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百三拾四

6月19日(火)?時??分


数珠丸との下らないやりとりを切り上げ、童子切はおどろおどろしい見た目の【サラマラスの鏡】をくぐり抜けた。


童子切としては【サラマラスの鏡】の呪われたような(実際呪われた)外見は嫌いではない。


むしろ鏡から発せられる何とも言えない邪気は童子切にとって心地よいものだった。


(ったくカリヤの野郎、機会があればぶち殺す!)


いかにカリヤといえど、天下五剣最高の切れ味を誇る童子切の一撃は防げないだろう。


しかし童子切がカリヤの前に呼ばれるのは天下五剣全員が揃う場のみ。


そもそもカリヤはよほどのことがなければ人前に姿を現すようなことはない。


…たまにふらりと姿を見せるときがあるが。


とりあえずそんな保守的ともばかにしているとも取れるカリヤの態度を童子切は好ましく思っていない。


そもそも誰かの下につくこと自体が童子切には我慢ならない。


数珠丸のように媚び諂う輩は童子切にとっては見下す対象でしかない。


ともあれ数珠丸の¨強さ¨だけは認めているが。


「童子切様」


鏡を抜けると【無制限共有フィールド】のとあるマンションの屋上に出た。


目の前にはずらりと直立不動で並んだ部下達の姿がある。


その数は約50人。


童子切が作り上げた¨虎武羅(コブラ)¨という組織。


その実力は折り紙付きだ。


ちなみに皆一様に黒い。


髪から服まで全て黒で統一されている。


さすがに髪型や持ち前の武器は異なるが、


傍目からみたらヤクザか暴走族と勘違いされそうだ。


実際それほど違わない。


童子切は自分の名を呼んだ部下の一人に目を向けた。


「童子切様、¨鏡¨の方にカリヤ様からのし…」


途端にその部下の頭を左手で掴み、自分の顔の位置まで持ち上げた。


「おい」


「は、はい!」


童子切の双眸に殺気が灯る。


まだ幼い雰囲気の残る部下は、それだけで意識が持っていかれそうになった。


「カリヤなんかに様をつける必要はねえ」


「は、はい!」


「てめえは何だ?」


「じ、自分は、¨虎武羅¨の小刀であります!」


「…新入りか?」


「そうであります!」


童子切は手を離して新入りの青年を床に戻すと、


整列をする部下全員に声を張り上げた。


「¨虎武羅¨とは何だ!」


「「「誇り高き虎です!!」」」


一糸乱れぬ反応で応える。


「お前らは何だ!」


「「「誇り高き戦士です!!」」」


「¨虎武羅¨の信条を言ってみろ!」


「「「退かぬ、媚びぬ、かみ殺せ!」」」


「そうだ!俺達は獣だ!


敵を前にして退くな!


己より強い奴に媚びるな!


どうな相手だろうとかみ殺す気概を持て!」


「「「押忍!!!」」」


そこで再び童子切は床に転がる部下に目を向けた。


「いいか?てめえもこの¨虎武羅¨の一員なら今の言葉を胸に刻んでおけ」


「は、いえ、押忍!!」


「よし、それでさっきは何て言いかけたんだ?」


「お、押忍!カリヤさ、いえ、カリヤからの指令、伝言が¨鏡¨に届きました!」


「そうか。ご苦労」


若い部下はその言葉に構え、


「押忍!男磨かせてもらいます!」


そう言って懐から小さな鏡を取り出して童子切に渡した。


鏡に映し出されていたのは、【無制限共有フィールド】に現れた¨鬼¨についての資料。


どうやらさっき言っていたイレギュラーの一つがこの¨鬼¨らしい。


「お前ら!手分けしてこいつを捜し出せ!


鬼の特徴は今送った資料の通りだ!


見つけ次第連絡しろ!


相手はあの¨村正¨だ!


手柄を立てて名を上げようなんて考えで手を出すなよ!


¨村正¨を知らねえ奴はいねえな?


お前らが相手をできるようなたまじゃねえ!


無駄に命を散らすな!」


「「「押忍!!!」」」


返事をするや否や部下達は一糸乱れぬ動きで散って行った。


部下達は闘う時は命を懸けて死ぬまで闘うが、


一人残らず己の力量くらいは把握している。


先ほどの若い部下ですら無駄に命を散らすことの無意味さは理解していた。


童子切が作り上げた¨虎武羅¨は、ただ強いだけの荒くれ者で構成されているわけではなかった。


(それにしても¨村正¨が¨鬼¨…か。鬼…。嫌な奴を思い出す…!)


かつてどのような出来事があったのか、童子切は¨鬼¨と聞くだけで怒りの念が際限なく沸き上がってくる。


(鬼丸!!)


童子切は連絡係に部下を一人残して屋上から飛び降りた。


もともとじっとしているのは性に合わない。


(そういえばここら辺は確か【コロシアム】の近くだったな)


ふと思いついて童子切は【コロシアム】のある稲穂学園の方に走り出した。


6月19日(火)?時??分


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