百二拾四
6月19日(火)0時??分
【さてお次はこいつだー!!】
【今のところ常勝無敗。勝率10割、ウルト○マンの仮面の彼ですね】
【対するは勝率はそこそこすごいこいつ!】
【魔法少女のお面なのにもかかわらず男のこの生徒ですね。勝率は八割といったところでしょうか】
【よっしゃ!試合開始!!】
【ちょ!声を合わせてとあれほど!】
【勝負あり!勝者ウルトラマ○!!】
【相変わらず速いですね!?】
6月19日(火)3時??分
話が気になってしょうがないため、とにかく全力で闘った結果、おそらく2試合で合計一分もかからなかっただろう。
正直このコロシアムでの闘いでは今のところまったく苦戦していない。
試合自体はランダムに相手が決まるが、ここまで張り合いがないとつまらない気もしてくる。
まあ今日のところはあと一試合で終わるし、さっさと2Lの教室に向かうとしよう。
俺は軽い油断を自覚しつつ、気を引き締めながら扉を開いた。
6月19日(火)3時??分
【お!次の試合は見所があるぞ!両者共にこれで3試合目!しかも勝率も同じく10割だ!】
【これは面白い闘いになりそうですね。両者の戦闘スタイルはまったく異なります。相性はいったいどちらが有利なんでしょうか】
【楽しませてくれよ~!…それでは!】
【【試合開始!!】】
6月19日(火)3時??分
俺はこれまでと同じように速攻でけりをつけようとしたが、今の実況と解説を聞いて踏みとどまった。
「…勝率10割?」
俺は確認するように呟く。
相手は俺と同じく今までの試合を一回も負けずに勝ち残ってきたのか…
それならこれまでと同じようにはいかないだろう。
もしかしたら俺以上の実力を持っている可能性だってある。
俺は油断なく相手を観察してみた。
そして驚く。
真っ先に飛び込んできたのは相手が地面についている黒塗りの杖。
相手の男子生徒の身長は俺と同じか少し低いくらい。
体格的にはそれほど鍛えているようには見えない。
杖をついているのに病弱に見えないのは、その杖がステッキのような見た目だからか。
まるで体の一部のようにまっすぐ杖をついたその男子生徒は、若干杖に体重をかけているように見える。
数歩踏み出してきたその男子生徒は杖を前に出して両手で体を支えて立っている。
もしかして体が弱いのか?
¨神を堕とす者¨ではある程度勝ち残っていけば自然と願いが叶っていくし、体も強くなっていくのが普通だ。
しかし最初にカリヤが言っていたように一番の夢だけは叶わない。
もしかしたらあの男子生徒は体が弱いのを治すのが一番の¨夢¨なのかもしれない。
その表情は分からないが、もしかしたら今までもずっと弱い体で必死に勝ち進んできたのかも…
だとしたらどうしよう。
なんとなく倒すのが気が引けるというか…
俺は一回相手から目を背けて考えてみた。
だがこれは間違いだった。
別に相手が杖をついていたからといって、別に病弱な印象はうけなかった。
それなのに勝手に相手がそんなんだと思い考え直してしまった。
正直油断、というか愉悦に浸ってた。
今までの相手が自分より弱かったため、さらに相手が弱いと思い込もうとしていた。
これは強者だと思っている人間の傲りだ。
杖をついている=弱い、病弱、弱者。
そんな公式が頭の中でできてしまっていた。
だから相手の実力が分からないうちからどうやって手加減しようかなどとバカな考えに捕らわれてしまっていた。
その傲りが間違いだと気づかされたのはほんの目を離した一瞬。
俺はその一瞬で目の前にまで迫っていた男子生徒に杖で殴られ、コロシアムの壁に激突した。
6月19日(火)3時??分