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結んで開いて
台風が熱帯低気圧に変わった。
あの日、飛行機が二本の塔に追突した日。
そして、私が生まれた日。
かつてはグラウンドゼロと呼ばれたあの地から、はるか遠く離れた場所で私は産まれた。
父も母も、その日はテレビに釘付けで、何かを祝福することが躊躇われるように世界は大きく揺れていた。
私が産まれたその日に、あまりにも沢山の命が失われた。
生と死のバランスが崩れていた。
私は閉じていた掌を開いた。
願い事はその瞬間に空へと霧散した。
それを私が思い出すまでには、しばらく待たなくてはならなかった。
私はつかみ損ねた。
何かの手応えだけがいつまでもいつまでも残っていた。