百三拾九
6月19日(火)?時??分
「ハァ…ハァ…!」
俺は今、鏡をくぐり抜けたことを全力で後悔していた。
「くそ…!《龍○閃》!!」
歩道橋の上から飛び下り、全体重をかけて鬼丸を切り下ろす。
¨それ¨は凄まじい反射神経でそれをかわす素振りを見せた。
結果鬼丸は¨それ¨の頭ではなく腕を付け根から切断した。
この¨龍槌○¨は飛○御剣流の技の一つで、上空から全体重をかけて切り下ろすのが特徴だ。
¨○槌閃¨には飛び上がって打つパターンと、高いところから飛び降りながら打つパターンがある。
とりあえず大ダメージを与えることはできたけど…
『阿部君、もう一体きた!』
【神器】の状態のジミーに言われて見てみると、耳障りな悲鳴を上げる¨それ¨の向こう側から、
¨それ¨とよく似た個体が四足歩行で駆けてくるのが見えた。
「いったん退却!ジミー、とりあえず歩道橋を壊して目眩ましにして!!」
『オッケー!』
そう言うやいなや実体化したジミーはひびの入った斬馬刀で歩道橋を真ん中から叩き斬った。
話は10分ほど遡る。
6月19日(火)?時??分
鏡をくぐり抜けると、そこは見知らぬ閑静な住宅街だった。
俺とジミーはとりあえずまっすぐ伸びる鎖を辿って移動を開始。
そして数分後、¨それ¨と遭遇した。
全長はだいたい4、5メートルくらい。
高さ約2メートル半から3メートル。
見た目はなんとも形容し難く、
例えるならサイとゴリラを足して2で割ればこんな見た目になるのではなかろうか?
装甲板のように頑丈で分厚い灰色の皮膚。
獰猛な黒い瞳と立派な(サイのような)つの。
四足歩行で移動しつつ攻撃の際は後脚で直立する。
ちなみに歩き方はまさにナックルウォーク(?)だ。
とりあえずその場は全力で走って逃げ、そして分かったのは¨それ¨には持久力がないということ。
一撃で家を破壊するパワーと、瞬間的なら俺とほぼ同じくらいのスピードはあるが、距離を置いて逃げれば長距離を追ってはこなかった。
¨それ¨が立ち去ったのを確認してから鎖のある位置まで戻り、そして数分後、往来の激しい(であろう)広い道路に差し掛かった所で再び¨それ¨と遭遇してしまった。
6月19日(火)?時??分
狭い路地に入って¨それ¨の視界から逃れると、俺は【神器】の状態に戻ったジミーに質問した。
「本当にここにぎやまがいるの?」
こんなモン○ンやら○ットイーターやらみたいな世界にぎやまがいるとは思えない。
『えっと~。確かにつねがそう言ってたはず。あ、ちなみにここって【無制限共有フィールド】の稲穂から離れてるだけで、その延長線上にあるらしいよ』
それじゃあ稲穂の外にはさっきみたいのがいるってこと?
『つねが調べた結果、稲穂から遠ざかれば遠ざかるほど出現率が高くなるみたいだよ。基本おれって呼び出されないと出てこれないからつねに聞いたんだけど』
う~ん。
こりゃつねに改めて聞くことが増えたな。
そういえばつねはまだ闘ってるのかな?
もしかしたらもうとっくにやられて…
いや、今はこっちに集中しよう。
幸いぎやまの鎖は発見できたし、攻撃も当たらないわけじゃない。
俺はジミーを背負って(重い)、鎖の続く先に向かった。
6月19日(火)?時??分