百四拾一
6月19日(火)?時??分
正門前
「《虎獅鍛々》!」
戦闘を開始してから十数分、とうとう決着がついた。
ついに限界がきた拐、いや宮崎の体に重複した重厚な剣圧が何層にもなって降りかかる。
一気に防御力も¨欠片¨も失った宮崎の姿は巨大なクレーターに姿を消していった。
6月19日(火)?時??分
「ボス!」
クレーターの傍らで刀を鞘に収めた童子切の背後に複数の気配が生じた。
「ボス、いったい何が…。もしかして¨断獣¨ですかい?」
スキンヘッドの厳つい大男が正門前の惨状に目を見張る。
この大男は¨虎武羅¨でも古参の一人で、実力は童子切に継ぐNo.2である。
「いや、少しばかしがきと戯れてただけだ。それより¨鬼¨は見つかったのか?」
「は、はい!いまだ捜索中ではありますが、痕跡はいくつか発見されました」
「そうか、俺の方もがきからちょっとした情報を手に入れた。一旦戻るぞ」
「「「押忍!!」」」
6月19日(火)?時??分
ボコリ…
童子切たちが立ち去ってしばらくすると、クレーターの中心から少し離れた地面から腕が出てきた。
「プハッ!…ふぅ、間一髪だったね(笑)」
何本か指の欠けた右手で自身の体を掘り起こしていく。
『さすがにまだ完成とは言えぬようだの』
「確かにねー(笑)防御重視のトンファーを使ってこのざまじゃあねー」
掘り起こされた体には、胴体と右腕以外のパーツが欠けていた。
現実であれば即死しているであろう傷も、精神体だからこそこんな状態で生き長らえることができていた。
しかしすでに体を仄かな燐光が包み始めている。
1分もしない内に宮崎はリタイアと同じ状態になるだろう。
「まさに文字通り¨欠片¨も残ってないや(笑)」
『……。』
「あれ、何この空気?昔から空気を凍らせるのは得意だったよ(笑)」
『…まったく。本当にお前は読めぬよ』
「何が?」
宮崎とトンファーは互いに消えるまで談笑(?)していた。
6月19日(火)?時??分
「それでボス、なぜあそこに?」
「言わなかったか?
面白いがきがいたから遊んでたんだよ」
「がき…もしかして参戦者ですかい?
参戦者との私闘は禁じられていたはずじゃあ…」
「刀を抜かなきゃ問題ない…はずだったんだが…」
「へ?もしかして…」
「まあ細かいことは気にすんな」
「ボス!?もしかして殺っちまったりはしてないですよね?」
「あー…ゴホン…細かいこと気にすんなっつってんだろうが!!」
「お、押忍!」
「とりあえずここから東に5キロほど先にある病院の屋上に向かう」
「?ターゲットの痕跡が発見された場所とは方向が違いますが…」
「先にがきが言っていた場所に向かう。時間が経ってるし、望みは薄いが…」
「はあ、了解です。しかしそのがきってのはどんなやつなんです?」
「少なくともてめえより強いなんてことはねえ。だが…」
「…?」
「もしかしたらいつか対等な喧嘩ができるかもな」
「ボスとですか?ボスとの殴り合いは¨虎武羅¨全員でかかっても勝てませんよ」
「はっ!謙遜すんなよNo.2。…だがあのがき、三割とはいえ俺に本気を出させたのも事実。もっと強くなっていつかまた殺りてえもんだ」
「(あのボスに三割!?)」
「(どんながきだよ…)」
「(末恐ろしいやつもいたもんだ)」
「そういや最終的に大人になってやがったな」
「「「…!?」」」
「ぼ、ボス?ボスはいったい何と闘ってきたんですか?」
「あ?だからがきだよ。そこらにいるような」
「そ、そうですか」
「んなことよりスピード上げるぞ。ちんたら走ってたら夜が明けちまう」
「「「お、押忍!」」」
6月19日(火)?時??分