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百三拾三

【無制限共有フィールド】


「…イレギュラーだと?確か¨断獣¨どもは三日月と小娘が一掃してきたんじゃなかったか?」


デュランを小娘と言い放ちながら童子切は眉をひそめる。


元々鋭かった目つきがさらに細められ、なまじ整った顔をしている分凶悪度が上がっている。


ちなみに¨断獣¨は空間の狭間の住人であり、知性はそれほど高くはない。


大きさや姿形は様々であり、高位の個体になると言語を操るものもいる。


【神器】によって創り出されたこの【無制限共有フィールド】には、元々あった空間に住んでいた断獣が多々出現する。


そのためカリヤは三日月とデュランに【無制限共有フィールド】に侵入してくる断獣を一掃する命令を下していた。


「…問題を起こしそうな上位個体の¨断獣¨はあらかた片付けました。


…しかし元々あった空間には大規模な中小位の¨断獣¨の巣があったため、今デュランが暇つぶしがてらに蹴散らしています」


三日月の淡々とした説明に、童子切は興味なさげな様子で口を開いた。


「じゃあ何がイレギュラーなんだ?」


「……。」


カリヤが無言で手を突き出すと、四人の背後にあったそれぞれの鏡がどこかに繋がった。


「……。」


そしてカリヤは無言で別の鏡を出現させると、何も言わずに消えてしまった。


「…ちっ!あの野郎、せめて一言くらい言いやがれってんだ!」


「童子切、カリヤ様にはカリヤ様のお考えがあってのこと。我らは黙ってそれに従うのみ」


「うるせえ!お前なんかに指図は受けねえ」


「「……。」」


殺気立つ童子切とそれを快く思っていない数珠丸。


すでに大典太と三日月はそれぞれの鏡をくぐっていってしまっている。


天下五剣はあくまで後の時代にそう呼ばれるようになっただけで、造られた時代も歴史も異なる。


ただカリヤの下にいるというだけで、実際は互いに気を許し合っているわけではない。


そして残る天下五剣最後の一振りこそが…




6月19日(火)?時??分


結局ここって何なの?


その答えは結局つねも分かっていないらしい。


「とりあえずあれ見てみ」


「?」


稲穂学園の正門前まで戻ってきてから、つねが斜め上あたりを指差しながらそう言ってきた。


言われて見た先には時計がある。


今の時刻は午前3時2分か。


「3時2分だね(笑)」


そんなの見りゃわかるけど…


「おれたちがここを出発したのは3時1分だったんだよね」


「は?」


それはおかしい。


稲穂学園から駅までは片道でだいたい徒歩5分から10分くらいかかる。


信号待ちとかがなかったぶん短かったかもしれないが(そもそも車なんか通ってないし)、それでもここに戻ってくるまでに15分はかかったはずだ。


そう指摘してみるとつねは、


「だから最初に確認したのに」


時間を聞いてきたことか?


「¨夢¨では時間が遅くなるじゃん?でもここは【神器】でできたフィールド。


時間の流れが遅くなってるのも【神器】によるものかな。


¨夢¨と違って時間が本当に正確に流れてるみたいだし」


ちなみに今の時間の流れは10倍くらいかな?とつねは言った。


改めて時計を見ると、いつの間にか時計の針は3時3分を差している。


確かに行き帰りの15分と雑談の時間を合わせればだいたい20分ほど。


時間が10倍になっているのなら、今体感した20分は現実での2分。


一応辻褄は合う…のか?


どうも感覚的に捉えようとするとうまく理解できない。


そもそも¨夢¨と【時間】によって創られたフィールドの違いだってあやふやすぎて何とも…


「まあ実際そんなことが分かったからなんだ、とか、


そんな推測が合ってるのかよ、とか読者の皆様や画面の前のみんなに言われちゃうかもしれないけど(笑)


まだ分かってることなんてほとんどないんよねー。


まあ他にも細かい法則とかあるみたいだけど、


とりあえずそこらはすっとばしてぎやまの行方と鬼…(ザクッ)?」


突然何かが切断される音が響き渡った。


俺たち以外音を立てるものがいない無音の世界に、その音は思いのほか大きく響いた。


「…は?」

「ん…んん?」


宙を舞うつねの左腕。


肩口からきれいに切断された左腕はゆるく弧を描きながら離れた位置に落ちた。


「おい」


直後正門とは逆位置の方向、俺の背後から男の声がした。


振り返ると10メートルほど離れた位置に、闇に紛れるような全身真っ黒い服を着た男が立っている。


右手には無造作に握られた日本刀。


ゆっくりと近づいてくるにつれて、髪の合間から覗く瞳が獣のような金眼だと分かった。


「今そこのガキが¨鬼¨とか言ったよな?


そいつはもしかしてここいらで粋がってる調子にのった¨鬼¨か?


それとも¨鬼¨のあとに¨丸¨とかつけるんじゃねえだろうな?」


男は野生の獣のような殺気を隠すこともせずに近づいてきた。


俺の頭の中では今更最大級の警鐘が響きはじめた。


6月19日(火)?時??分


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