ相手と自分の実力が同じだと体感している。


そして両者の手にはそれぞれ二本、ナイフと短剣が持たれている。


遠くで車のクラクションの音が聞こえ、両者は同時に動いた。


一瞬の邂逅。


そこで初めて両者は互いの顔を確認した。


6月21日(木)?時??分


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