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転生ネタ書いてみた

作者: jody

 粗筋? に書いた通りこうしてネタを公開するのは初めてデス。無謀にもやっちまいました。


 もし見てくれる方が居たら、是非生暖かく見てやって下さい。

 目の前に迫る大型のトラック。遅くなったように錯覚する時間感覚。脳裏を過ぎる今までの記憶。

 慌てた様な顔がコマ送りのように接近してくるトラックのフロントガラス越しに見える。思い出すのはこの世に遺すだろう家族のこと。友人のこと。同僚のこと――。

 ――あいつは、きっと泣くだろうな。あの人は、多分怒るかな。あの子は……どうだろう。わからない。

 ――親にも恩返しができなかった。というより、思い返せば負担しかかけてないような。

 様々な感情が、感覚が、思考が、想念が。心の中を駆け巡る。もちろん、自責も後悔も。――けれど。

「でも……うん、あの子は大丈夫……かな、これなら――」

 コマ送りになる視界の中。その片隅に映した存在の無事を確認できて。一安心しそう呟くと同時に、強い衝撃が意識を根元から刈り取った――。


//////


 ふ、と目が覚める。辺りは真っ白。むしろ白い光と自分以外何も無いとさえ思えるような世界の中、俺はふかふかでいかにも高級そうなベッドの上で横になっていた状態だったようだ。と此処まで思考したところでフ、と浮かんだ僅かなノイズ。

(――? 目が覚める? あの状況から? 俺は確か大きなトラックに撥ねられた筈。確かに衝突した瞬間までの記憶はある。でも――)

「でも、俺は此処で目が覚めた。そしてこうして生きている。……よな、これは?」

 呟きながら自分の手を見て、腕を見て、身体を見下ろし。一度立ち上がって一回転。何故か俺の寝ていたベッドの縁を蹴って後方宙返り、着地と同時に肘、裏拳、回し蹴り――

「ひゃぁっ!?」

 の足先を何かが掠め、同時に驚いたような声がした。

「とと、すまない。ちょっと距離感覚ミスったみたいだ」

 もし相手が怪我をしていたら怖いので一度謝罪を入れつつ足を戻して。

「ぁー……いえ、こちらも転移先をよく確認しないで出てきたものですから、お互い様ですよ」

「それでもこちらが先に、かつ変に暴れたのが――って、転移?」

 その場所にいたらしい、柔和な表情を浮かべる妙齢の美しい容貌をした女性らしき人物と言葉を交わし、その人の発した言霊に少しばかり首を傾げた。

「え……と、転移ってアレですか? いろんな魔法とか超能力とかにある、所謂“テレポート”とか言う?」

 そんな馬鹿な。内心ではそう考えながら訊ねた俺の言葉に、

「はい、貴方の世界では存在しなかったはずの、ソレです」

「はぁ、そうで……って、ハァッ!?」

 その推定美女は当たり前のような口調で、俺の中の常識を覆すような一言を放ち。それに素っ頓狂な声を出してしまった俺の反応は、多分一般論として正しいものに分類されるだろう。というか、分類してもらえないなら、俺が常識を知らないことになっちまう。


//////


「はぁ。天上評議会……ですか」

 いきなりであまりな邂逅から数分。俺はその美女――確定。アンジェ・カーマイン、という名前らしい――から受けた説明を理解するために噛み砕こうとしていた。というか、噛み砕くために口が勝手に言葉を紡いでいた。

「はい。数多の世界の“可能性”の中で、その可能性同士が互いに余計な干渉をしてしまうことを防ぐための組織、ですね。この組織は貴方の存在した世界での認識で言うならば――そう、『神様』のようなもの、だと認識していただければ」

「ふぅむ、『神』ねぇ」

 はい、と微笑む女性に不覚にもときめきかけた感情を一度押しつぶし、そのまま説明を聞き続ける。彼女の説明によると、どうやら元はひとつの世界でも生まれた瞬間からすさまじい量の『可能性』が存在し、その数だけ世界というものが増えていくらしい。

 で、その世界の数が多すぎて放って置くと互いの世界に干渉し合い、最悪ならばその一部の――とはいえ厖大な数の――世界が壊れていくらしく、それをある程度コントロールでき得る部分で管理するのがその『天上評議会』なのだという。

 そもそもなぜそういった世界を管理する必要があるのかと言うと、ひとつの世界が崩壊してしまうと魂の総量が急に大幅に崩れてしまい周りの世界に大きな影響が出るだけでなく、崩壊してしまった世界の情報の断片を受け取っていたほかの世界の存在にまで悪影響が出てしまう可能性が高いから。その“世界の情報の断片”の中には俺のいた世界にもあった様々な“物語”も含まれていて、その物語の世界の元となった情報を発信していた世界が崩壊した場合良くて、と言うか断片との関わりが浅い場合は作者の創作意欲の消失や保存媒体の破損による作品の更新停止、関わり方がもしも深かった場合なら最悪、運命の中では“その時点では死ぬはずの無い”作者が死に至ったりすることもあるらしい。

 らしい、というのはあまりにスケールがでかすぎて俺の頭脳が理解できていない、というよりその実理解しようとする気が無いというだけなのだが。そもそもそこまで深く考えなくてもいいといわれたし、それできっといいのだろう。

 で、その組織に属する存在には階級が存在して、一般的には俺たちの世界で言うところの『天使階級』で呼ばれるのだとか。“エンジェル”とか“ソロネ”とか“ドミニオン”とか。

 ちなみに天使の階級をそのまま使ってはいるが、彼女らは神に仕えるではなく数多の平行世界の均衡を保つ使命を帯びているそうで、その世界群に介入せざるを得なくなった際の介入手段として天使という“概念を借りているだけ”なんだとか。故にこれは、あるいは“神様のお仕事”と言えなくも無いかもしれないな、と説明を聞きながら思う。

 まぁ、それを聞いて。少なくとも、某ゲームの自分たちの神以外の信仰を貶め、否定し、挙句自分たちの仕える神が指令を長い間出さなかった不安が故に偽りの神を作り出してしまう、などという暴走をしてしまったある意味では被害者だとも言えそうな天使たちのことが過ぎったことは言わないでおこう。

「んー、ならそれでいいです。難しいこと考えるのは苦手なんで。」

 一回りの説明を聞き終わって一区切り、呼吸をひとつ。一度簡単に状況を脳内整理。そのまま

「――で、その俺たちが言うところの『カミサマ』がいったいどうして俺の前に? そもそも、俺に対して偽る意味も意義も感じないのでその話も俺の記憶も偽りがないと仮定して、では何で俺はその『カミサマ』のいる空間(バショ)にいるんです?」

 話を聞いてからずっと思考の片隅に引っかかっている疑問を口にした。

「ええ、その疑問ももっともですね。説明させていただきます」

 彼女のその言葉と同時に、彼女の周りにその名と同じ洋紅色の粒子が舞い踊る。そして、光が晴れたときに彼女の手には数枚のフリップが存在していた。

「あ……と、貴方には私が行うことを事前に言うべきでしたね、申し訳ない」

 フリップを見ていた俺の顔にいくらかの怪訝が出てしまっていたのか、彼女は苦笑しながら

「この光は自分が所持しているものを、自分もしくはその座標及びアクセスパスを知っている者のみが管理できる異相空間に隔離・安置する能力ですね。この力は私たちに使用許可が下りている力、もとい能力です。今回は一応の事情説明のためにそれの一部を使わせていただきました」

 こういうものが無いと物事が上手く説明できなくて、と彼女が苦笑。それにつられて、俺の顔にも苦笑がうつる。

「まぁ、説明してもらえるならそれでいいですよ。むしろ説明があるのは御の字なくらいなんで」

「そういってくれると助かります。では」

 彼女の手にもたれたフリップの一枚目をめくる。


//////


「なるほど、それで俺が選ばれた……と」

「はい。身勝手とは思いますが」

 彼女の説明を聞き終えてポツリ。こんがらがりそうな思考を無理矢理整理して纏める。

 曰く、俺は確かに一度死んだらしい。それも“管理側のミス”というテンプレではなく、純然たる“制限時間―うんめい―”によって。

 また、彼女たち評議会には、人間世界における時間で大体二世紀ごとに各並行世界の調査をし、新しく生まれた世界に対し調査を行うためまず“その世界とのパスを作る”ことを行うと言う。

 そしてそのためには天使たちの中から送るのがもっとも手っ取り早いが、少し前――と言っても人間界時間ではなく天界時間のため、俺たち人間にとってはかなり前のことらしい――評議会の中でかなり大きな、革命ともいえるレベルの組織改変があり新しい並行世界へのコンタクトに回せるだけの人員(?) が足りていないのだそうだ。

 しかし、その確認及び新たに発生が確認された世界との繋がり作りを疎かにすると、それ以外の多くの世界が干渉しあって消滅する危険があるため、その対応をしないわけにはいかない。そのため現評議委員長は、新たな並行世界の確認を行う際数名の“確認作業を行う直前にちょうど命が終わる人間”を数多の世界から魂の位が高い人間を選別し、この空間において天使を遣いにやってこのシステムを説明しているらしい。

 らしい、と言うのもこの空間に俺と彼女以外の存在が無いからなのだが。

「と、今の状況の説明と確認は以上です。何か聞きたいことは?」

 そう言いながら最後のフリップを倒す彼女。まぁ、一応わかったようなわからないような。

「んー、説明は一応一通り解ったつもり……ですが、正直あまり実感がわきません」

 これは現時点での率直な感想。寧ろかなりオブラートに巻いているくらい。

「まあ普通ならそうだとは思いますが……」

 無理にとは言わないが解ってほしい。そういう彼女の目に嘘偽や冗句の意図は見え無い。

「んー……かなり怪しくてもよければ。で、そこまで言うからには既に俺がそれをすることに拒否権は無い。、そう考えても?」

「――はい。まことに勝手ながら、貴方への説明がてら調査をさせていただきました。それと、深層意識への確認も」

 さっきまでの柔和な印象から一転。彼女の瞳には暖かさの中に隠されることない鋭さが宿る。そこにもはや先ほどまでの柔らかい印象はない。

 それは純然たる決定事項。深層において既に俺自身が下した決断の明瞭化。そうであると認めたからこそ、以降交わされる質問は確認。そこに拒否の入りこむ余地は無く。

「いくつか聞きたいことがありますが――」


//////


「――これで確認と手続きは終了ですが……本当にこれで決定しても?」

 締結した事項を纏めた物を片手に訊ねる彼女。それはそこの一番上に書かれたことに対するかと当たりを付けて。

「はい。そもそも俺は一度死んでますから。そちらのミスではなく、純然たる決定の元で」

 そこに書かれていたのは“前世記憶の完全不明瞭化”。新たな生において、“前世”を明確に思い出せないという事。

 性別も、年齢も、名前も、死因も思い出せない。無論小説やアニメ等創作物の内容など、人生レベルでの影響があったもので無い限り記憶を保持することは以ての外。思い出せるのは言語や常識、考え方の大まかな――極微弱な、無視しようと思えば無視できる自覚済みの思考誘導のような――指標。後は漠然と“前世があった”と思える程度のみ。傍から見たら妄想のようなものにしか見えないレベル。

「なら、もともと無かったロスタイム、そこに完全な“俺”と言う物はあるだけ無粋でしょう?」

「……そこまで言うなら、いえ言えるならもはや何も。――貴方はお強いのですね」

 感心し切った顔を浮かべる彼女に苦笑交じりでやんわりと訂正。俺は言われるほど強くない、と。

「貴方がそう言うならそういうことにしておきましょう。――では」

 深く息をつき彼女の表情が引き締まる。

「最終確認です。“○○ ○○”、貴方はこの書にしたためたとおりの内容の通り、現在・前世の記憶の不明瞭化を望むことに異議はありませんね?」

「――はい。俺は“自分の意思で”それを強く希望します」

 重なる視線。交錯する意思。紡ぎ合う言葉。それらと明確な決断の元、数多の契約内容は読み上げられ、基づいた強固な約定は締結される。

「――――それでは此処に、評議の一画たる転生の盟を為し契約と成す。契約者“○○ ○○”は第XX並行世界において新たな生と光の祝福を受けることを誓う! 契約責任代行者、アンジェ・カーマインの名の下に!」

 強く鋭い声と共に、足元の陣が強く発光し俺を包む。これが消えたとき、俺と言う存在も消えるのだろう。いや、俺が俺自身を“俺”と認識できなくなり、“新しく生まれる誰か”が“俺”に成るだけなのか。正直解らないし、解らなくてもいいことだ、と思う。

 不思議と怖くは無かった。或いはその感覚が麻痺しているだけなのか。まぁ今更どちらかはあえて言うでも無いだろう。

「――○○さん、もし“前世”に、その中の誰かに伝えたいことがあれば……」

 一歩近づいて俺に話しかけてくれる彼女。先ほどまでの威厳に満ちた力強さは既に無く、与える印象は始めのもの。最後の最後にこの空気は反則だ、と思う。

「そうですね。では両親と同僚達、それと友人たちに“急にゴメン”と伝えてください。それと、“今までありがとう”とも。それから――」

 幸せだったことに死んでから気付いた俺を笑ってやってくれと。頼むべき伝言を全て伝え終えると同時に増した輝きと共に、俺の意識も薄れていった――――。

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