百
ついに百話到達です!
6月15日(金)?時??分
どうしてオレが舞霞の【神器】を使っているのかも、
その【神器】の名前が¨舞霞¨なのもまだ分からない。
だが…
「薫…いや、カリヤ」
いつの間にか記憶の奔流は止まり、
目の前には会いたくもなかった、
絶対に逢いたかったやつがいた。
「お前だけは」
そいつは無表情でただずんでいた。
「絶対に」
オレは一歩踏み出した。
「オレが…!」
カリヤのことを完全に敵だと認識した瞬間、オレは鏡の外に立っていた。
6月15日(金)?時??分
『第三の試練、クリアです』
突然鏡にそんなことを言われて混乱した。
「ち、ちょっと待ってよ!まだあいつを倒して…」
納得いかない…
あいつに一撃でも入れないと気が済まない!
それどころかあいつを…
『第三の試練の突破条件はクリアしました。よって、次の第四の試練に進めます』
「ふざけんなよ!どういうことなのか詳しく…」
『裕ちゃん?』
「…っ!」
オレは舞霞の声にびくついた。
『裕ちゃんどうしたの?試練クリアしたんじゃないの?』
「舞霞…」
どんな反応をすればいいのか分からない。
記憶を取り戻したとはいえ、それを確信をもってオレの正しい記憶だと断言できない。
同時に頭の中は欠けていたピースが埋まったような自然な感じだ。
オレが何も言えないでいると、強制的に鏡から出されてしまった。
「ちょ!」
『第四の試練を開始しますか?』
「いや、その前に質問…」
『試練の内容に関する質問以外受け付けておりません』
「Shit!!」
鏡は何の反応も返さない。
『ねえ、裕ちゃん。試練が終わった時から変だよ?中で何があったの?』
「……。」
オレはいたたまれなくなって鏡に向き合った。
「…分かった。試練を始めてよ」
『承知致しました。それでは第四の試練を開始いたします』
『裕ちゃん?』
オレは振り払うように鏡の中に足を踏み出した。
6月15日(金)?時??分
カリヤはそんな杉山の様子を鏡を通して観察していた。
かつてカリヤが杉山たちと共に闘っていた時、
カリヤは何も考えてはいなかった。
闘いに巻き込まれ、ルールを提示され、
カリヤは勝ち残っていった。
勝ち残った先で共に闘う仲間ができたが、
カリヤにとってはただの人数合わせに過ぎなかった。
ただ最後に、虫の息だった舞霞にはトドメを刺すことを躊躇した。
すでにリタイアの光に包まれて、ほとんど意識もない少女に刃を突き刺すことに意味を見いだせなかったのだ。
結果的にそれが今になって思わぬ誤算となり、カリヤの目の前に現れた。
あの時死んだと思っていた舞霞が消える最後に願いを叶えてしまっていたのだ。
『いつまでも裕ちゃんと一緒にいたい』
半分以上消えかけていた少女の願いは少しだけ叶えられた。
記憶を失い、転校していった先で再び闘いに巻き込まれ杉山の【神器】に、舞霞の記憶が定着したのだ。
そして本来ならまた同じ¨鎖鎌¨となるはずだった杉山の【神器】は舞霞が使っていた¨多節棍¨へと変化した。
歴代の所有者たちの存在に記憶を呑み込まれそうになりながらも、舞霞は¨多節棍¨としての主人格を維持し続けた。
舞霞は自らの願いをあんな姿になってまで…
「……。」
今まではまだ何の障害にも成り得なかった。
だが今回の試練により、杉山は失った記憶を取り戻した。
カリヤは少しだけ思惑通りにいかない現状に苛立ち、
同時にこの結果がどうなるのかに興味を覚えた。
カリヤは初めて杉山をまっすぐに見据えた。
「…おもしろい」
6月15日(金)?時??分