双子の天使コルサコフ
天気がいいので蒲団を干そうとベランダに出る。
目の前は駐車場になっていて、仲の良さそうな双子の男の子が遊んでいた。
近所の子供だろうが、あまり見覚えがない。
顔立ちも背格好もそっくりで、パットメセニーみたいに髪型がボサボサだった。
真っ白いスモッグには染み一つなく、天使の白衣のように見えた。
「むーすんで、ひらいーて」
「てーをーうってー、むーすんでー」
「まーたひらいて」
部屋に戻ると、ガタガタと不審な音が聞こえてきた。
鞄の中のスマートフォンがバイブのまま振動している。
かつての親しい友人や女性の顔を浮かべてみたが、そもそも仕事以外ではこの連絡先さえ伝えてはいない。
知らない番号が表示されている。
こちらが出るのを待っているのか振動は止まらない。
「まーたひらいて、てーをうってー」
天使たちの歌声が、背後で徐々に遠ざかる。
数秒すると振動がいったん止まった。
相手が間違いに気づいたのか、諦めたのかは分からない。
手の中のスマートフォンがぶるっと、今度は短く振動する。
1件のメールが届いており、やはり見知らぬアドレスから届いていた。
hutagonotennsi@mail
振り返ると、双子の姿は消えており、真っ白いビニール袋が唯一の痕跡のように風に揺れていた。