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痣印-アザイン-  作者: まいくーはん
十一章
42/50

カニバル

題名通りグロ表現あります。

食事中の閲覧はお勧めしません。

男性にとって非常に辛い表現が含まれています。


苦手な方はご注意下さい。

C(カーニ)V(ヴァル)S(スタート)! 」


「ウィーッス! 始まっちゃいまーす! って欲望(デザイア)ちゃん! ヤッちゃっていいんだよね? 」


金髪ホスト風の軽そうな男が連れの女に追随する形で始まりの言葉を述べた後に今さら聞き返す。


「良いわよ~適当にヤッちゃって~」


改めて許可が降りるとホスト風の男は若者と外国人でごった返す竹下通りに向かって歩き出した。


集団で歩く垢抜けない制服姿の男子五人組を見つけると近づいていき話しかける。見るからに体育系の部活動に所属していそうだ。


「やぁ! 今日は暑いね! 修学旅行かな? 面白いもんあった? 」


急に馴れ馴れしく話し掛けてくる見るからに怪しい人物の登場に警戒を強める五人組。

知らない人に声をかけられても着いていくな。と旅のしおりに書いてあるのか、明らかに迷惑そうな様子に苦笑いするホスト風の男。


「あーごめんごめん! 俺、原宿(ここ)道案内(ガイド)やってるんだけど、この格好(かっこ)ビックリするよね? 俺もガラじゃないんだけど親父が観光協会のトップでさ。場所にあった服装しろっつってコレな訳よ。さすがにダサいよなぁ……」


ポリポリと頬を掻きながらおどけて見せると、何人かが「確かに」「今どきないわー」とクスクス笑っている。少し警戒が弛んだ。

そこでピシッと姿勢を正し


「申し遅れました。(わたくし)道案内(ガイド)海藤(かいどう)と言います。あ、ちなみにコレギャグじゃなくて本名だけど笑わないでね? 」


にかっと笑って【原宿観光協会専属ガイド 海藤(かいどう) (しゅん)】と書かれたキラキラ光る写真付きの名刺をリーダーぽい男の子に向かって差し出す。

いかにも男の子が喜びそうな金ぴかの名刺だ。


「どうも……」と一人が受けとると全員に同じものを配る。

キラキラ光る名刺を貰い食い入るように見つめる男子中学生をニコニコと見守る。

程なくしてその内の一人がおずおずと質問をした。


「かいどうさんは……」


(しゅん)で良いよ! 」


ニコッと笑って下の名前で呼んで良いと話す。

このぐらいの年の子は大人には警戒心を抱くが、年の近いお兄さんと仲良くなることがステータスになると信じている。

特に体育会系の部活動に所属しているとその傾向が強い。

こちらから歩み寄ってやればホイホイと食いついてくる。


「じゃぁ、(しゅん)……さん。は原宿(ここ)に住んでるんですか? 」


「そうだよ。だから、この辺の店のやつには大体顔が利く。何か欲しい物あったら値引き交渉するよ? 多分半額くらいにはなるかな」


「おー」「マジで」「すげー」など周りから感嘆の声が漏れる。



「マジすか! 俺、あそこの財布がほしかったんだけど……小遣い足んなくて……」


一人が声をあげると俺も俺もとみんなが口々に希望の商品を挙げる。ちょろすぎるだろうお前ら。


「オーケーオーケーじゃぁ順番に行ってみようか。あ、時間大丈夫? 」


「「大丈夫です! 」」


それではという事で順番に店を回り希望の商品を半額以下で手に入れてやると、先程まで警戒心の塊だった中学生の目は、あっという間に憧れの人を見る眼差しになった。


「「ありがとうございました! 」」


全員目当ての品を手に入れた後に近くの古い喫茶店に入り一息つくと声を揃えて礼を言ってくる五人組(カモネギ)


「良いって良いって。原宿(ここ)を楽しんでもらえたら俺も嬉しいし。俺らもう『友達(ダチ)』だろ? 」


ニコッと笑って握り拳を差し出すと、照れ臭そうに端から順にゴツンと全員拳を返してきた。


「最初声かけられたときはカツアゲされるかと思って……めっちゃビビってました……」


な? と周りに同意を求めつつ笑いながらリーダーの少年が頭を掻く。


「まぁ見た目コレだしね? ひくよなぁ」


あははと再び自虐する。

するとその横にミニスカートにヘソだしのシャツという極めて露出の高い格好をした顔立ちのキレイな女の子が現れ


「隼さんちわー。たまにはうちの店も来てくださいよー」


と言いながら近寄ってくる。


突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)に思春期の荒ぶるパッションをもて余した男子中学生達は露出した肌に遠慮ない視線を浴びせている。

二言三言交わすと「じゃねー」と言って会計を終えて待っていた他の女の子達と合流して店を出る。


目の前の五人組はまだ目で追っている。

おそらく今夜お世話になる為にまぶたの裏に必死で焼き付けているのだろう。その様子に苦笑しつつ


「みんなは彼女とかいないの? 今日は男だけ? 」


そう問いかけるとハッと気付いたように乗り出した身体を元の席に引っ込める。


「いや、いないっす」

「「俺も」」

「俺は居たけど別れました」

「え? まじで? 初耳なんだけど! 」


わいわいガヤガヤと騒ぎ出すがどうも全員独り身らしい。

今どきの中学生はそういうものなのかもしれない。


「そっか。じゃぁさ、せっかく原宿来たんだしさ。『思い出』作っていかない? さっきみたいな女の子どうよ? 」


いまいちピンと来ていない男子中学生達にもう少し直接的な表現で問いかける。


「さっきみたいな女の子と楽しいことヤりたくない? 」


ようやく理解したのか全員がゴクリと喉を鳴らした後、言葉は交わさず顔を見合わせて目だけで意思確認をしている。

数秒後、意見がまとまったのかお互いに頷き合いこちらを向いて「お願いします」と頭を下げた。


その後いくつか電話を掛けて約束を取り付ける。

その間そわそわと落ち着かない様子の子供達は小声で「大丈夫かな……」「隼さんマジパネェ! 」「一回抜いとく? 」等と不安と期待の入り交じった会話を交わしている。


三十分ほど経ってから「お待たせ。じゃぁ行こうか」と声を掛けると、緊張からか裏返った声で「ひゃいっ! 」と返事をして勢いよく立ち上がった。


「おいおい緊張しなくて良いって! みんな初めて? 大丈夫だって大体初めての子達だから。まぁ慣れてる方が良ければそっちも紹介するしさ! 」


試合開始前の選手の様にテーブルの上でガッチリ肩を組み全員の顔を見回してそう告げる。


「女の子達も君らと同年代から二十歳くらいまでで容姿は最低でもさっきの子達位だよ」


ゴクリと再び喉を鳴らし既に期待に一部を膨らませている。

覚悟は決まったようだ。


「よし、じゃぁ気分を落ち着かせるために飴でも嘗めて水飲んで落ち着こう。メインは君らなんだからゆっくりで良いよ。はいコレね」


そう言ってみんなにビニールの包装紙に包まれた小さな飴玉と水を配る。


「気分を落ち着かせるためだから飴は噛まないでコロコロしてな。その内落ち着いてくるから」


言う通りにコロコロと飴玉を嘗めて水を飲んでいる。

徐々に落ち着いてきた様だ。むしろ落ち着きすぎて眠くなってきたみたいだ。

そりゃ欲望(デザイア)ちゃん特性の極上媚薬と睡眠薬のハイブリッド飴なんだから、ただの人間ましてや子供が抗えるはずがない。


そうこうしている間に全員すやすやと寝息をたて始めた。

店の主人の手を借りて裏口に停めた全面スモーク貼りの大型バンに眠っている五人を運び込む。

背負って運ぶ際に背中に硬いものがぶつかる。

いい夢見ろよと内心呟き淡々と今夜のメインディッシュを運んでいく。


五分ほどで運び終わると五人と隼を乗せたバンはゆっくりと動き出した。


***

日は落ち周りは僅かな照明が照らすだけの場所。

耳を澄ませば波の音と遠くに大型船の汽笛の様な低く長い音が響いているのが聞こえる。


周りには民家はなく人がいる場所までは車で三十分ほど走る必要がある。

そんな場所にある大きめの倉庫では、異様な雰囲気の中で今夜のメインイベントが開かれていた。


「はーい! みんなーちゅーもーく」


場にそぐわない甘ったるい声が響くと薄暗い庫内でスポットライトが発言者に当てられる。


「さてと、そろそろメインディッシュが出てくるから、イケそうな子はさっさとイッちゃいな~」


その声を合図にそこかしこで艶っぽい叫声(きょうせい)が辺りに響き渡り、ねっとりとまとわりつく様な湿気と淫靡(いんび)な空気が庫内に充満した後に狂喜が絶頂を迎えた。


その瞬間全ての灯りが消え静寂が広がる。

どこからともなく腹に響く低い音が断続的に聞こえてくる。

場の中央付近がピンク色にぼんやりと光り、汗に濡れた男女の肌を照らす。


どこにそんなものがあったのか、ピンクに照らされた床からせり上がってくる円形に配置された十本の丸太。

その下にはまだ幼さの残る裸の男女十名が後ろ手に両手両足を縛られ内側を向くように、男女男と順にくくりつけられている。死んではいないようだが意識を失っているのか反応はない。


低い獣のうなり声のようなウオォォォと言う声が周りから発せられ、ズンズン響く太鼓のような音と交ざり徐々に大きなうねりへと空気が変化していく。


***


丸太にくくりつけられた十人がその変化を感じ取ったかの様に次々と目を覚ます。


「あれ?……ここどこだっけ……? なんだ……この音……? 」


辺りを見回すと人影のようなものが暗闇の中で(うごめ)いている気配がする。ボーッとする頭でそんなことを考えながら目の前をみると、数メートル先で昼間に喫茶店で見掛けたあのキレイな少女が何も身に付けずに丸太に縛られている姿が目に飛び込んできた。

身体が正直に反応する。


その様子を目の前の少女も虚ろな目で見ている。

見られていることに気付き慌てて前屈みになろうとするが、身体が動かない。自分の状態も目の前の少女とそして周りの少年少女と同じだと気付くのにそう時間はかからなかった。


みんな同じならいいか。

頭に靄がかかったように正常な思考が働いていない。


「さ、今日は特別に活きが良いのが沢山だよ! (オス)はすぐ分かるかな? (メス)は……まぁこんなもんか」


「では、欲望(デザイア)様、まずはどれになさいますか? 」


甘ったるい声の主が誰かに伺いを立てている。

答えるように別の声が呟くと何人かの裸の男女が俺の周りに集まってくる。

その姿に反応して更に大きくなった一部を目の前の女性にガシリと握られ欲望を大量に吐き出す。

それでもなお硬さを増す部分に金属質の物があてがわれたと思った刹那、その一部分は俺の胴体から離れて目の前の美女の手の上でビクンビクンと脈動している。


痛みはなかった。その代わりに頭が真っ白になるほどの快感が全身を駆け巡り一瞬気を失いそうになる。しかしすぐに次の快感が押し寄せてきて強制的に覚醒させられる。


意識を失えない中で切り離された器官の行方を目で追うと、

一際妖艶な雰囲気をまとっている女の元へ運ばれていった。

その女は(おもむろ)に手に取ると口に運んでいき一口で頬張るともぐもぐと咀嚼(そしゃく)嚥下(えんげ)した。

その瞬間、この世のものとは思えない快楽が全身を貫き俺は逝ったのだ。


***

(これ)(おい)(しー)


一通り食べ終わると欲望(デザイア)の口から感想が漏れる。


欲望(デザイア)ちゃんに気に入ってもらえて良かったよ。やっぱ活きが良い方がいいかなと思ってさ。俺、役に立ったかな? 」


主人の口からでた感想に喜びを露にしてはしゃぐ(しゅん)欲望(デザイア)は耳元で告げる。


(あとで)(たべて)(あげる)


最大級の賛辞に後の褒美を想像して身体がビクンと反応する。

だが、主人の許しなしに達することは出来ず表情が歪む。

その表情を見て欲望(デザイア)は一層気分を良くして、円の周りに集まった物達に残りの供物を与える許可をだし、自分は暗闇に消えていった。


残された(しゅん)欲望(デザイア)の元へ行く前に最高のコンディションを保つため、柱のひとつに括られた喫茶店で声をかけてきた少女を手に取り闇に消えていった。


残されたのは既に食人鬼(グール)と化した元人間達とその糧となる元は人の形をしたモノだった。

後味の悪い終わりかたになってしまいました。

直接の性描写は避けましたが連想させるような表現に問題があればご指摘ください。

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