零
他にも作品を投稿しているのですが、実はこの作品が学生時代の処女作だったりします。
作者の黒歴史の塊です。
厨二病全盛期に受験勉強そっちのけで毎晩遅くまで書いていました。
とても拙い文章と無理矢理な内容ですが、固有名詞などは除いて、ほぼ編集なしで当時のまま投稿する予定です。
よろしくお願いします。
月明かりに照らされた校舎の屋上に、その男はいつの間にか存在していた。
地面に届きそうな丈の漆黒のマントを身に纏い、傍らには身の丈を超える程の大きな剣が直立している。
まるで時が止まったかのような校舎の静けさの中、男は能面をかぶったような無表情でただそこに立っている。
顔は十代後半のようにも見えるが、彼から放たれる静かな、それでいて苛烈な重圧が二十代にも三十代にも見せていた。
何時間経っただろうか。時計台の針が午前零時を差す少し前、男の傍らの剣が静寂を破った。
『今度の舞台はここか、カリヤ!!』
場違いなテンションの声が剣から発せられる。
『生徒数2400人!!こんな好条件めったにないぜ、カリヤ!?これだけいれば一人二人なんて言わず、十人二十人集まるんじゃないか?神を殺せる異能者共がよ!!ヒャハハ!!』
剣が喋るのを男は気にした風もない。どうやらこれは男にとって日常らしい。
『まったく最近は腕の立つやつもめっきり減っちまって、退屈だよなぁ!せっかく勝ち残ったって最後は力に溺れちまうバカばっか!!いつになったらお前も俺もお役御免になるのやら!!』
「…黙れ。」
さすがに煩わしくなったのか、男は口を開いた。
会話は、一方的に剣のほうが続く。
『だってよう!さすがの俺様も飽きてきたぜ!!さっさと他の奴に役目を譲って隠居しようぜ?』
「……。」
『お前だってそろそろ飽きただろ?今回わざと負けてすっぱりこの業界から足洗おうや!!そんで世界中を気ままにさすらおうぜ!!』
「……。」
『なぁカリヤよぅ!別に負けたって力はすぐに消える訳じゃないんだ。そのままトンズラこいちまえば捕まることもねぇ!本来お前だって巻き込まれただけなんだし、責任なんか他の奴に押し付けちまえよ!』
「……。」
男は沈黙したまま顔を下に向けている。
時計台の針が午前零時を差した。その途端男は顔を上げ、
「……時間だ。」
そう呟くと両腕を広げ、言葉を発した。
「……罪なきお前達にはすまないことをする。その怒りや悲しみは全て俺が受け止めよう。数多の試練に打ち勝ち、俺の元までやってくるがいい。神をも殺す異能の力で俺を罰してくれ。」
その言葉が終わるのと同時に、辺りは一瞬昼間のような光に照らされ、またもとの静寂に包まれた。
そしてすでに男も傍らの剣も姿を消していた。
日付はちょうど、4月の1日に変わった。
新年早々に拙い作品を投稿してしまって申し訳ございません。
今年もよろしくお願いします…。