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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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3/3

1-2

 風呂を借りた後、持参したパジャマに着替え、居間に設えられた温かい食事を前にしても、俺の涙が収まることはなかった。

 そんな自分を前にして、きっと祖父母は、「一体何があったのだ?」と問いただしたかっただろう。

 しかし、未だに泣きべそをかいている俺に詳細を聞くことは出来ず、いざ両親に電話を掛けようにも繋がらない・・・。

 最悪、警察沙汰にもなりかねず・・・下手すれば、法的責任の一端を負わされかねない状況・・・。

 にも係わらず、祖父母は俺に対し、そんな態度をおくびにも出さず、終始温かく接してくれた。

 彼等が俺にくれた無償の愛と、そして久しぶりに食べたエビフライの美味しさが、やがて自身の涙を止めてくれた。


「おじいちゃん、おばあちゃん・・・ありがとう」


 礼の言葉は自然と出てきた。

 

「いいんだよ、私達は優ちゃんが元気になるなら、何だってするからね」


「そうだぞ、優。何があったか知らんが、心配するな。俺たちがついてるからな」


 傍らにいる2人からそう慰められ、俺の中には沢山の嬉しさと・・・一抹のむなしさが生まれた。

 ここまで至れり尽くせりな応対をしてくれた祖父母には、申し訳なさを感じつつも・・・




 もし叶うなら、その言葉は両親からこそ聞きたかった・・・そう思う自分がいた。




 ・・・その後、俺は我が家であった一連の騒動について2人に話した。

 ところどころ支離滅裂で、時系列もむちゃくちゃ。

 感情が多量に入り交じった自分の説明は酷く分かりにくかったことだろう・・・。

 しかし、祖父母は、俺が話す言葉の切れ目切れ目に相づちを打ちながら、言いたいことを全て言い終え、温くなったお茶を啜るその時まで、黙って聞いてくれた。


「そうかい・・・大変だったねぇ」


「優・・・頑張った。よく頑張ったなぁ」


 また、涙が出そうになった。

 けど、孫の感涙でこれ以上祖父母を困らせたくなかった俺は、目尻から溢れ出しそうな気持ちを、どうにか堪える。

 

「今日は、ゆっくり寝なさい。お布団は敷いてあるから」


 祖母にそう促され、俺はいつも祖父母の家に泊まる際に使わせてもらっていた客間に向かう。

 やや、勾配の急な階段を1つ1つ昇り、ドアを開けて入室。

 


 

 いつもなら、規則正しく布団が敷かれているはずの部屋に、たった1組・・・自身の使うものだけが置かれた光景。

 



 それを見たとき、俺は・・・


 


「強くなろう」




 と決心したのだった。

 



 自身の窮状に対し同情してくれた祖父母の手を借りて、これからは生きていくことになる。

 世の中は、子供1人で生きていけるようには出来ていない。

 それ故に誰かに頼らざる得ない・・・これは避けられないことである。

 



 しかしこれからは・・・少なくとも精神面では自立を要求されるだろう・・・。

 この部屋で家族3人・・・並んで床につくことはもう無い。

 母が家を出て、父が壊れ、僕が玄関をくぐったあの瞬間・・・俺の家族はなくなったのだ。 



 強くなるとは何なのか?

 その為には、何をすれば良いのか?

 抽象的な言葉を口にするだけで、変わるモノなど無い・・・そんなことすらよく分かっていなかった幼少時の俺は布団を被ると、まるで頭の中で羊を数えるが如く・・・




「強くなる、強くなる、強くなる、強くなる、強くなる・・・」




 と、まるで、自身の頭にすり込むように、繰り返し繰り返し唱え続ける夜を過ごしたのだった・・・。

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