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九拾九

6月15日(金)?時??分


俺は間違いなく人生の中でもトップ3に入る記憶を思い返していた。


─────────


「あのさ…さっきの答えなんだけど…」


「お、おう…」


「私も多分佑ちゃんのことは好きなんだと思う。

でも昨日言ったとおり私恋愛とかよくわからないし…」


「それは俺だって同じだよ。


もしKも俺のことが好きだって思ってくれてるなら、


恋愛がわからない同士ゆっくり二人で学んでいこうよ…ね?」


「佑ちゃん…」


─────────


う~ん、昔の自分を思い返しすだけでこんなにこっぱずかしいもんなのか。


あのまま近くで聞いてたら悶死してたかもな(←マジで)


ま、でも超頑張ってるじゃん俺。


俺はKを振り返らないまま、鏡の縁に手をかける。


もう話すことは全てKに話した。


「…ねえ、佑ちゃん」


「ん、なに?」


「…やっぱり、何でもない」


「…そっか」


俺は意識してそっけなく言って、そのまま鏡を通り抜けた。


これ以上ここにいたら、俺の中の何かがどうにかなってしまいそうだったから。


6月15日(金)?時??分


『第三の試練、クリアです』


鏡を出てすぐにそう宣言された。


「…ねえ、もしかしてこれって俺達の¨心¨を試したの?」


『…お答えできません』


「…そっか、ならいいんだ」


俺はもう一枚の鏡をくぐって外に出た。


6月15日(金)?時??分


カリヤは今回改変させた試練について回想していた。


従来の試練で第三の試練と言えばあくまで試練を受けるものが最も心層に傷を負った、


いわばトラウマの対象となった人物と真っ向から対話するというもの。


それを今回は¨合わせ鏡¨で精神のみを異空間に飛ばしてもっとも強い意識の記憶を追憶させるという形にした。


そして追想の相手との対話を経て試練を受けた者を縛っていた枷を取り除いたのだ。


¨夢を追う¨妨げとなるものを取り除いたことで、彼らはより一層高みに登れるはずだ。


中には押さえ込んでいた記憶を解放されたことに耐えられず、精神に多大なダメージを負ってしまった者もいるが…


(…ほとんどの者が乗り越えている)


今のところ問題はない。


ふとカリヤはとある生徒の写っている鏡を一瞥した。


そこにはかつての…


「……。」


カリヤは無言で作業に戻っていった。


6月15日(金)?時??分


『…小僧』


今まで口をつぐんでいた鬼丸が、少しだけ戸惑ったように言った。


「なに?」


『…そんな顔をするな』


「え?」


『…っ。何でもねえよ』


途端に不機嫌になる鬼丸。


「何だよ…」


俺はよく分からず鏡に写った自分の顔を見てみた。


「……!」


急いで目元をこする。


確かに鬼丸じゃなくても驚くかもな。


俺でも気がつかないうちに涙が流れていた。


なんとなく、


俺は鏡に写る景色のその向こう側を眺めてみた。


景色はどこまでも続いているようで、


でも、手を伸ばせば触ることができるようだ。


6月15日(金)?時??分


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