分断社会の陰謀
人類の歴史は分断の歴史と言っても過言ではない。
仕方のないことだった。
それは、本能である。
人は自分と異なるモノを排除する。
生命の危機と感じるのだ。
こうして人種間との分断が始まった。
人類の成長する。
人種が集まり、国を形成した。
そして、緑の大地に見えない線が引かれ、
領地として分断された。
さらに人類は成熟する。
しかし、分断社会も成熟した。
その成熟は、良い面とは言えなかった。
陰謀が加わったのだ。
陰部とは聞こえが悪いが、
司る者の都合が良い意思、
これを陰謀と言べきものだろう。
実感が湧かない?
例えば人種差別問題、中東の紛争がその例だ。
これは西洋諸国の陰謀だ。
宗教布教という名目でアフリカ、アジア、南米を侵略し尽くした。
黒人を奴隷とし、中東に勝手に国境を引いた。
これが今日の禍根となって、世界にはびこっている。
こうして、分断の性質は本能からイデオロギーに変質していった。
それから、宗教対立、資本主義と共産主義、民主主義と独裁政治など、
色々な仕方で分断されていった。
現在社会においては、何といっても、貧富だろう。
これも陰謀がある。
十数年前には理想的な国があった。
それは、日本である。
一億、総中流社会と言われた。
それが、今ではこのありさまだ。
この陰謀は、中国、ロシア、北朝鮮でもない。
アメリカだ。
アメリカは日本の平等社会を恐れ、仕掛けたのだ。
そして、知らぬ間に、競争社会が正しいと刷り込まれていった。
と言うのも、貧富の格差が激しいアメリカのすぐ近くに、
理想的な平等社会だと困るのだ。
しかし、最近、新たな分断の幕が上がったのだった。
それは、なんと・・・
潔癖とそうでないモノ。
人類の新たな局面を迎えたのだった。
これにも陰謀があると噂された。
そうでなければ、変だろう。
人気の女性タレントが自分のガサツ、不潔の自虐ネタをバラエティー番組で語る。
笑ってしまう。
でも、眉をひそめる人がいる。
そう、潔癖人間。
こうして、日本は選別され、分断されていった。
2021年、驚くべき構想が持ち上がった。
『潔癖マンション』の建設である。
マンションごと潔癖にするという。
冗談のような話だが、技術的には難しい事ではなかった。
なぜなら、半導体工場のクリーンルームを応用すればいいのだ。
入棟時にエアーで埃、花粉、菌などを洗い流す。
室内は空調により、清浄化されている。
ただ、食品の持ち込みができないと言う一部の不満があるが、
配給される食事はカロリーが計算され、バランスが良いモノだった。
こうした不満を解消させたのが、ペットだ。
しかし、当然、ペットの持ち込みは禁止である。
指定の無菌ブリーダーからは、ペットを購入が許されていた。
2030年には潔癖都市構想が浮上した。
潔癖人間は耐えられなくなっていた。
そうでない人と仕事をすることに。
それで、仕事場、生活環境ごと潔癖にしたいと主張した。
馬鹿馬鹿しいと思われたが、これが日本で実現した。
経済が行き詰まった日本には、大きな開発が必要だった。
新都市の建設は国家の一大事業となり、
その次のステージに向けての第一歩になるだろうと予想された。
ここである噂が流れた。
その噂を聞きつけた人々はこぞって、このプロジェクトに参加した。
当人たちは無理だが、孫の世代では可能だという。
それは火星移住だ。
火星に移住する際、地球のウイルス、菌を持ち込ませないため、潔癖人間が選ばれるという。
全国で7箇所、募集人員は約10万人だが、応募倍率は3倍を超えた。
2050年に入ると、さらに次のステップに進んだ。
サハラ砂漠でドーム都市の建設が始まった。
日米の共同プロジェクトで、仮想火星移住計画と噂された。
もちろん、無菌・無塵である。
また、人工照明で昼と夜を作り、天気まで管理した。
これに改良を施せし、火星に持ち込めば、移住も可能であろうと言われた。
ただ、このドーム都市の成功が火星移住の計画を狂わせたらしい。
それはそうだろう。
広大な砂漠に人が住めるようになれば、何も火星に行く必要はない。
ドーム都市が次々建設されていったが、
宇宙船が造船されるというニュースは聞かなかった。
2070年、とうとう火星への移住船が旅立った。
10万人規模の移住だ。
選ばれた人々は笑顔で旅立って行った。
それから、2年後、世界中に衝撃的なニュースが駆け巡った。
良いニュースだった。
それは、火星移住とは無関係のニュースであるかのようだった。
『ガンの新薬開発成功』の見出しが躍った。
完全に癌が消滅するという。
決して、罠ではない。
記者会見で製薬会社の社長は、
「なぜ、新薬の開発に成功したのですか」という記者の質問に対し、
「苦労して育てた、無菌の良い動物が大量に手に入ったので、
動物実験の精度が上がりました」と答えた。




