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仮の住処
実際にセンセイは昔、塾の講師をしていたらしい。
ただ、そこで教えていた女子生徒に手を出してクビになり住んでいた街から札幌まで逃げてきたというのが噂だった。
センセイは多くを語ろうとはしないが、少なくとも何か事情があってここに住んでいるのだということはわかった。
「センセイ」
呼びかけてみるが反応はない。
「センセイ、ちゃんと布団で寝てください」
玄関を開けて最初に裸の男がいる家になど本当は住みたくはなかった。
それでも、このアパートに住む理由は単純に家賃がタダだというだけだった。
いつまでもおじさんにお世話になる訳にはいかなかったが、札幌で家を借りるにはまだまだ稼ぎが少ない身だ。