拾一
5月11日16時30分
「なるほど、そんなことがあったんだ。覚えてないから実感沸かないけど、それが本当なら俺らは夢の中で殺し合いをするってこと?与えられた力ってやつを使って、神の座を手に入れるために。」
「別に神の座限定じゃないと思うけど。たしかひとつだけ願いを叶えてやるとか…」
「『そのゲームで勝ち残った者には、賞金として、どのような願いでも一つだけ必ず叶えてやる。そしてさらに望むのなら神の座も与えてやる』だよ、阿部ちゃん。」
どうやらテンションも落ち着いてきたようで、つねが俺のベッドで転がりながら訂正してきた。
「よく覚えてるね、宮崎君。そんな長いセリフ、普通覚えられないよ。それでどうして成績悪いのよ。」
「おいちゃん、何故か勉強は覚えようとすると頭に靄がかかっちゃうんだ。いや、年かね(笑)」
「いやいや年って、俺ら同じ年でしょ!」
つねとぎやまのやりとりの合間に、俺は先ほどつねが言っていた内容について反芻してみた。
「ねぇ、つね。たしか夢では『どのような願いでも一つだけ必ず叶えてやる』って言われたんだよね?あと『そしてさらに望むのなら神の座も与えてやる』とも。」
「ん?ああ、そうだよ。それがどうかしたの、阿部ちゃん?」
俺が質問するとつねが不思議そうにそう返してきた。俺は思ったことを正直に言ってみた。
「なんかその言いぐさって、まるで神様みたいだよね。『どのような願いでも』とか『必ず叶えてやる』って。『神の座も与えてやる』なんてまんま神様じゃん。」
その言葉につねは考えこんでしまった。ベッドに横になると、天井を眺めながら額にシワを寄せている。
するとそれを聞いていたぎやまがぽつりと呟きを漏らした。
「…『神を堕とす者』」
「え?何か言った、ぎやま?」
聞き返すとぎやまは首を振って否定した。
「ああ、いや何でもない。なんかふと口からついで出ただけだから気にしないで。」
「なんだよ、ぎやま。気になるじゃん、教えてよ。」
「本当に何となく出てきたんだって。なんか昔そんなゲームをやったようなないような…」
ぎやまは納得いかないような顔をしていたが、すぐに夢の話に戻っていった。
俺たちは知らなかった。このときのぎやまの呟きが、まさか今回の出来事に関係していたなんて、俺たちはそれこそ夢にも思っていなかった。
5月11日16時55分