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9話+早朝+

朝日が閉め切ったカーテンの隙間から部屋に差し込んで、

部屋の中をほのかに明るくする。どうやら外は清々しい晴天のようで、

小鳥達の可愛らしいさえずりや、目覚まし時計の代わりになりそうな

ニワトリの元気な鳴き声が聞こえてきた。


私は意識は起きているが、なかなか身体が起きてくれなくて、

瞼が重く目が開けられない。寝返りを打ってみるが、布団の中の

私の体温と部屋の空気が布団の中で絶妙なハーモニーを奏で、

心地よい温度がまた眠気を誘う。


眠気と戦っていると、部屋の扉が開く音がして、

誰かが中に入ってきた。瞼が重くては目が開かないから、

誰が何の目的か分からないけど、入ってきた主は、

チェストの中を探って何かを捜しているようだった。


何をしているのか気になった私は、布団から手を出して、

眠い目をこすり、目を開ける。そして物音のするチェストの方を見た。


「あっ!いやぁ~ん、ルシェちゃんのえっちぃ~」


目を開けて今日一日の始めに見たのは、下着姿で可愛い耳と尻尾を

生やしているシストラさんだった。


私はあまりにも唐突で予想外の出来事だったのと、

寝起きということもあって、咄嗟に対応が出来ず、

10秒くらい遅れて脳から体に「見るな」という命令が届いた。

命令を受理して、私は寝返りを打って反対方向の壁を見る。

……なっなんでパンツとシャツだけでいるんでしょうね。

せめて男性だから上はシャツでも良いけれど、

下はズボン履いてきてくださいよ……。


壁を見つめて数分後、いきなり部屋のカーテンが勢いよく開けられた。

今まで隙間からしか入り込んでこなかった朝の光は、

窓全部から部屋に入り込んで、部屋の中を明るく照らした。


私は眩しさのあまり、目を閉じて布団に潜り込むと、

ドスンッと何か重量感のあるものが私の上に乗りかかる。

モゾモゾと布団から顔を出すと、着替え終えたシストラさんが

私の上に馬乗りになっていた。


「ルシェちゃーん、朝ですよー。早く起きてくださーい!!」


シストラさんはその体勢のまま、ゆさゆさと揺れる。

まるで小さな子供が、なかなか起きない父親の上に乗って、

健気に起こしてくれているみたいだ。

子供はあの時期が一番可愛いと思う。


「ルシェちゃーん、早く起きて起きてー!!」


「起きます、起きますから、ちょっと退いてもらえませんか?

 重くて起き上がれないんです……」


私が言うとシストラさんは「そっか、ごめんねー」と謝り、

私の上から降りた。シストラさんが降りると、金縛りが解けたみたいに

体が軽く感じた。シストラさん、細身だけど、意外と体重あるんだなぁ……。


私は重い体を起こして、その場で伸びをする。

ふぅと一息つくと、横に避けたシストラさんが抱きついてきた。


「ちょっちょっとシストラさん?何を為さっておられるのですかな?」


「ルシェちゃんいい匂いするね。俺ルシェちゃん大好きだよ~」


首元の匂いをスンスンと嗅ぎ、頬ずりしながらシストラさんは言う。

私は朝っぱらから慣れないことをされ、恥ずかしくなり、

ご機嫌に振る尻尾を掴んで、あまり力を入れずに軽く引っ張った。


「ひゃぁぁッ、いっ、痛いなぁ!!尻尾は引っ張っちゃダメー!!」


シストラさんは自分の尻尾を大事そうに抱きしめ撫でる。

耳が少し悲しそうにシュンと垂れている姿は、とても愛らしい。


「そうだ。ルシェちゃんの服だけど、洗濯しちゃって無いから、

 今日だけ俺のお古で我慢してね」


そう言うとシストラさんは、ベッドから下りてクローゼットを開け、

奥の方に仕舞ってあった大きなかごを引っ張り出してきた。


「あんまりお洒落な服はないけど、この中にあるやつだったら

 なんでも着ていいからね!!じゃあ俺下でご飯食べてくるから、

 ルシェちゃんも早く降りてきなよ!!」


シストラさんはご機嫌そうに尻尾を振って、部屋から出ていった。


私はベッドから下りて、シストラさんが出してくれたお古の服を

一枚一枚手にとって、広げて見る。

シストラさんの服は、フェアアイル柄やダマスク柄の物が多く、

洋風の牧場チックな感じがする服が多い。


私は適当に服を選んで、着替える。

シストラさんの昔の服といっても、男性用なので私には少し大きい。

服の袖やズボンの裾などの余った所は捲くり、なんとか私の体に合わせ、

朝食をとるために、下へと向かった。

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