一片
「また、ここへ戻ってこれるのでしょうか」
白い翼を生やした天使は言う。
「そう言っても、戻って来る人は一人もいなかったわ」
その地を管理する側の天使は、冷たく言い放つ。
諦めからか、失望からか。
「、やはり、叶わないのでしょうか……」
天使は顔を俯かせ、祈りの手を更に硬く握った。
「そうね。でももし諦めず、下界の端の頂点まで辿り着ければ……もしかしたら、また会うかもしれないわ」
「……」
場には沈黙が残る。この天使はたしかに犯罪者で、許されてはいけない存在だった。
「それでは。処刑を始めましょう」
天使は席を立つ。
何十回、何百回、何千回目の……儀式であった。
『悪魔という存在は、元々存在しなかった』
『全てが平和だった。でも、一匹の天使が罪を犯した』
『善しか存在しない世界なのに、悪が生まれた』
『だから、追放した。天界から追い出し、遠くの地へ追いやった』
『次第にそれは、完全な悪に染まった』
『"悪魔"』
『それらは、元々天使であった』
まだ、落ちる、堕ちる。
果てしない暗闇をひたすらに漂い、私は堕天使へと変貌する。
罪を犯した。
絶対に犯してはいけない、極悪の。
だから、ここに落とされるのも当然であった。
……
そう、望んだ?
違う。
疑問が、生まれてしまっただけだ。
……
騒がしいその地が、更に騒がしくなる。
『おい、天使だ。天使』
『新入りが来たのか、来たぞ、来た』
『今度は何日で染まるか、賭けをしよう』
『そうだな、そうしよう』
堕天使と悪魔は微笑む。その純粋が早く染まることを祈って。
『おい』
ある悪魔が、異変に気付く。
『こいつ、染まる物を持ってねぇ』
『天使じゃねぇ! 悪魔でもねぇ!』
『やめだ、やめ』
『羽を持たないやつに興味はねぇ』
そう言って、彼等は下界を離れる。興味を無くした悪魔達は、再び抗争を開始した。
そんな中、一匹の堕天使が、落ちてきた天使らしき存在に向かって話し掛ける。
「……おい、おい」
「……」
悪魔がいくら話しかけても、その者は動かない。
「チッ。おい! 起きろつってんだよ!」
呆れた悪魔は力に頼った。
その人物を足で蹴飛ばし、無理やり目を覚まさせようとする。
「……ぅ……」
その天使は目を覚ます。
目を開けるとそこには、黒い翼を生やした堕天使が一匹。空に浮かんでいた。
「はぁ。やっと起きた」
その悪魔はため息を着き、地に足を付けた。
天使は困惑し、身体を起こす。良い気分だとはとても言えなかった。
運命の始まりだ。
全ての因果が逆転し、秘密を探るための鍵が握られた。
「なあ、お前。名前は?」
「な、まえ……?」
記念すべき、初めての言葉。
これは、背中から羽が朽ちてしまった天使と、悪魔になりきれない堕天使の物語。
全てが曖昧な2人が重なって、生まれ出す新たな奇跡。
翼がないから、飛べない?
そんなもの、誰が決めつけたんだ。
『羽ばたけ、奇跡よ!』
※この物語は連載中の作品『無題/日記』が完結及び他ストーリーがある程度進んだら開始いたします。それまで暫しお待ちを。




