記憶の欠片
腐った肉が焦げた様な臭い感じて不快に目が覚める。
目が覚めたものの目の前は暗く、意識は朦朧として、
体が怠いうえに息が苦しい。息を吸おうとしたところ
ガリッ!
口の中に何かが入っている。
吐き出したいのにそこまで口を動かせない。
開いた口から溢れた涎が頬を伝う。
もう一度息を吸おうとして激しく咳き込む。
ビキッ!
激しい激痛が全身を襲う。
叫びたいのに声がでない。
また咳き込む。
激痛が走る。
そして意識を失った。
***
――暖かい
この暖かさはなんだろう?
お母さんに抱かれている様な安心感がある。
このままずっとこの心地よさに身を委ねていたい。
でも私の意識の奥底から「早く目覚めろ! 」という声が聞こえる。
あなたは誰・・?
なぜこんなに心地いいのに目覚めなければいけないの?
私はこんな温もりを感じたのは「あの時」以来なのに・・
――あの時?
ハッと目が覚めて急激に現実感が増す。
ガバッと跳ね起きて辺りを見回す。
いつもの自分の家だ。
今、何か大事なことを見ていた気がするが、それがなんだったか思い出せない。
ここ最近一人で寝ることが増えているからなのか、時々現実と区別がつかない様な夢をよく見る。
「疲れてる……のかな? 」
そんな実感はないのだが、同僚からも最近「大丈夫? 」と聞かれることが増えた気がする。
今度少し休みをもらって二人でゆっくり温泉にでも行こうか。
そんなことを考えていたら自然と顔がにやけてきた。
隣の枕を見つめて誰にともなく呟く。
「お休みなさい。守さん」




