美少女配達員
「ぷっはーっ! いやぁやっぱ仕事終わりは氷壁だよなぁ!」
「へ、へぇ……そうなんですねぇ」
何もないリビングで、俺は配達員のアナさんと注文したビールを飲んでいた。
「いやぁ、話がわかる奴で良かった! ウチの連中なんて大騒ぎしてやがってよぉ」
「大騒ぎ……?」
どういうことだ? 何かトラブル?
しかし、この美少女さん、とんでもなく荒いな……ギャップ凄すぎじゃないだろうか。
「まさか魔王城から依頼が来るなんて誰も思わねぇからな、ははは!」
「あのー、魔王城って有名なんでしょうか?」
「あ? まぁー、教科書に出てくるくらいだから有名じゃねぇか?」
「教科書⁉」
「それより、クラキはなんでここに住んでんだ?」
「買ったんです」
「あ?」
「魔王城を買いました」
「ははは! 面白れぇ顔だな! なんだって?」
「売りに出てたから買ったんですよ!」
「えぇーーっ⁉ おまっ……、魔王城って売ってんのかよっ⁉」
「はい、ちゃんと登録もしましたから、正式に私が所有者です」
「ふーん、まぁ、いいや。しかし、良いとこだよなぁー」
アナさんはキョロキョロと部屋の中を見回している。
「まだ、家具を揃えてないので、殺風景ですけどね……」
「イデアで買うのか?」
「あー、そうですね、たしかそこが良いとおすすめされて……」
「やめとけ」と、少女が手を振った。
「え?」
「あたしが腕の良い大工を紹介してやるよ」
「本当ですかっ⁉」
「ああ、ビールの礼さ。それに、クラキのお陰で、危険手当も割増しでもらえそうだからな」
「危険手当って……」
「ああこっちの話。お前、明日は?」
「はい、普通に居ますけど……」
「よし、じゃあ仕事終わったら迎えに来てやるよ。そうだ! あたしの分も適当に飯、注文しといてくれ。一緒に持って来てやるから」
「え……」
「じゃ、ビールごちそうさん。頼んだぜ!」
そう言ってマスクを被り、ベランダに出ると、飛竜に飛び乗った。
「こいつはバッカス! あたしの相棒竜だ! こいつの酒もよろしくなぁ!」
『キィ――――――ッ!』
大きくバッカスが羽ばたき、アナさんはあっという間に小さな点になってしまった。
「い、いったい……なんだったんだ……」
*
翌日、寝室のベッドから降りて、即、風呂場へ向かった。
「ふわぁ……起きてすぐ風呂入れるとか最高なんだが……」
俺は服を脱ぎ、そのまま風呂場に入った。
頭から熱いシャワーを浴びると、一気に目が覚める。
「くぅ~、気持ちいぃーっ! これがしたかったぁーっ!」
汗を流し、湯船に入る。
さばぁーっと湯が浴槽から流れ出た。
ちょうど良いお湯加減……あぁ、寝起きの体に染み渡っていくようだ……。
肩まで浸かり、思いっきり伸びをする。
「はあ~……極楽っ! 湯治とは良く言ったもんだ、ほんとに生き返るわ~」
もはや家のユニットバスなんか入る気もしないな。
ドラゴンヘッドもついてないし……。
さて、あんまりゆっくりもしてられない。
あの美少女さんは本当に来るんだろうか?
いやぁ、それにしてもギャップの激しい人だったなぁ……。
あんなに可愛らしい顔をしてるのに、おっさんみたいだもんな。くっくっく……。
配達員ってことは顔も広いだろうし、この縁を大切にしないと。
風呂から出て、俺はそのままリビングへ向かった。
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