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真実(後)

いきなり鬼退治をしろと言われてどこまで本気か分からなかったが、悲しそうな声を聞きながら考えてみる。


「うちの一家は忍の家系で、俺が生まれたときにも(あざ)の秘術とやらを施したと。しかし、覚醒させる両親が死んでいるから目覚めないまま今に至り、なんのきっかけかはわからないが能力に目覚めたと。大体こんな理解で良いか? 」


【きっかけは二〇二〇年の大地震のはずじゃ。悪忍(おに)の末裔が力を使い、その影響でお前たちの封印が弱まったと見てよい】


「と言うことは、ここにいる連中はみんな親戚ってことか? 」


自分で言っておきながらなんだか妙な気分だ。


【一族と言っても全員が血が繋がっていると言うわけではない。同じ地域に住んで、同じ仕事をしていただけじゃから、まぁ血の繋がりはあっても薄いものじゃろう】


さて、妙な展開になってきた。

忍の末裔、字の秘術、鬼、大地震・・


「ん? 大地震をオニが起こしたってどう言うことだ? 」


一通り話を聞く予定だったのでさらっと流してしまったが、よく考えると地球規模の天災を起こすようなやつらとまともに渡り合えるわけがない。


【ふむ。その辺りも説明が必要じゃの】

【お主、龍穴(りゅうけつ)龍脈(りゅうみゃく)というのを知っているか? 】


「それはあれか? 風水とかでいうパワースポットみたいなものか? 」


【そうじゃ。この国の最大の龍穴は富士の火口じゃが、そこから主に山脈や河川を介してエネルギーが流れる道を龍脈と言い、エネルギーが強く漏れ出るところを龍穴と言う】


「その龍脈やらがなんの関係があるんだ? 」


【鈍いやつじゃのう……南海トラフと言うのは富士から伊勢、吉野、高野山を経て龍の尾に至る大動脈とほぼ平行に走っておるのじゃよ】


「龍脈を操って地震を起こした……と言うことか? 」


どちらにしろ想像の範疇(はんちゅう)を越えている。


【今の龍脈は若干不安定でな。ここ四半世紀の間に大きな地震が相次いだじゃろう? あれは龍脈の乱れが原因で起こったものじゃ。龍脈を乱すには流れを切るか止めればよい】


「どうやったらそんなことができる? 」


【山を切り崩したり、川を塞き止めたり、流れを変えてしまうとエネルギーの流れが弱くなる。弱くなると外部の影響を受けやすくなるのじゃ】


【その為、為政者(いせいしゃ)達には龍脈に影響を及ぼすような開発は行わないように言い伝えてあるはずなのじゃが、どこぞの私欲に走った馬鹿者がいたのじゃろう。もしくはオニと通じているものがいるのやも知れん……】


物騒なことを語り始めた。


【とにかく! 弱った龍脈に対して悪意を持って力を使い、地震を引き起こしたのがオニのやつらの仕業であるのは明白。お主にはやつらを退治してもらいたいと言うわけじゃ】


最後は半ば強引に話をまとめたような気もするが、どちらにしろ俺にことの真偽はわからない。こいつが信用できるかどうかだが……


そもそも人ですらないものを信用もなにもない。

迷ったときは直感を信じるしかないが、曾爺(ひいじい)さんや(じい)さんの名前を出した時のこいつの雰囲気は、(じい)さん達を仲間として懐かしんでいるようでもあった。


そもそも、ここまで話を聞いた以上後戻りもなにもないだろう。


「よし、わかった。お前の言う通り鬼退治をしてやる」


半ばやけくそだったが言葉にする事で(はら)も座った。


そう思った瞬間、右手の甲が熱を帯びて淡く瞬いた。

目をやるといっそう強く光った後、何事もなかったように光は収まった。


【お主の覚悟しかと聞いた! これより我は辰巳守(たつみまもる)(あるじ)とし、力を貸すことをここに宣言しよう! さぁ主よ我が名を呼べ! 】


「急にどうした? ! 」


やけに元気になってぐるぐる動き始めたシロに驚きを隠せない。


【お主の覚悟に(あざ)が反応したのじゃ。お主だけでは荷が勝ちすぎるじゃろう。我が力を貸してやるから我が名を呼べ! それで契約完了じゃ! 】


契約と言う単語に引っ掛かるのは勤め人が長かったせいか……

どちらにしろ、やると決めたのだ。


「よし! 俺に力を貸せ! 【シロ】! ! 」


力一杯呼んでやった。


【……え? 】


「……ん? 」


妙な沈黙が流れる……うーむなんだこの既視感(デジャヴ)


【……やはりシロなのか? 】


「いや、名を呼べって……お前納得したんじゃないのか? 」


おいおいまたこの(くだ)りやるのかよ。


「そんなに嫌ならへb……」


【よし! 我が名はシロ! 察しの悪い辰巳守を主として、水の力を(つかさど)らん】


「おいなんか今聞き捨てならない台詞が入ったような……」


おれのツッコミは目映い光に遮られた。

あまりの眩しさに右手で目を覆うと、その甲に光が収束していき、

まるで水の印に吸い込まれるようにして消えた。


【聞こえるか? 】


あたまの中にシロの声が聞こえる。


「あぁ」


【これからはこの(あざ)を通して会話ができる。必要なときは呼ぶが良い】


こうして、俺とシロのオニ退治へ向けた日々が始まったのである。

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