百四拾六
6月19日(火)?時??分
目が覚めると、俺は巨大亀の甲羅の上で横になっていた。
すでに移動は止まったらしく、かすかに巨大亀の鼓動に合わせて揺れるだけだ。
「阿部君、起きた?」
首をめぐらせると、すぐそばに死んだはずのぎやまが座っていた。
「ぎやま…?」
「阿部君、体に違和感とかない?」
心配するようにぎやまがそう聞いてくるが、とくに変わったところはない。
体を起こして確かめてみるが、これといって痛むところもない。
「あれ…?」
うっすらと意識を失う前のことを思い出したんだけど…
「なんで腕があるんだ?」
確かフードを外した三日月を見て…
朧気にしか思い出せないが、確かに俺の体はバラバラにされたはず。
「…そういや、あいつが使った技って…」
あれは、《流水散華》は鬼丸の…
「なんともない?…よかった~。自分ならともかく他人の傷を治すなんて初めてだから失敗しなかったか心配で…」
なるほど、三日月にやられてバラバラになった俺の四肢をくっつけてくれたのはぎやまだったのか。
「そういえば三日月は?」
俺が聞くとぎやまは肩をすくめて(表情はすでにお面に隠されている)首を振った。
「オレが目が覚めたときにはもうどこにもいなかったよ。舞霞が言うには鬼丸さんと少し話してからどっか行ったらしい」
「鬼丸と?てかなんで舞霞が知ってるの?」
「え、知らないの?ここだとオレたちが死んでも【神器】は残るみたいだよ?まあ【神器】だけであんまり遠くまで単独で移動はできないみたいだけど。それにオレたちと違って【神器】は壊れて消えても時間が経てば持ち主の中に戻ってまた使えるようになるし」
「じゃあジミーは…」
ジミーは今頃つねの中で再生してるのか。
つねの中で…
「うっぷ…」
「どうしたの阿部君!?やっぱ治療失敗してた?」
「いや、ちょっとね…」
さすがに口に出して言いたくない。
あのジミーがつねの中で(ピ─────)(皆さんを不快にさせる内容だと判断し、削除します)。
ともかく今は、
「鬼丸」
三日月と何を話したのかが気になる。
…ついでに関係も。
『…なんだ』
「三日月とはどんな関係?」
つい好奇心のほうが上回ってしまった。
『……。』
黙秘された。
「じゃあ何を話してたの?」
今度は話してくれた。
『このフィールドについてあいつが分かるかぎりのことを聞いただけだ』
「へえ、じゃあもう一つ。なんで三日月は鬼丸の技を使えるの?」
俺の疑問に鬼丸は一拍おいてから答えた。
『…あれはもともとあいつの技だ。
それを俺が見て覚えたに過ぎん』
「え?」
《流水散華》が三日月の…?
『詳しい話は後で話してやる。とりあえず今は稲穂学園まで戻れ。学園の内部でなければ【無制限共有フィールド】からは目覚めることができねえからな』
6月19日(火)?時??分