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百二拾五

6月19日(火)3時??分


「がっ!?」


俺の体は数メートルの距離を飛んで壁に激突した。


杖の一撃(突き)を受けた鳩尾のあたりが苦しい。


俺は激突した衝撃よりも鳩尾への一撃の痛みに脂汗を流した。


「なーニ油断してんのヨ。闘いだってのニ目を逸らすとか有り得ないでしョ」


男子生徒のくぐもったような声がうずくまったままの俺にまで届いてきた。


顔を上げるとさっきまで俺が立っていた場所には杖をついた青年が立っている。


その顔の下半分は黒い布で覆われ、鼻まで隠れている。


上半分は額当てのような鈍い色の金属のプレートに隠されていて、表情がまったく窺えない。


プレートに目元も隠されていて見えないはずだが、青年はこっちをまっすぐ見て首を傾げている。


まるで忍者そのものだ。


今時有り得ないくらい忍者な見た目だ。


ワイシャツに制服のズボンなのが違和感MAXだ。


「君の試合ハ全部見てたけど、こんな弱いはずないよね?」


「くっ…!」


忍者のような青年は余裕綽々と杖をついて俺が立ち上がるのを待っている。


俺は軽い吐き気を無理やりねじ伏せて立ち上がった。


もう油断しねえ。


俺は鬼丸を抜刀し、忍者に向かって構えた。


「おっ!いいネ」


忍者は軽い口調で特に構えた様子はない。


「なめんなよ!」


一歩で忍者との短い距離を零にする。


忍者は反応らしい反応もなく突っ立っている。


あまりの速さに目が追いついてきていない様子だ。


俺は容赦なく忍者の胴体をなぎ払った。だが、


「!!?」


おかしい。


あまりにも手応えがなさすぎる!


俺は今し方斬ったばかりの忍者を振り返った。


「¨残像¨だヨ」


途端にまた鳩尾に鋭い打撃が突き刺さる。


俺の意識はその一撃に大きく揺らいだ。


6月19日(火)3時??分


観戦席にて


「んー、さすが¨みやじ¨。パワーはないけどスピードと技のキレが半端じゃないねー(笑)」


すでに3試合全てを終えた宮崎は阿部と忍者との闘いを観戦席から見ていた。


「やっぱみやじならこのゲームを生き残ってると思ってたぜー(棒読み)。


それにしても阿部ちゃんは油断し過ぎだなー(苦笑い)


ま、この勝負、阿部ちゃんは分が悪いかもねー。


今までの闘いで阿部ちゃんは自分より速い奴と闘った経験がほとんどないしねー(笑)」


おかめの仮面の下では無表情に、仮面越しには棒読みに宮崎は呟く。


相手の気配や体格、筋肉のつき具合から癖まで見抜く宮崎の観察眼はたった数秒でだいたいの実力を把握していた。


そして知り合いがこのゲームで生き残っていたことに宮崎は大きな笑みを作った。


「面白くなってきたなー(笑)。こりゃ展開が楽しみだー(笑)」


ちなみに宮崎はセリフの最後に「かっこわらい」とつけているだけで実際に笑っているわけではない。


観戦席はこの意外な展開にテンションが天井知らずな状態である。


そして闘技場内では阿部がなりふり構わず闘技場の逆サイドに縮地し、


宮崎がみやじと呼ぶ青年はそれを見送っている。


6月19日(火)3時??分


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