7話+お泊り+
シストラさんとノーチェさんの手当も終わり、
少しギスギスとした雰囲気で、夕御飯が始まった。
私は元々食事中は、食べることに集中してしまうので
あまり喋らないタイプだ。ユリスさんイヴさんノーチェさんも
同じタイプで、基本静かに食べるのだが、シストラさんは
これまたマイペースなお方なので、食べながらいろんなことを喋る。
「ねぇイヴ、なんで今日俺は幸せだと思う?」
「そうだな……ノーチェと仲良く喧嘩したから?」
「ブップー!!正解は、女の子が来てくれるからでしたー!!」
「そっか、良かったねシス」
シスさんは「うん!!」と大きく返事をすると、しまっていた耳と尻尾を出し
嬉しそうに動かした。
イヴさんは、自分のハンバーグを半分に切り、シストラさんの
お皿の上に乗せた。
「じゃあ次はユリスにクイズね!なんで今日の晩御飯は、
こんなにも美味しいって感じるのでしょうか?」
「ノーチェと取っ組み合いの喧嘩して、お腹空かせたから」
「ブップーハズレー!!正解は、可愛い女の子と一緒に食べるからでしたー!!」
「へぇ……そりゃあ良かったな」
ユリスさんは興味なさげに答えると、
ハンバーグの3分の1切って、シストラさんのお皿に
大きな方を乗せる。
「次はノーチェにクイズです。俺は今夜はハッピーになると思います。
さてさて何故でしょうか!!」
「シス、お前そんなに肉ばっか食うとデブ犬になるぞ」
「ブップー残念でしたー。正解は、女の子が泊まってくれるからです!!」
「あぁなるほどな、そうか、お前の夜食が増えるからか」
ノーチェさんはプッと嘲笑すると、カレー皿の中にあった
人参をキレイに全部すくい取り、シストラさんの中に入れた。
「最後はルシェちゃんにクイズね!俺は今、こんなにも幸せです!!
さて、何ででしょうか?」
「えー?そうですね……皆さんからおかずを沢山もらったからですか?」
「ブップー違うよー。正解は、大好きな君とお喋りしてるからだよ!!」
「アハハ……喜んでいただけて光栄です」
シストラさんは、満面の笑みで耳をピクピク動かし、尻尾を大きく振る。
ああああ可愛いッ!!そんな顔してると、私がオオカミになるぞッ!!
めちゃくちゃモフモフしたい!!耳触りたい!!尻尾引っ張りたい!!
私は心の中を落ち着ける為、咳払いをして邪念を消したあと、
サラダに入っていたトマトを二つ、彼のサラダボールに入れた。
「わぁい!!見て、俺のご飯豪華だよ!!」
「そうだね、よかったねシス」
「うん!!今日は幸せな日だね!!」
シストラさんは幸せそうに、イヴさんからもらったハンバーグを食べた。
尻尾を左右に大きく振っているため、時折隣にいるユリスさんに当たり、
思いっきり引っ張られて、痛さのあまり声を上げることがあった。
シストラさんは犬みたいで可愛いな……動物好きな私には堪らない……。
美味しそうにハンバーグを口に入れるシストラさんを見て、
私はそう思った。
夕飯を終えて、私はリビングのソファーに座らせてもらい
持ってきた本を読んでいると、イヴさんがトントンッと肩を叩いた。
「今日寝る部屋だけど、シスが俺と一緒に寝るから、シスの部屋を使ってくれ」
「えっ!?シストラさんに悪いですよ。私は別に、毛布と枕があれば
ここも床とかでも全然問題ないですし……」
「シスのことは大丈夫だから。部屋に案内するからついて来て」
読んでいた本を閉じ、私は先に階段を上り始める
イヴさんの後に続いていった。
赤い絨毯が敷かれた広い廊下を歩く。
ステンドグラスと普通の上げ下げ窓が交互に設置されており、
カラフルな景色と普通の景色が交互に見えた。
「シスの部屋はここね。突き当たりを右に曲がると、トイレと洗面所があるから」
「ご親切にありがとうございます」
可愛い小鳥や子鹿、うさぎやリスなどの小動物が描かれた
メルヘンチックな水色の扉を開けると、そこはまるで子供部屋だった。
壁は青い空と白い雲の壁紙が貼られており、床にはこれまた扉と同じような
小動物たちの絵柄の暖かな絨毯が敷かれていた。
部屋の中には、たくさんの動物のぬいぐるみや汽車のおもちゃや
マトリョーシカなどがあり、窓には動物のステンドグラスシールが貼られていた。
薄いレースのカーテンを開けると、広くて大きなアルコーヴベッドがあり、
ベッドのところにも大量のクッションとぬいぐるみが数個置いてあった。
「可愛い部屋ですね、私こういう部屋大好きです」
「そう、それならよかった。シスは寂しがり屋だし、君のことが大好きだから
きっと訪ねればいつでも入れてくれると思うよ」
「本当ですか?シストラさんは優しい人ですね」
「うん、そうだね。シスは誰よりもとっても優しい、いい子なんだ。
だから仲良くやってくれ、あの子を悲しませたくないんだ」
イヴさんは「何かあったら下に降りてきて」と言って、私の頭を撫でると
部屋を出て行ってしまった。
私はしばらく、部屋の中をウロウロと徘徊し、見物することにした。