百三拾二
6月19日(火)?時??分
俺は今し方つねが言った一言を理解することができなかった。
つねは確かにいつも突然意味不明なことを言い出すけど、
さすがに今のは聞き捨てならない。
「ここが¨夢¨じゃない?マジで?」
「マジでマジで(笑)ま、推測だけど」
推測かよ!
それじゃ確かとは言えないだろ…
「だけど多分合ってると思うよ?」
「多分て…。一応理由聞くけど」
「だってこのフィールドにはほとんど¨欠片¨が漂ってないみたいだし、
それにカリヤからの補助とかがまったくないんだよねー」
…ん?
「補助ってなに?」
カリヤから補助を受けてるなんて話聞いてないぞ。
「ん~?¨夢¨でのフィールドに来たら常におれたち一人一人に¨欠片¨が供給されてるじゃん?あれだけど」
まじで?
そういえば確かに修行のときより¨夢¨のフィールドのほうが回復が早かったような…?
それにしたってなんでそんなことが分かるんだ?
聞いてみるとつねはドヤ顔(←推測)で
「目を凝らしたら見えた(笑)」
「……。」
うん、やっぱりこいつとまともな会話は無理だな。
「別にふざけてないんだけどなー(棒読み)。
試練で何ヶ月も¨夢¨の中をさまよってるうちに見えるようになったっていうかー、
悟りを開いたっていうかー(笑)」
そんなのありえるのか?
とりあえず鬼丸に確認してみると、
『悟りかどうかは知らんが、¨欠片¨は見ることができるぞ』
「マジで?」
『ああ、意識を¨現実¨とは別の存在に向けるイメージさえ身についていれば見えるはずだ。
…多少センスを問われるかもしれないがな』
それっぽいイメージをしてみたが¨欠片¨らしきものは見えてこなかった。
「¨夢¨だったら霧みたいに¨欠片¨で世界が埋め尽くされてるんだよ。
けどこの【無制限共有フィールド】にはそれがない。
多分仕組み自体が違うんだと思うなー(笑)」
それが本当ならどういう意味があるんだ?
¨夢¨だろうとこの【無制限共有フィールド】だろうと創られた空間には違いないだろうし。
『いや、厳密には両方は別物だ』
「どういうこと?」
『そこのトンファーの小僧のは薄々気づいてるかもしれないが、今まで闘ってきたフィールドは純粋に¨欠片¨のみで構成されてきた。
カリヤの¨欠片¨によって創られた骨組みに、小僧達の¨欠片¨で肉付けしていく形でな』
「よっしゃー(笑)何となく予想通りで嬉しいわー」
「それじゃあこの【無制限共有フィールド】は?」
『【無制限共有フィールド】って名前の由来はいまいちピンとこないが…。
かつて数回ここと似たフィールドを見たことがある。そのフィールドは¨欠片¨ではなく、【神器】によって創り出されていた』
「おー、おれの予想は当たってたか(笑)」
「それってこの前の試練のやつ?」
【シュールバルタの鏡】
あの鏡は中に試練のためのフィールドを創り出していたはずだ。
でも【シュールバルタの鏡】の中では普通に言霊は使えたし、むしろ体の調子が良かったと思う。
だったら¨欠片¨が充満していたはずだけど…
『あの鏡はあいつの所有物だった。
…意図的に中に¨欠片¨を充満させるなんてひと手間でできる。
それにあの鏡には多くの…』
「多くの…なに?」
『…多くの罪人がいる。あの鏡は試練の鏡と呼ばれてはいるが、別の用途に牢獄としても使われていた。
そいつらは永久にさまよいつつ¨欠片¨を散らしていったはずだ』
牢獄…。
「でもそんなの例外的な何か(笑)だよね?
ってことは少なくともここは【シュールバルタの鏡】中じゃない、別の【神器】の中。
多分【コロシアム】以外の空間は別の理由で創られたってとこかな?」
『おそらくな』
……。
何となく話に入っていけない。
というかついていけない。
つねって勉強以外ではこんなに頭の回転が早いんだな(←呆れ)
とりあえずここが¨夢¨じゃないのは分かった。
「それで結局ここって何なの?」
6月19日(火)?時??分