百拾二
6月15日(金)?時??分
カリヤの宣言と共に何人かの生徒の前に様々な武器が現れた。
【…この試練を最も速く突破した上位10名に新たなる【神器】を授けよう。…いずれも強力な一品だ】
言葉の通り、10の【神器】はそれぞれ凄まじい力を内包しているみたいだ。
俺達の近くでその一つを受け取った女子生徒(さっき槍を持って入ってきた子だ)の前に浮かぶ¨槍¨、そいつからもとんでもない重圧が感じられた。
「おい、ちょっと待てよ!」
するといきなりその女子生徒の近くの椅子に座っていた男子生徒が声を上げた。
その男子生徒は¨槍¨を受け取った女子生徒を指差し、大声でまくし立てる。
「こいつは俺よりもだいぶ後になってからここに来たはずだぞ!それなのになんで褒美とやらを受け取ってるんだ!」
そういえば確かにこの女子生徒は俺よりも後から入ってきていた。
すでに傷はなくなっているが、ぎやまの直前に入ってきたので印象に残っている。
「おかしいんじゃないのか!?後からきたこいつが褒美を受け取るってんなら、それより速く突破した俺にだって受け取る権利があるはずだ!!」
その男子生徒の言葉に周りの生徒も同調し始める。
女子生徒はそんなのには見向きもせずに槍を見つめていたが…
【黙れ】
「!」
スピーカー越しのカリヤの一言でこの場に緊張が走る。
最初に騒ぎ立てた男子生徒は固まっていたが、すぐにまた声を荒げた。
「だ、黙れじゃねえよ!な、何か?もしかしてこいつだけ特別だとでも言うのかよ!」
女子生徒のことを指差し、言い訳がましい感じでそう言い放つ。
納得できていないのは同じなのか、再び周りの生徒がざわめき始めた。
【うるさいうるさいうるさ~い!】
突然スピーカーがキンキンと反響音を響かせながら、話し手が切り替わる。
【ったく!細かいことでぎゃんぎゃん喚き立てんな!お前らそれでも高校生かよ!!】
大音量でそう喚き散らされた直後、突然真っ白な天井に穴が開いた。
そこから降ってきたのは見覚えのある小柄な少女。
「な、なんだよお前…」
少女はたじろぐ男子生徒にズンズン近づいていき、真正面に立って口を開いた。
「20年も生きてないガキがいきがるなよ!説明してやろうとしてんのにピーピー騒ぐな!」
「あ?何言ってんだよ…。まさかお前が放送してたやつか?なんでこんなチビがぐはっ!?」
チビという単語を言った瞬間、かつての俺のように男子生徒が殴り飛ばされた。
コマのように回転しながら真っ白い壁にめり込む。
「チビじゃねえ!それにお前お前って!デュランて名前があるっての!」
たぶん男子生徒には聞こえてない。
デュランは唖然としている周りの生徒を睨みつけ、そして槍を持つ女子生徒を指差す。
「こいつを含めてお前らなんかよりもずっと速く試練をクリアした奴らには暇潰しに別空間に行ってもらってたんだよ!
ったく!次の闘いにも関係ある仕事の手伝いをしてもらってたってのに、お前らうるさすぎ!」
なんかいろいろ説明を端折られてるせいでよく分からないけど、どうやらあの子が俺より遅かったのは、先にクリアしていて別の作業に行っていたからか。
他の生徒は納得したというよりデュランの気迫に押し負けて黙っていった。
気が済んだのかデュランは満足そうに頷いて、降りてきた穴を見上げた。
「おーい、カリヤ!いちいちマイクの奪い合いすんのめんどいし、カリヤもこっちで直接話せば?」
【……。】
スピーカーからは沈黙が返ってきた。
そしてしばらくしてから
【…いいだろう】
そう返事があり、今度は正面の壁に大きな穴が開いて一人の男が姿を現した。
途端に
「か、薫…!!!」
ぎやまからとんでもない殺気が溢れ出し、一瞬でカリヤの正面に移動していた。
「は、え?縮地?いや…!」
あれは縮地じゃない。
爆発的に¨欠片¨で強化した鎖を伸ばしてそれを縮めただけだ。
ぎやまは出現させた鎖鎌を振りかざす。
それをカリヤは無表情で見ていた。
6月15日(金)?時??分