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百二

6月15日(金)?時??分


『これより試練を開始いたします。覚悟はよろしいでしょうか?』


改まった口調で鏡がそう言ってきた。


まあ改まるも何もないけど。


とりあえず何かあるのか?


まだ第三の試練が終わって数分しか経っていない。


『第四と第五の試練は連続して行われます。ありとあらゆる覚悟をしておいて下さい』


「ありとあらゆる覚悟って…。どんな試練なんだ…?」


『試練の内容については中で説明します。覚悟ができたらお入り下さい』


今回もそんな感じなのか。


とりあえずややこしい試練じゃないのを祈るばかりだな。


「よし」


俺は立ち上がり、鏡に向き直った。


『覚悟はいいのか、小僧?』


覚悟なんて最初から決まってる。


「ああ。鬼丸こそ覚悟はいい?」


『ぬかせ』


俺達は互いに軽口を叩きながら鏡をくぐった。




第四の試練、比翼連理の天秤


 6月15日(金)?時??分


何もない真っ白い空間。


「…え?」


俺は思わず声を洩らした。


鏡を抜けてすぐに予想外の人物が離れた位置に立っていたからだ。


『第四の試練。汝最愛の者と栄光を天秤にかけよ』


「これってどういう…」


俺の目の前にいるのは今の彼女、ちい。



ちいは戸惑うように辺りを見渡していたが、俺の姿を認めると駆け寄ってきた。


「佑くん!」


「なんでここに…」


『第四の試練、この世で最も愛する者を殺せ』


鏡は残酷な言葉を何でもないような口調で言った。


『制限時間は5分です』


「ちょっと待って!意味が…」


『ありとあらゆる覚悟をしておいて下さいと先ほど申し上げました』


「それとこれとは…」


『質問は受け付けません。残り4分47秒』


「くっ…!」


どうしたらいい?


今までも変な試練ばかりだったけど、今回のは常軌を逸している。


「佑くん…?」


ちいは戸惑った様子で俺と鏡を見比べている。


俺は何て言ったらいいのか分からなかった。


 6月15日(金)?時??分


『残り60秒を切りました』


鏡の一言が俺に突き刺さる。


俺は5分という短い時間をほとんどちいを落ち着かせることだけに費やしていた。


ちいには今俺が受けている試練のことや、今まで闘ってきた夢のことは言っていない。


言えるわけがない。


ここにいるちいが鏡の¨写した¨偽物の可能性があるが、


というか多分偽物なんだろうが、


それでも俺はちいのことを不安にさせたりはしたくなかった。


残り60秒…


俺はどんな決断を下せばいいんだ…!


もし時間内にちいを殺さなければ、


鏡に聞いた限り俺は精神が死ぬまでずっと試練を受け続けることになる。


もしそうなって再び試練を勝ち残ったならば、


またこの決断を迫られるのか。


だったら偽物であろうこのちいを殺せばいい?


そんなことできるわけがない!


俺はそんな簡単に割り切って考えられるほど大人じゃない。


『残り45秒を切りました』


俺は…


6月15日(金)?時??分

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