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百四拾二

6月19日(火)?時??分


どれくらい進んだだろう。


最後にサイのようなゴリラのようなあいつと遭遇したのは30分ほど前。


そして今は…


「さすがにあれはないだろ…」


目の前、いや数百メートル先に月明かりに照らされた山があった。


大き過ぎて目の前にあるように錯覚するほどの存在感。


遠目に見ておそらく巨大な亀みたいなやつだと思う。


時間的に辺りはほぼ真っ暗だが、その亀自身がかすかに発光しているのか、月明かりと合わさってよく見える。


なんかもう桁外れ。


さっきまで相手してたやつらが可愛く見えてくる。


幸いなことに巨大すぎる&暗闇故にこちらが発見される可能性は低そうだけど…


「さて、どうするか」


ぎやまの鎖は一直線に巨大亀に向かって伸びている。


まさか乗り越えるわけにもいかないし、とりあえず大きく迂回するしかないな。


「てかジミー、地味に重い。つねはよくこんなん振り回せたな…」


傷が深いため斬馬刀に戻ったジミーを抱えてここまで来たけど、さすがにそろそろ疲れてきた。


『あいつはもともとマッチョだし、てか洒落かよ阿部君!ジミー地味に重いとか。まあ運んでもらってるわけだし、文句は言えないけどさ』


¨欠片¨のない【無制限共有フィールド】では、傷付いた【神器】はいったん仕舞って回復を待つしか方法がない。


¨欠片¨の満ちた¨夢¨なら自己回復もできるが、ここではそうはいかないのが面倒くさい。


「俺が直接¨欠片¨を流し込むんじゃだめなの?」


試しに聞いてみたがあまりいい返事は帰ってこなかった。


『¨契約¨してるならともかく他人とだとどうかな…。さすがに賭けに出る場面じゃないでしょ』


「そんなもんなの?でもやって(ズズンッ!)…!?」


大きな地鳴り(と空気の振動)が伝わってきた。


巨大亀が移動を開始したらしい。


「ん?なんだ…」


巨大亀の甲羅の上らへんからかすかに破壊音が響いてきた。


距離的にもだいぶ離れているというのにこの音量…爆弾でも爆発したのか?


『阿部君、あれ!』


ジミーの剣先が向いている方向を見ると、断続的に火花が散っているのがかすかに見受けられた。


「誰かが闘ってるのか?」


方向的にもしかしたらぎやま?


戦闘は巨大亀の甲羅の上で継続的に行われている。


とにかく俺たちも巨大亀に向かって走り出した。


6月19日(火)?時??分


数分後、ゆっくりと(歩幅が大きいため以外と速かった)移動する巨大亀にたどり着いた。


ここまで来れば激しい戦闘音が絶えず聞こえてくる。


俺はジミーを担ぎ直して、一気に凸凹でこぼこした巨大亀の足を登っていった。


すると甲羅の上の方で案の定ぎやまが誰かと闘っているのが見えた。


相手は全身をフードで覆っているため、男か女かも分からない。


しかし、


『…強いね』


ジミーの言う通り、フードをかぶった相手は鎖を使って高速移動するぎやまの動きに完璧について行っている。


さらに多節棍や鎖鎌の攻撃もフードに掠りもしない。


「何者だ、あいつ…?」


おそらく今まで【無制限共有フィールド】で遭遇してきた類の敵ではなさそうだ。


何より化け物じゃないし。


フードをかぶったやつが持っていた武器を構えた。


(あれは…日本刀?)


月明かりに反射して、その日本刀が形容し難いほどに美しいことに気がついた。


辺りの暗闇から浮かび上がるような透き通った純白な刀身。


柄と刃の完璧なまでに整った黄金比。


まるで禍々しさなど微塵もなく、むしろ神々しいとも思えるのに、何故か俺はその刀が妖刀のようだと思った。


あまりの美しさに、思わず引き寄せられてしまいそうだ。


まるで魅了されているような…


ズドン!


「!?」


あの日本刀に意識を持ってかれていた。


「な、なんだ!?」


いったい何が起こったのか。


俺はフードの人物が持つ日本刀に心を奪われていた。


『小僧、しっかりしろ!あの刀を見るんじゃねえ!』


「鬼丸?」


『あいつは天下五剣の三日月だ!あいつ自身を長く見てると虜にされるぞ!』


鬼丸の切羽詰まったような言葉と同時に、三日月の刃から純白な光が飛び散った。


6月19日(火)?時??分


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