新作スイーツとあわいの森(1)
リーンドーンとベルが鳴った。黒板の前の教諭が今日の授業の終わりをつげると、ミヨははぁ、と息をはいてペンを筆箱に放った。
授業の内容は昔話。昔話には色々な教えや事実が隠されているので、読み解こうということらしい。龍が創造し、エイルが救った世界の始まりの物語は、この国では誰でも知っているおとぎ話だ。小さな子供でも知っている話を今更読んでなんになる、とミヨは常々思っている。
みんな受験があるのだから、そんなことより教科書を進めた方が有意義ではなかろうか。
「…カリキュラム通りにやればいいのに。」
「ミヨー!放課後ちょっとつきあって…ってなんか不機嫌?」
友人のカナが顔をのぞきこんでくる。手に持っているチラシから察するに、つきあってほしい場所は新発売のスイーツを出すカフェだろう。机の上のものを鞄につめて立ち上がる。カナの帰り支度はすでに万端だった。
「別に。面白くない授業だなーと思って。」
「ミヨは真面目だね、進学組でも無いのにさ。」
「そういうカナは進学組のくせに、不真面目。」
ミヨたちはソルセルリ魔導学園の高等部に所属している。学園はある程度進学に力をいれてはいるものの、その校風は比較的自由で就職と進学も半々くらいだ。2年生の間に進路をある程度決め、3年生でクラスが分かれることになっている。ミヨたちのクラスでも2年生になり、なんとなくではあるが進学組と就職組に分かれはじめていた。
カナは本人いわく入学した頃から進学を心に決めているらしいのだが、そのわりにいつも自由に遊び回っている。そのくせテストは低くない点をとるのだから、本当は単に不真面目というわけではなく、要領がよいのだろう。
一方ミヨはといえば、進学組かといわれれば上の学院に進む気はないのだが、就職と言われてもいまいちピンとこない。このまま多くの先輩たちと同じように魔導技師か公務員になるのかもしれないが、どうも働いている自分というものが全く想像できない。確かに勉強は嫌いではないのだが、将来を見据えているかということでいえば、カナよりよほど不真面目と言えるのかもしれなかった。
読んでくださってありがとうございます!
1回目がプロローグだけってどうなんだろう…?と思って本編も投稿してみました。
会話文が少ない…要修行ですね…