百二拾三
6月18日(月)16時02分
「はい、これでロングは終了だぁ。終わり~」
「起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
LHRが終わり、各々が部活やら帰宅の準備を始める。
俺は朝のSHRでの話題についてひっかかりを覚えていた。
「…日本刀を所持、ね」
同年代でしかも帯刀していたとなると、そいつは¨神を堕とす者¨の参戦者である可能性が高い。
【神器】は契約した当初、持ち主と【神器】所持者以外の目には見えなかった。
だが強くなったいまではその存在感は桁違い。
多分鬼丸も今ここに出現させれば参戦者以外の生徒にも姿が視認できるはず。
不審者がもし参戦者だった場合、どういう目的で【神器】を晒していたんだ?
席についたまま考え込んでいた俺は、背後にぴったりときっつく影に気がつかなかった。
6月18日(月)23時59分
零時まであと一分をきった。
俺は今日放課後にあったことを思い出していた。
6月18日(月)16時02分
思考に没頭していた俺は背後に立つ気配に気づくことができなかった。
(ハァハァ…)
「…ん?」
(ハァハァ…阿部ちゃんの【ピ───】)
「!!?」
バッと振り向くと、まさに目の前につねの顔があった。
「うああっ!?」ガッ!
「ヘブッ!」ゴスッ!
俺の放った拳はきれいにつねの顔面にめり込み、
何故かつねは満足そうな無表情で吹っ飛んでいった。
「もーなにすんだよー阿部ちゃん。いきなり殴るなんて酷いじゃないかー」
見事なバク転を空中で披露しつつ、着地したつねは棒読みで言ってきた。
すでに教室には数名の生徒しか残っておらず、運良く今のは見られずにすんだようだ。
「いきなりなんだよ!?」
気を取り直して俺があまり声が大きくならないようにそう言うと、
「まったくー。迷える青少年におじちゃんが道を指し示してあげようと思ったのにー。
杉山少年のこととかフィールドの秘密とか最近話題の不審者のこととか宮崎おじちゃんの3サイズについての情報は教えてあげないよー?」
両肩をあげてわざとらしくため息をつかれた。
「えっ!?」
俺はつねの口から飛び出た気になるワードに反応した。
「今なら無料でおじちゃんの若かりし頃のヌード写真もつけちゃうよー」
それは全力で拒否する!
それにしてもいきなりどうしたんだ?
こっちから話しかけようにもすぐ姿を消していたつねの方から話しかけてくるだなんて…
まあ細かいことはどうでもいいか。
今気になるのは他のことだ。
「今夜の試合が終わったら2Lに来てみー。おじちゃんの知ってること全てを教えてあげよー」
つねは棒読みかつ無表情のままそう言うと、いつの間にやら持っていたエナメルを背負ってさっさと教室から出ていってしまった。
俺はそれを呆然と見送ることしかできなかった。
6月18日(月)23時59分
俺は横になりつつ、零時になるのを待った。
これから始まる試合のことよりつねの言葉の方が気になってしょうがない。
「ふぅ…」
ため息をついて目を閉じる。
そして次の瞬間には俺は¨現実¨から¨夢¨へと目を覚ましていた。
6月19日(火)0時??分