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百四拾五

6月19日(火)?時??分


ヨワイカラ、シンダ?


ジブンデコロシテオイテ、ナニヲイッテヤガル


突如として心の奥底から黒々とした感情が沸き上がってくるのが分かった。


どうにかして抑えようとしたが…


コイツモオナジメニアワセテヤル


コロセコロセコロセ…!


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛!」


抑えきれずに声が洩れた。


『ちっ!』


「?暴走?」


『ああ、¨怒り¨の感情から¨悪夢の欠片¨が生み出された』


「怒らせた、覚えは、ないけど」


『お前は無自覚すぎる』


「これ…鬼丸殿を、吸収…してる?」


『一部だけだ。前にも一度だけあったが、こうなったらしばらく止まらん』


鬼丸と三日月のそんな会話が聞こえてきたが、俺の心は怒りで占められていた。


ぎやま…ジミー…


仇を…!


「あ¨あ¨あ¨あ¨あ¨!!!」


体中に力が溢れてくる!


「…しょうがない。…フードを、とる」


『…すぐ被れよ』


「当然」


体をドス黒い鬼気が覆っていく。


俺は感情のままに鞘に収まった鬼丸の柄に手をかけ、合ってないような三日月との差を縮める。


「…ふぅ、やれやれ?」


フードに手をかけた三日月の首に向かって抜刀した鬼丸を突き出す。


「《蒲公英・い…??」


まさに三日月を貫かんと突き出された¨鬼丸¨の切っ先は、僅か数ミリの差で止まっていた。


いや、止まらされた。


その¨あまりの美しさ¨に。


 6月19日(火)?時??分


「ん…効果、あり。でも少し恥ずかしい」


フードをとった三日月は無表情な顔をほんのりと朱に染め、透き通った水色の瞳を細めた。


肩のあたりで切りそろえられた、透き通るような髪は月光に似た白銀色。


月明かりに照らされて、かすかに金色に輝いている。


まるで雪のように白くきめ細かい肌にはシミひとつなく、唯一左手の甲にある三日月型の模様のみがその肌を彩っている。


その儚い表情と顔、そして天より授かった体はまさに奇跡としか言いようがない。


三日月宗近は自らの容姿の危険性から常にフードで姿を隠すことを戒めとしている(注目されるのが苦手というのもある)。


三日月のありのままの姿を見た者は、そのあまりの美しさに心を奪われ、どのような手を使ってでも三日月を手に入れようとしてしまう。


それはかつて三日月をめぐって戦が幾度も起こったことが証明している。


そんな三日月の姿を目の前で見てしまった阿部は、自らの内の怒りすら忘れて呆然としている。


「《流水散華》」


動かない阿部に三日月は容赦なくかつて鬼丸が放った技を打ち込んだ。


阿部の四肢が分断される。


それを確認した三日月は、再びフードで顔を覆い隠した。


6月19日(火)?時??分


「危機、一髪?」


『ああ、そのようだ』


「少年は?」


『今は意識を失ったようだ』


「そう」


『しかしこんなに早く¨堕ちる¨とは思わなかった』


「それは、この、フィールドに関係する…かもしれない」


『どういうことだ?』


「【無制限共有フィールド】」


『ああ、そいつの由来か?』


「そう。…ネーミングセンス、ゼロ」


『同感だ』


「カリヤ様がつけた」


『……。』


「【無制限共有フィールド】の無制限。【無制限共有フィールド】では一切の制限がなくなる」


『それは呪いや付加効果もか?』


「知らない。とりあえず、ここでは制限されていた事柄は存在しない」


『¨共有¨は現実との共有か?』


「たぶん」


『真相はやつの心の内のみ、か』


「そう」


『それで、これからどうするつもりだ?』


「私を御せるのは、カリヤ様のみ」


『…そうか』


「…とりあえず鬼丸殿のことは、私の口からは報告しない」


『いいのか?』


「私は私。ただそれだけ」


『…そうだったな』


6月19日(火)?時??分

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