拾
5月11日16時05分
学校を出るとまっすぐ俺の家に向かった。自転車で約10分の位置にある俺の家は、たまに学校帰りにクラスの連中で集まったりする。
ぎやまには帰る道すがら大まかなことを説明した。
「ふ~ん、面白いね。それって阿部ちゃんが考えたの?新しい話できたらメールしてよ。」
「いや、だからこれは小説のネタじゃないって!覚えてない?ここ1ヶ月毎日同じ夢を見てたはずなんだけど…。」
ここで説明しておくと、俺とつねとぎやまは二年のときから携帯小説を書いている。
最初に俺がバイナハザードという稲穂学園を元にした小説を書いてぎやまに見せたのがきっかけで、それからつねとぎやまも独自ストーリーなどを書き始めたんだ。
「やっぱり覚えてないな~。第一夢なんてすぐ忘れちゃうもんだしさ。」
「まぁまぁ、ぎやま。これはネタじゃないんだよ。実際ここ1ヶ月、毎日同じ夢を見るし。」
ぎやまの言葉につねが説明している。俺と同じように夢での出来事を覚えているやつが身近にいてくれて、正直ほっとしている。
あれがただの夢だったとしたら、俺の頭の中がどうなってるのか心配になる。
「…これはつまり、新たな小説を書けという神からのお告げなのだよ!!」
「なんでそうなる!?」
メガネに指を添え決め顔で叫んでいるつねに、俺は全力でつっこんでいた。そりゃそうだろ。なんでそんな突拍子もない答えに行き着くんだ…。
「これはたぶんそんなんじゃないだろ。俺だけでなくつねも覚えているってことは、夢に出てきた人全員が見ているかもしれない。だったら何者かが故意に見せているのかもしれないでしょ。」
「ま、おれは覚えてないけどな。」
「お告げ云々は冗談として、夢では神って言葉は使われてるんだよな。ま、細かいことは阿部ちゃんの家で話そうや。」
つねの提案に、俺達は自転車をこぐ速度を速めた。
5月11日16時15分
家に着くと、さっそく俺の部屋で夢での出来事を話し始めた。
「ヒャッホー!!阿部ちゃんのベッドヤベェぜ☆ハァハァ!!まさか隣は妹さんの部屋!?うおぉぉ、猫まっしぐらっ!!!」
「「自重しろっ!!(バシッゴスッ!!)」」
何かのスイッチの入ってしまったつねを片付けると、メールで送ってもらった内容を詳しくぎやまに伝え始めた。
5月11日16時30分