百五
6月15日(金)?時??分
『残り時間10秒を切りました』
もう時間は残されていない…
俺は覚悟を決めることにした。
『5』
『4』
「俺は今…『3』…君だけを守りたい」
『2』
「え?」
『1、0…時間です』
6月15日(金)?時??分
『残り時間2分30秒』
言われた言葉の意味がやっと頭に染み込んできた。
「…えっと、どういう意味?」
『……。残り時間2分』
鏡は何も答えずに、ただカウントしていく。
不穏な気配を感じたのか、舞霞達もこちらの様子を窺っている。
オレはなんて言ったらいいのか分からず、沈黙することしかできなかった。
6月15日(金)?時??分
「がっ!」
幸いにも弾丸は脇腹を掠めただけだった。
とっさに銃口の向きから推測して身を捻ったのがかろうじて間に合った。
「サバゲーとかちょくちょくやってるって言わなかったっけ?」
レオンハートは悶えるおれに銃を突きつけながら言った。
掠めただけとは言え、心臓に近い左脇の肋付近を抉られたせいで、体が硬直してしまって動けない。
「武器もった俺に接近戦で勝とうだなんてナメ過ぎ」
レオンハートは躊躇なく引き金を引いた。
6月15日(金)?時??分
『第四の試練、クリアです』
「…え?」
試練のやり直しを覚悟して身構えていた俺は思わず拍子抜けしてしまった。
『引き続き、第五の試練を開始します』
「あ…」
『第五の試練、汝鏡面に写りし汝より最愛の者を守れ』
鏡面に写りし…?
『制限時間はなし。始め』
途端に背後に生じる一つの気配。
俺が振り返るとそこには…
第五の試練、双極の鏡面
第四の試練で
殺せなかった場合
第五の試練
最愛の者を自身から守れ
制限時間なし
殺した場合
第五の試練
自分を殺せ
→自殺
制限時間10秒
6月15日(金)?時??分
「…は?」
俺が振り返ると、
「……。」
そこには¨俺¨がいた。
最初俺はまた鏡が増えたのかとも思ったが違和感がある。
鏡なら左右逆になっているはずだが、¨俺¨は普通に向かい合った状態で立っていた。
「なん…!」
別に意識してとかそういうんじゃなく、俺はとっさに鬼丸を抜刀していた。
ガキンッ!
鞘から半分ほど出た刀身で受け止めているのは¨俺¨が振り払った日本刀。
¨俺¨の日本刀は躊躇いも容赦もなく俺の後ろにいるちいの首を狙っていた。
¨俺¨は攻撃が阻まれたとみるや即座に俺から距離を取っていた。
だが同じウルトラマンのお面から見える双眸はちいのことを凝視している。
「そういうことかよ…!」
第五の試練の内容が理解できた。
俺は¨俺¨自身からちいのことを守らなくちゃいけないってことか。
制限時間なしってことは¨俺¨を倒した時点で試練は終了でいいんだよな?
シンプルで分かりやすい。
俺は改めて油断なく鬼丸を構えた。
¨俺¨もまったく同じように構えている。
「…本当の戦いはここからだぜ!」
俺は小さく呟いて地面を蹴った。
6月15日(金)?時??分