拾三
5月11日17時05分
結局つねがあれだけうなされていた理由は分からなかった。
「あれ、てかもう5時過ぎてんじゃん!!今日ばあちゃん帰ってくるの6時くらいだから急がないと!」
そう言ってつねは俺たちが呆然としているうちに帰ってしまった。
数分後ようやく頭が正常に働き出した俺とぎやまだったが、つねが帰ってしまったことで解散となった。
見送りに玄関までついていくと、ぎやまはなにやらもやもやした顔をしていた。
「ねぇ、阿部ちゃん。宮崎君どうしたんだろうね。それにあの変な感じも偶然かな?もしかして、これって虫の知らせってやつじゃないかな。」
「確かにタイミングが違和感とピッタリだったよね。結局たいしたことは分からず終いだったし。なんか変な感じ。」
「うん。月曜日宮崎君に聞いてみよ。」
「そうだね、じゃ。」
「うん、また来週。」
そういってぎやまと別れたが、俺のもやもやは消えることがなかった。
それは答えが分かっているのに思い出せないもどかしさに似ていた。
そしてさらなる出来事が俺を襲ったのだった。
5月12日0時01分
(今日は¨夢¨は見ないのか…)
俺はいつでもメモが取れるように机に座って待機していた。しかしいくら待っても意識はなくならなかった。
(もう遅いし、そろそろ寝るかな…)
俺はメガネを外すとベットに横になった。
5月12日0時05分
ベットに横になって少しすると睡魔がだんだん頭の中で強くなってきた。
俺は今日1日と最近の出来事を思い出しながら眠りについた。
気がつくと俺は真っ白な空間にいた。どこまでもどこまでも続く白い空間。
上下の感覚が曖昧で、まるで水の中を漂っているようだ。
(…なんだここ?)
微かに霞がかった視界の中、白しか存在しないかに思われたそこには、ひとつだけ確かな存在感をもつ者がいた。
(…あれは……俺…?)
ぼんやりとした思考の中、たしかに目の前にいるのは俺自身だと確信した。
(…鏡…?……いや、違う……どうなって……?)
俺は合わせ鏡のようにそっくりなその¨なにか¨に手を伸ばした。
するとその¨なにか¨も同じように手を伸ばして俺の手に触れる。
瞬間。
俺は…。