百四拾
6月19日(火)?時??分
正門前
一瞬で宮崎と童子切の立ち位置が入れ替わる。
「「……。」」
両者共に無言。
しかし明らかな実力の差が存在した。
宮崎のもげかけていた左腕は童子切の拳によって今度は粉砕し、さらには右膝から先がなくなっている。
宮崎はかろうじて長刀で体を支えている状態だった。
しかし
「解せねえな。なんでてめえは笑っていやがる」
宮崎は砕け散ったお面の下で、ニヤリと笑みを浮かべていた。
「いやー(笑)まだまだこの程度じゃ¨刀を抜かせる¨こともできないか、と思いましてねー」
「…なに?」
宮崎の言葉にピクリと反応する童子切。
「だって、三割とか言っておきながら、実際は一割以下でしょ?
おれ、相手の実力とか見ればだいたい分かるし、実際闘ってみればもっと詳しく分かる。
多分刀を抜いて三割くらいかなー、なんて(笑)」
すると童子切は、
「……くっくっく」
愉快そうに笑った。
「…今夜はついてるな」
童子切はついに刀の柄に手を置いた。
「俺に刀を抜かさせてみろ。そうしたら分かる」
「…きゃは(笑)」
宮崎は四肢の欠けた全身に¨欠片¨を行き渡らせた。そして
「他の参戦者より数段階上の力的なやつを見せてやりますよー(本気)」
そう言ってトンファーを出現させた。
「ゲームとかでよくある¨縛りプレイ¨ってやつをやってたんですがね(やれやれ)。今回ばかしは¨トンちゃんを使わない¨っていう¨縛り¨を返上させてもらいます(キリッ)」
片手で二つのトンファーを構えた宮崎は、
「《我に理不尽な力を与えよ》」
今までにない、宮崎オリジナルの言霊を唱えた。
すると、トンファーが粒子状に分解されて宮崎を覆い尽くす。
「なんだ…?」
突然の変化に興味深げな視線を向ける童子切。
そして宮崎は¨覚醒¨し、トンファーと¨融合¨する。
途端
この場の重力が何倍にもなったように、宮崎の威圧感が増した。
「『ふむ、やはり生身の体は違うな」』
欠けていた左腕と右脚が再生し、細かな傷が癒えていた。
唯一お面だけがない状態だが、存在感と威圧感、そして漏れ出る¨欠片¨が、宮崎の言っていた¨数段階上の力¨の片鱗を窺わせる。
だがそれだけではなく…
「『この状態でいられる時間は短い。さっさと始めるとしよう」』
宮崎、いや、宮崎とトンファーが¨融合¨した¨年齢不詳の男¨が渋い声で童子切を挑発した。
真っ白に染まった髪はオールバックにされ、引き締まった肉体には一分の隙もない。
身長は元より20cmほど伸びて190cm近くになり、かすかに宮崎の面影が残っている。
「ふっ、ふふふ、ふはははは!」
童子切はこの展開に豪快に笑った。
「面白い!改めて名前を聞こうか!」
「『宮崎常春…と言いたいところだが…」』
宮崎は言った。
「『おれは宮崎常春でもトンファーでもない。この状態では真名である拐と呼んでくれ」』
「¨拐¨だと?なるほど。中国の長い歴史に刻まれたその名を持つということは、それだけで十分全力で闘うに値する。しかし(ガッ!)まだ完全ではないようだな。」
一瞬で距離を詰めた童子切の一撃が宮崎、いや拐の腹部に突き刺さる。
「がきが足を引っ張ってやがるようだな。だがそれでも刀を抜く価値くらいはありそうだ」
先ほどまでの宮崎であれば胴体が破裂していたであろう一撃を¨無傷で¨受けた拐に童子切が刀を抜いた。
「楽しませてくれよ?」
「『もちろん」』
6月19日(火)?時??分