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七界神樹の用心棒  作者: 林檎亭
第1章  大樹の導く世界
12/12

11:チンピラ3人組

間がえらく開いているので繋ぎで。

なので短めです。

すいません。

 最初はダインとヴィトの勝負だったはずなのだが、他の客も俺も俺もと騒ぎ出し、いまや小規模な大会みたいになっていた。

 お蔭で酒が面白いように売れていく。


「やぁハジメくん。早速お手柄だね」


 カウンター横で腕相撲大会を遠巻きに眺めていると、バドがほくほくした顔で近寄ってきた。


「そういうつもりはなかったんだがな。争いを諌めるだけのつもりが、結果オーライか」


「ケッカオーライ?」


「過程はどうあれ結果が良ければ全て良しという意味だ」


「なるほど。それなら確かにケッカオーライだね」


 最初に手を上げられたエムルも既にその事は気にしていないようで、給仕のために店内を走り回っている。

 喧嘩を早々に仲裁し、また腕相撲というストレス発散方法を提供したことで店内にはもう争いが起きそうな気配はない。

 今日はこんなところか。

 そう思って息を吐いたその時、店の扉が荒々しく開かれた。

 突然の大きな物音で腕相撲で盛り上がっていた客達が黙り込む。

 蹴破るようにして扉を開けて入ってきたのは、チンピラ3人組だった。

 ダインやヴィトのようにゴツくておっかないつらをしつつも親しみの持てる雰囲気などは微塵みじんもない、どぶの淀みのように気分の悪くなるような目付きと嫌らしい笑みを口に貼り付けた男達だった。


「よーお、なんだ今日はやけに景気がいいじゃねぇか」


 3人組の中心に立つ男が誰と言うでもなく、店内に向かって声を上げた。

 ダイン達は敵意を込めた目で、黙ったまま乱入者を睨みつけている。


「これなら今日はたーんまりと金を貰っていけそうだな。なぁバド」


 チンピラAは無遠慮な足取りで真っ直ぐにカウンターまでやってきた。

 後ろの2人も続いて歩いてくる。


「あ」


 後ろの2人、どこかで見た顔だと思ったら昼間リーアを襲っていた奴じゃないか。

 デカイのは石をぶつけた鼻が赤く、細いのは首を傷めたのか変な方向へ首を傾けている。


「バド、今日は払ってもらうぜぇ」


「断る」


 チンピラの睨みをものともせずにバドはハッキリと答えた。

 ふむ、詳しい事情は分からないがやはりこれはまともな客じゃあないみたいだな。

 となれば、用心棒おれの仕事か。


「おい」


「あぁ? 誰だテメェ」


「俺はここの用心棒だ。お前ら、客じゃないなら出て行け」


「用心棒だと? おい、バドどういうことだ」


「聞いてのとおりだ。彼は今日から新しく雇った用心棒だ」


「テメェ、それがどういうことか分かってんのかぁ?」


「どういうことも何も、元々貴様らに守ってもらうものなどないし、払う金もない」


「この野郎!」


 バドの挑発とも取れる発言でチンピラは沸点を簡単に超えたようで、躊躇なく殴りかかった。


「よっ」


 そのままバドが殴られては用心棒失格だ。

 俺は殴りかかった手が突き出される前に掴み、足を払って床に転がした。

 床に落ちる瞬間に引っ張りあげてやれば受け身を取れなくても痛くはないが、もちろんそんな優しさを見せる理由はない。

 遠慮無く背中から落とした。


「げふっ」


 背中を強かに打ち付けたチンピラは呼吸が出来なくなったのか、陸に上がった魚のように口をパウパクと動かした。


「せっ」


 そして止めに無防備な鳩尾へと拳を叩き込んだ。

 チンピラはビクンと痙攣したかと思ったら、白目をむいて動かなくなった。

 急な展開についてこれなかったチンピラその他2人は結構な間が空いてから、ようやく俺に襲いかかってきた。


「あにきぃ!」


「てめっ、何しやがる」


 同時に殴りかかってきたので、細い方の腕をこちらから引っ張ってデカイ奴の真正面に立たせた。


「え?」「あ」


 デカイ方の拳が見事に細い方の顔面に直撃し、その1発で細い方が吹っ飛んだ。

 きっとまた首を傷めたことだろう。いや、逆に治ったかもな。

 そしてデカイ方が動揺した隙に懐へと潜り込み、顎先を掠めるように裏拳を放った。


「がっ」


 これまた綺麗に首が回り、脳をシェイクされたデカイのが床へと沈んだ。

「まぁこんなものか」

 上手く不意をつけた為に無傷で3人を無力化出来た。

 俺はまだ意識のある細い方へと歩み寄った。


「ひぃ」


 笑顔で話しかけようとすると、失礼なことに悲鳴を上げられてしまった。


「そこの2人は持って帰れよ。な?」


 とりあえずそう告げると、細いのは痛めているはずの首を大きく上下に動かし、四苦八苦しながら自分よりデカイ男2人を引きずって店外へと逃げていった。

 最後に情けない声で「覚えてろよ」と捨て台詞を吐いていったのには、そのテンプレっぷりにちょっと感動してしまった。

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