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痣印-アザイン-  作者: まいくーはん
十一章
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霊獣の集い

【さて、今日みんなに集まってもらったのには理由がある】


真面目な声がそう切り出すと別の場所から声が上がる。


【その前にいいかなぁ】


その場にいる全員がギロリと声の主を見るが気にせず続ける。


【みんな何飲む?】


【ワシはメロンソーダじゃ】

【ボクは紅茶】

【私はコーヒーを頼む】

【僕は緑茶ね】


「オッケー。スイマセーン!」


最初に問いかけた声が店員を呼ぶ。


「ドリンクバー(いつ)つと鬼盛りポテト&オニオンリングとジャングルサラダお願いします」


注文を繰り返すとドリンクは自分達(セルフ)でと言い残し店員は厨房へ注文を伝えに行った。


「カルラ手伝って」


「了解ー」


注文を終えるとハッコがカルラを伴ってみんなのドリンクを取りに行った。


白龍シロのやつあの顔でメロンソーダとかウケるわね」


「シロは昔から甘いもの好きだったからねぇ」


くすくす笑いながらカルラが答える。


ここは都内にある個人経営のレストランだ。


集まっているのは人間の姿に扮している霊獣たち。

ドリンクを取りに行った二人のうち、黒髪ショートカットでショートジーンズにTシャツというラフな格好をしているのは伊吹の霊獣である白狐のハッコ。

まるっきり主の姿だが髪形に服装も変えているので万が一伊吹の知り合いに見られた時にもはっきりと別人と分かるだろう。


所々赤のメッシュが入った茶髪のボブカットの女性は黄色のシャツの上に白のブラウスを羽織り、黒字に黄色と緑のチェックが入ったロングスカートを履いている。

裾から時々編み上げのブーツが見える出で立ちをしているのは八代やしろの霊獣である金翅鳥こんじちょうのカルラ


「はい。シロ!メロンソーダお待ち!」

「すまぬな」


六人がけの窓側の席で窓の外を眺めている銀髪で三白眼さんぱくがんの男。

雰囲気は大人しく髪型のせいか目を引く外見をしている。

縦のシャドーストライプが入った白いワイシャツにグレーのスーツを羽織っているのは辰巳たつみまもるの霊獣である、白龍ことシロ。


「はい。仁王におうはコーヒーだよね」

「かたじけない」


濃いブルーの作務衣さむえに身を包み坊主頭にあごひげを蓄え、開いているのか分からない細い目をしているのは、草薙くさなぎとしの霊獣である大亀の仁王。


「はい。ハッちゃんは緑茶ね」

「ありがとう。カルラ」


大き目のTシャツにカーゴパンツを履き、短い髪の毛をツンツンと立たせた青年に見えるのは、早川はやかわいさおみの霊獣である犬神のハチ


はたから見れば年代も職業もばらばらに見えるこの五人が同じ席に座っているのは異様な光景ではあったが、幸か不幸か都会の人間は他人に無関心であり一度見た人間も「変な組み合わせ」程度にしか思っていなかった。


「さて、今日みんなに集まってもらったのには理由がある」


みなに飲み物が行き渡ったのを確認して冒頭の台詞せりふを繰り返す仁王。


「最近我々の影が薄くなっているような気がする。そして、その中でも私の存在が更に希薄な気がするのだ」


「考えすぎじゃないの?」とはハッコ。


「うーんまぁ確かに仁王はアレだよね」とはカルラ。


「お前ら二人は割りとメインで登場するが、私はちょこっと出ただけだ。」


仁王が薄い目をカッと見開き低い声で思いのたけを告げる。


「おぬし図体の割りにちっちゃいのぅ・・・煩悩の塊ではないか。修行が足りんぞ」


シロがあきれた声を出す。


「腐るほど機会のあるお前に俺の気持ちなど分かるものか! 私も個別エピソードが欲しいのだ!」


涙ながらに訴える仁王に女性陣はドン引き。周りの客からも「坊さんが泣いてる」と注目を集め始めてしまった。


「いや、仁王さ。ほら、草薙のところはまだ一番大きいイベント残っているじゃん!」


ハチが慌ててそう言い、カルラがフォーローする。


「そうそう! ほら! 赤ちゃん! なんだかんだで毎回引っ張ってきたんだからそろそろ期待して良いんじゃないかな? 美味しいのは最後までとっておく人もいるしさ!」


カルラのフォローが奏功したのか、ピタッと涙が止まり、今度は気持ち悪いくらいに頬を赤く染める仁王。


ひげ面の坊主が頬を赤らめる様子に周りの観客達は見てはいけないものを見てしまったかの如く、それぞれの席に帰っていった。


「赤ん坊は楽しみだな。八重やえのお腹もいつ生まれてもおかしくない位だ。私の事が分かるのか、お腹を触ると応えるように動くのだ」


右手を見つめ感慨深そうにしている仁王にカルラが同調する。


「うんうん。ボクも八代のお腹に朱美あけみたまきがいる時にやっぱり反応してくれた時は嬉しかったな。生まれてからも、三歳くらいまではボクのこと見えたりしてたみたいだけど自我が芽生えてくると忘れちゃうみたい。でもね、大事な日とか迷った時に声を掛けるとなんとなく伝わってくれたりするんだ!」


「そういうものか。庸のところは子供出来なかったからな。その分あの二人はお互いを大事にし合っているし、かえでの事を自分たちの子供のように思っているんだよね」


カルラの台詞にハチが答える。


「伊吹はいい感じに腐ってるから子供は当分先かしらねぇ・・・」


「守はまずは楓を取り戻さねばな」


ハッコとシロがため息混じりに呟いた。


五人の間に沈黙が流れる。


「結局のところ、悪忍おにをどうにかしない事にはこの先の未来は無いのよね」


「生まれてくる子達こらの為にも負けるわけには行かぬな」


その沈黙を破ったのはハッコと仁王だった。


「ならば個別エピソードがどうのこうのといっている場合ではないな」


シロが冷静に突っ込む。


「そ、それとコレは話が別であろう!」


まじめな表情を崩して仁王が慌ててそれは酷いと続ける。


「ははは。さっきのかっこいい台詞が台無しだよ! 仁王!」

「そうだねぇ」


ハチがツッコみカルラが頷く。


これから始まる戦いは熾烈を極めるだろうとこの場にいる全員が考えている。

だからこそ今この場では明るくなんでもないように振舞う。

やるべきことはやった。後は勝つだけだ。


「産まれる前に決着付いたら個別エピソード無いかもね」


ハッコが追い討ちをかけその場は笑いに包まれた。

という訳で次回は遂に草薙家のお話を書こうと思います!

乞うご期待!\(^o^)/

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