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1話+amnesia+

ある朝、目が覚めると私は知らない部屋に居た。


……いや、きっとここは知らない部屋ではない。

何故だかとても住み慣れていて、快適に感じるので

きっとここは、私の部屋に違いない……はずなのだが…………。


「何……?何で……?どうして?どうしよう、何も分からない」


きっとここは私の部屋で、私は私なのだろう。

だけど不思議な事に、私は私のことを含めて、何一つ分からない。

自分の名前も、身長も体重も年齢も、職業から好きな食べ物まで

何一つ思い出せない。


「うわぁぁぁ……ど、どうしよう。これってアレだ!!記憶喪失ってやつだ!!」


私は一人で軽くパニックになりながら、ベッドを降り部屋の中をウロウロとする。

ベッドの近くにあるデジタル式の目覚まし時計に目をやると、

4月26日、AM8:32分と表示されていた。よし、日付と時間は分かったぞ。

せめて名前くらいは分かりたい。何か身分証明書のようなものはないかと

近くにあったタンスの中を物色する。


すると封筒の中から、証明写真付きの身分証明書のようなものが出てきた。


「ルシェ……?あぁ……へぇ……私、ルシェって名前なんだ」


自然と自分が「ルシェ」という名を受け入れるので、私はルシェという

名前で間違いないのだろう。身分証明証には名前の他に、住所と性別と

年齢が載っており、私は今の住所と年齢を知ることができた。


「18歳か……意外と私、若いんだね。それなのに一人暮らしなのかな?」


部屋の中を見る限り、私はワンルームマンションのようなところで

一人暮らしをしているようだった。冷蔵庫やクローゼットの中を見る限り、

私の他に誰かと一緒に暮らしている形跡はない。


「他に、他に何かないのかな。もっと過去の私が分かるもの」


携帯端末は買い換えたばかりなのか、メールフォルダーや電話帳は何もないし、

手紙か何かないかと思って、デスクの上を物色するが、やはりここにも何もない。


本棚に目をやると小説や童話が綺麗に並べられている中で、

一冊の本に目が留まった。

赤い背表紙に、diaryと書かれている少し分厚い日記帳だ。


「……日記。そうだ日記!!三日坊主で終わってなければ、何か分かるはず」


もしかしたら記憶が戻るかも、などと考えながら私は期待を込めて

表紙を開き、ページを一枚捲った。



 7,318年4月7日、晴れ

今日はとてもいい天気だった。あまりにも天気がいいので、

隣国のメーベル国へと買い物に出かけた。

流石、有名家具のブランドが多い国だけあって、お洒落な家具が

沢山あって、見ているだけで幸せだ。

手ぶらで帰るのも寂しいので、可愛いチェストを購入した。

明日には業者の人が届けに来てくれる。やったね、嬉しい。


 7,318年4月8日、雨

今日は昨日買ったチェストが届いた。

組み立てようと思ったが、案外難しく、結局業者の人にお願いした。

最近流行りのシャーベットカラーのカラフルなチェストだ。

あまり色の多くない部屋だが、このチェストがあると賑やかに感じる。

天気が悪かったので、今日は何もせず、借りていた本を読むことにした。

もっと沢山いろんな本が読みたい。コンディトラィ国には大きな図書館がある。

別の国出身の私だけど、どうにか本を借りる事はできないかな?


 7,318年4月9日、晴れのち曇り

今日は暇だから水族館に出かけてみた。

南国の魚たちはとても彩取り鮮やかで、すごく綺麗だった。

イルカショーでは、なんとイルカにキスをしてもらうことができた。

イルカめちゃくちゃ可愛かった、人魚になりたいと切実に思う。

あと、ペンギンショーでもペンギンと握手をさせてもらえた。

ペンギン可愛すぎて、涎が出そうになった。

もう少し淑やかな、上品な女になりたいものだ。



ここまで普通の日記で、数日前の一日の出来事が書いてあった。

読んでいる限り、特にコレといって変わった女では無いようだった。

次のページを捲ると、何も書かれておらず、その次のページも白紙だった。


「あぁ……嘘でしょ、まさかの三日坊主なの?」


ハァとため息をつき、パラパラと捲っていると、ページが飛んで

真ん中くらいに何か書いてあった。



 7,316年4月2日、晴れ

今日は天気がいいので、近くの公園へ出かけた。

前まで満開でピンクの花をつけていたセレッソの木は

少し花が散ってしまい、所々葉をつけていた。

アイスを買って食べていると、ゼペットさんという

不思議な方に出会った。彼は隣国のハルモニア国で

薬屋を営んでいる魔法使いらしい。

何かあったら頼ってくれと言ってくれたので

困ったときは彼の元を訪ねようと思う。



何故か今から2年前の出来事が、ページの真ん中に書かれていた。

他に何かないかと思い、最後のページまで捲ってみるが何も書いてなかった。

記憶を失う前の私は、突然ど真ん中に日記を付けるほど

変わり者の女だったのだろうか……。


「ゼペットさんか……訪ねてみる価値はあるかもしれない」


私は再びあの真ん中のページを開き、端の方に貼られていた

小さな地図を見て呟いた。



よしっ、決めたら行動あるのみだ。

何で記憶喪失になったのか分からないけど、自分の記憶は自分で

取り戻しに行こうッ!!


私はそう決心して、日記帳を閉じた。

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