百二拾一
6月16日(土)?時??分
【次は30試合目!お前ら!まだまだテンションアゲアゲか~!?】
「「「イエー!」」」
【闘うの好きか~!?】
「「「イエェー!!」」」
【夢を叶えたいか~!?】
「「「イエェー!!!」」」
【俺ってスタイル抜群だし大人の色気とかハンパないよな~!?】
「「「イ、エェ?」」」
【…よーし、お前ら覚えてろよ!試合が終わったら一人残らずぶっ飛ばす!!】
もはや収集がつかないくらいテンションが上がりまくっている。
いったいどうしてこんなことになったのか。
心なしか俺もテンションが上がっている気がする。
もしかしたらテンションを上げさせる【神器】でも使っているのかもしれない。
【さてお次は…、プ○さんのお面をつけたこいつだ!】
【彼のことは皆さんご存知でしょう。多節棍を使います】
【対する相手はこちら!】
【ナイフ遣いの彼ですね。彼はこれで三戦目になります】
【燃えてきたー!!】
【リーチの差がだいぶありますが、ナイフの彼はスピードがあります。
おそらく正面からではなく、フェイントを交えながらの勝負になるのではないでしょうか】
とうとうぎやまの試合だ。
学校を休んでいたが、扉から入ってきたぎやまは体調を崩している様子はない。
他の生徒がいるせいで声をかけることはできないが、
中央に進み出てくる途中一瞬だけ仮面越しに目が合った気がした。
いや、それは気のせいか。
【よ~し!それでは!】
静まり返る観戦席。
【【試合開始!!】】
一気に歓声が上がる。
しかし、
「!!?」
その歓声はすぐに収まった。
闘技場内ではぎやまと向かい合うナイフ遣い。
それは開始直前と変わらない。
変わってないのは…
「ぎやま…」
無意識に呟きが洩れる。
試合開始直前と今では両者ともに動いた様子も変化もない。
ただ¨試合開始の宣言がされた直後に地面に転がったナイフ遣いの頭部¨以外は。
【ふえ?…あ、勝者、プーさんお面…?】
【…なんと】
デュランや数珠丸もまた驚いている。
俺の目にもほとんど何が起こったのか分からなかった。
ぎやまは何事もなかったように後ろを向いて扉の向こうに消えた。
6月16日(土)?時??分
残り2試合のぎやまも凄まじかった。
2試合目では多節棍が相手の心臓を貫通して瞬殺。
3試合目は四肢を鎖鎌で切断した挙げ句に首を落とした。
それぞれ開始から5秒も経っていない。
俺はぎやまの最後の試合が終わると同時に扉を開けて外に出た。
とりあえず「ぎやま」とだけ呟いて開いたのだが、どうやら正解だったようだ。
ちょうど俺はぎやまが閉じたばかりの扉から出てきたらしい。
目の前には振り向いた格好のぎやま。
「ッ!!?」
そして瞬間的に展開された多節棍。
標的はもちろん俺だ。
鎖は俺に巻きつくように収縮し、首もとにはぎやまが直接鎌を添えていた。
「…なんだ、阿部ちゃんか」
そう言ってぎやまは【神器】を消した。
6月16日(土)?時??分