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痣印-アザイン-  作者: まいくーはん
十一章
44/50

本能

微グロ・エロありご注意下さい。

 暗い廊下をカツカツと音を立てながら黒い影がやってくる。

 その影はふと足を止める。


「さて、このままではとても協力は望めなそうですが、調教は終わったんですか? 」


 カルマが誰もいない空間に向かって問いかける。


「今は少し落ち着かせた方がいいな。いざとなりゃ方法はあるんだからもう少し待ってくれや」


 暗闇からぬぅっと(かえで)の姿をした黒龍(こくりゅう)が現れて答える。


「随分優しいんですね? 一緒にいて情でも移ったんですか? 」


 強めの口調で問い詰める。


「情? この俺が? そんな冗談面白くもなんともないぞ」


 笑い飛ばしてそう答える黒龍。


「……それならば良いですが。後、先程の質問ですがあなたの話しぶりだと楓さんは処女でないようですが、巫女が処女でなくても良いのですか? 」


「おいおい。お前も初物好きか? この国の奴等はどうしてこう『初めて』に特別な意味を持たせたがるかね。巫女が処女じゃなくちゃいけなかったらどうやって子孫を残す? 昔の因習に縛られるなんざお前さんも若いな」


 両手をあげてやれやれとため息混じりで悪態をつく。


「では、処女である必要はないのですね? 」


「ないね。なんなら経産婦でも良いぐらいだ」


 きっぱりと回答する黒龍。


「それでは後は楓さんの協力次第と言うことですね」


「まぁそれが一番難儀だな。お前の昔話でもしてやれば案外素直に協力してくれたりして……」


 最後まで言い終わる前に(かえで)の姿をした黒龍(こくりゅう)の首が胴体から別れる。


「な……っていきなり首飛ばすとかお前なかなかアツいな? 流石火の印持ちだわ」


 首が離れたのは一瞬で、何事もなかったかのように黒龍は話を続ける。


「チッ……忌々しい体ですね。次に同じ様なことを言ったら全身沸騰させて蒸発させて差し上げます」


「おーこわ。別に減るもんじゃあるまいし、それで楓自ら進んで協力してくれればそれで終わりなんだから良い話だと思うけどな? 」


 警告を無視して続ける黒龍に何を言っても無駄だと思ったのか、カルマはそのまま歩き出した。


「おい、どこいくんだ? 」


 殺気を抑えようとしないで歩くカルマの背に向けて黒龍が問いかける。


「誰かさんのせいでイライラしたので気晴らしに狩りに行くだけですよ」


 そう言うなり右手から炎を出すと四角を描くように手を動かした。

 サーカスの猛獣ショーでも始まるのかと思うほどに猛々しく燃える炎の枠が出来上がると、カルマはなんの躊躇もなく燃え盛る枠の中に消えていった。


 炎の枠は徐々に小さくなり消える瞬間、黒龍に向かって一直線に延びて左肩を(えぐ)り腕を吹き飛ばした。


 黒龍はそれを避けるでもなく甘んじてその身に受けた。

 少しカルマに言いすぎたと反省したようだ。


「若いねぇ……」


 既に再生している左手で後頭部を掻きつつカルマが消えたのとは反対方向へ歩いていった。


 ***


『管制塔! こちら(ボーイング)889機長! 滑走路に人影あり! 緊急停止する! 繰り返す! 滑走路に人影あり! 緊急停止する! 』


 離陸体制に入っていた機体は急な逆噴射にガクンと大きく機体を揺らしながら離陸するはずの滑走路を飛ばずに走り抜ける。


「「キャァァァァァァァ! 」」

「「ウワァァァァァァァ! 」」


 幸か不幸か機内は離陸体制に入っていた為、乗客及び客室乗務員の全員がシートベルトを着用していたため、離陸できなかった機体に反して空中を舞う人は居なかった。


 ポーン


『こちら機長の橋口です。只今滑走路に人影が見えた為に緊急停止を致しました。緊急のため放送が間に合わなかったことをお詫びします。只今、滑走路の安全点検を行っています。また、機内の安全確認も行いますので乗務員の指示があるまで席をお立ちにならないようにお願いします』


 機長からの放送が終わると客室乗務員達は一斉に席を立ち上がり、乗客の中で怪我人や気分が悪くなった人がいないか見て回った。

 何人かが飛んできた手荷物等が当たりかすり傷や打撲を負ったが幸い大きな怪我をした人は居なかった。


 そこまで確認したところで機体の周りに消防車や救急車が集まってくるのが見えた。


 機長の橋口は副機長の鳥越と共に数秒の間に何度も確認した人影について話し合っていた。


「あれはどう見ても女子高校生だった……よな? 」


「はい。私には急に目の前に現れたように見えました……」


 鳥越はつい先程の記憶を手繰りながらそう話した。


「俺もだ。急に炎が上がったので太陽光の反射かとも考えたが……その後にその炎の中からセーラー服を着た少女と警官の格好をしたやつも見えた」


 橋口はそう答えてから背後に人の気配を感じて振り返る。

 そこには先程の少女と警官が立ってこちらを見つめていた。


「流石にパイロットは目が良いんですね」


 少女はにこりと微笑むと橋口に向かってそう言った。

 近くで見るととても美しい。

 自分の娘くらいの少女を見て橋口はそう思った。


「な、なんだ君達は! どうやってここ……」


 プシュ!


 鳥越の台詞の途中で空気が抜けるような音がしたかと思うと、鳥越の身体が跳ねて胸の中心から血が吹き出てくる。

 鳥越はゆっくりと自分の胸に視線を移し吹き出る血を見ると、その血を(すく)様に両手をあげると、そのまま前のめりになって倒れた。

 先程まで話をしていた人間があっという間に物言わぬ死体に成り果てたが、橋口は死体を見ても現実味が沸かず夢見心地で目の前の美少女に魅入っていた。


「あらあら。お仲間が死んだと言うのに冷たい方ですね。(わだち)さん」


 美少女がそう呼ぶと警官が鳥越を撃った銃を橋口に手渡した。

 ずしりと重い。現在警察で採用されている認証式のオートマチックではなく、昔のリボルバータイプの拳銃だ。


「では、狩りを始めましょうか。あなたがその銃で客室乗務員を全員撃ち殺せたら私がご褒美をあげましょう」


 この機に搭乗している客室乗務員は全員で十二名。

 鳥越に一発撃っているこの銃では弾が足りない。

 既に撃ち殺すことにはなんの抵抗も覚えていない橋口は困惑した顔で美少女を見る。

 すると警官が二回リロード出来る様に予備の弾を手渡してきた。

 これで全部で十七発ある。一人一発でも余る計算だ。

 狭い機内で逃げ場もない。加えてこちらには銃がある。

 橋口は少女の言ったご褒美のことしか頭になかった。


 丁度その時コックピットに内線が入った。

 橋口はそれに答えて中に入るよう伝えて内線を切った。

 数秒後コックピットに入って来たのはパーサーの綾瀬だった。


 綾瀬は鳥越の死体を見て駆け寄るとそばで腰を抜かして泣き出した。

 そう言えば綾瀬と鳥越は付き合っていたのだったか。

 綾瀬は身長が高桑切れ長の目をした美人でありスタイルも申し分ない。

 一度寝たこともあるが中々感度も良く濃密な一時を過ごせた。


 恋人の死体を見て泣き叫ぶ綾瀬を見ているとムラムラと沸き上がってくるモノがあり、その本能にしたがい目の前の綾瀬の制服を剥ぎ口に銃を詰め込み犯した。

 綾瀬は口から涎を垂らし目からは涙を流し歯はガチガチと銃身に当たっていた。

 その様子を見ると己の中の黒い感情がさらに膨れ上がり、頂点に達すると同時に引き金を引いた。

 恋人同士折り重なる死体を一瞥すると橋口は最初の成果に満足して美少女を振り返った。


「お前は生かしておく価値もありませんね」


 そう少女が呟いた言葉が橋口が生きているうちに最後に聞いた言葉となった。


(わだち)さん。あなたの様な人間はやはり珍しいみたいですね」


 カルマは目の前の人の形をした炭を見ながら振り返らずにそういう。


「恐縮です」


 主からの言葉に腰を折り答える車折(くるまざき)(わだち)


「さて、興が削がれたので残りはあなたが始末して良いですよ。私は外を静かにしてきますので。好みの雌がいれば夕食用に持ち帰っても良いですよ」


 そう言ってコックピットの機械部分に手を添えるとそこから先が吹き飛んで消えた。


「では、また後程」


 そう言うとカルマは滑走路へ飛び降りていった。

 周囲からは「動くな」とか「何者だ? 」と言った声が聞こえてくる。もう少しするとコレが断末魔の叫び声に変わるんだなと考えて、主に命じられた狩りをするためコックピットのドアを開けて客室へと向かった。


「夕食は何にしようか」


 バタンとコックピットのドアを閉めながら呟いた言葉は

 夕飯の献立を考えてスーパーへ向かう主婦さながらであった。

前回、急展開と書きつつ全く進んでいませんね…Σ(´□`;)


次こそ…次こそは!<(_ _*)>

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