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セカンドハウス魔王城 ~悩めるアラフォーおっさんの快適週末異世界暮らし~  作者: 雉子鳥幸太郎


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いざタイレルへ

ドラ爺さんを見送り、俺は竜車に乗ってみることにした。


「ドラン、乗ってみていいかな?」

『ギィ』


嫌がる感じはない。

俺は少し緊張しながら御者台へ上った。


「ワゥ!」

ルートが隣に飛び乗ってくる。


手綱を握る手が少し汗ばむ。

まずは魔王城の周りを回ってみるか……。


「よし、ドラン、魔王城の周りをぐるっと一周しよう」


手綱を軽く引いて合図を送る。


『……ギッ』


ドランは静かに前に進み始めた。


「おぉ~! すごい……!」

「ワゥワゥ~」

ルートも嬉しそうに周りを見ている。


軽トラとは違った感動があるな。

乗り心地も、思ったほど揺れず、安定している。

恐らく、竜車の車輪部分に、サスペンションのような機構が組み込まれているせいだろう。


ウェザーランドの文明は一見古く見えるが、地球と比べて極端に遅れているようなところがない。

魔晶端末だってそうだ。ほぼ、スマホの機能を満たしているし、飛竜便だってネット通販そのものだ。

逆に、タイタンのリュックに使われている魔導拡張なんて、地球の技術じゃ再現できないわけだし……。


魔王城を一周したドランが止まり、俺の方をチラッと振り返った。


「ドラン、ありがとう」


なるほど、特に運転技術は必要なさそうだ。

ドランに伝えておけば、勝手に動いてくれる。これなら、俺でも運転できるな。

よし、このまま薬草採取に行くか――。


「ルート、城から俺のリュックを取ってきてくれない?」

「ワウ!」


ルートが城へ走って行った。

その間に、ドランに水をやろう。


竜車を降りて、畑横の蛇口からバケツに水を汲む。


「ドラン、今日はこれからタイレルに行って、ラニスさんっていう依頼を手伝ってくれる人を乗せた後、南の池まで行くからね」

『ギギッ』


ドランはバケツに顔を突っ込んで水を飲んだ。

ルートがリュックを咥えて戻ってくる。


「おぉ、ありがとう!」

「ワウッ!」

ルートの頭を撫で、御者台へ上る。


「さぁて、いよいよ初めての依頼だ、みんな準備は良い?」


俺は二人にアイコンタクトを送る。

ルートもドランもやる気満々だ。


「コホン、ではタイレルへ向け――出発!」

『ギィッ』「ワゥ!」


ゆっくりと竜車が進み始めた。

くぅ~、わくわくするなぁ、頑張るぞ!



    *  *  *



竜車の乗り心地はとても良かった。

なんといっても、ドランの安定感が半端ない。


道が悪い個所では、揺れないようにスピードを落としたり、変に蛇行しているなと思いきや、穴に車輪が嵌らないように調整しながら走ってくれていた。

さすが長年走ってきたベテラン竜なだけはある。


あ、そうだ、従魔契約を交わしたわけだし……ルートみたいに鑑定ができるかも。

俺はドランの背を見つめながら、心の中で――鑑定、と呟いた。


――――――――――――――――

名前:ドラン(従魔)

LV:121

知力:A+

体力:B

魔力:C

種族:地竜

毒や魔法に強い耐性があり、地理記憶に秀でた竜種

サンジャの実を食べて育ったため、他竜と比べ知力が高い

――――――――――――――――


おぉ……やっぱり出た。

ふぅん、知力がやけに高い、魔力が低めなのは……耐性に関係がありそうだな。

ってことは、知力も地理記憶の影響なのかも。


この、サンジャの実ってなんだろう?

前の主人が与えていたのかな……うーん、スーパーフード的なもの?


ウェザーマートのアプリを開き、『サンジャの実』で検索をする。


「あった……!」


やっぱり何でもあるな、ウェザーマートは……。

サンジャの実は、想像通り、健康食のカテゴリだった。


「えーっと、滋養強壮に効果、血液を綺麗にしてくれる……へぇ、民間薬として愛される、か。なんか漢方薬みたいだな」


説明を読み進めると、土さえ合えば割と簡単に育つと書かれていた。

いいね、だから民間薬になって……ん?


「一個、さ……3000wz⁉」


高けぇ! とんでもない値段だ……。

そうか、簡単に育つとはいえ、合う土がなかなか無いから希少ってことか……。

とりあえず今度一個買ってみて、うちの畑で育つか試してみようかな。


そんなことをしているうちに、ドランの引く竜車はタイレルに到着した。

門をくぐり、竜車置き場に入る。


「よぉ、あんた、たしか変な竜車に乗ってた人だよな?」

あの時の門兵さんが声を掛けてきた。


「どうも、あの時はお世話になりました」


「今日はまた、ずいぶんと立派な地竜だな? あんた、もしかして、大店おおだなの人?」

ドランを見上げ、門兵さんが俺に尋ねた。


「いえいえ! ただの冒険者兼魔石採掘屋です」

「へぇ、魔石も掘ってんのか……なら、ボストンだな、行ったことあるか?」


「噂には聞いているんですが、何せまだ始めたばかりでして……」

「かなり良い魔石が出るらしいぜ。その分、同業者も多いだろうけどな、まあ、頑張れよ、竜はちゃんと見とくから安心しな」


「ありがとうございます、よろしくお願いします」

「ワゥ!」


門兵さんに頭を下げ、待ち合わせ場所のギルドへ向かう。


「いつ来ても賑やかだなぁ……ルート、はぐれちゃ駄目だよ」

「ワウ」


ギルド前に着くと、すでにラニスさんが待っていた。


「あっ、クラキさーん!」

笑みを浮かべたラニスさんが大きく手を振る。


「すみません、お待たせしました」

「いえいえ、私もいま来たばかりです」


握手を交わし、

「じゃあ、早速向かいますか?」とラニスさん。

「はい、実は……今日は竜車で来ていますので、それで行きましょう」

「ええっ⁉」


竜車置き場に戻り、ドランを見たラニスさんが目を大きく見開いた。


「これは……素晴らしい竜ですね……よく、このような竜を……」


ラニスさんは、ドランの周りをせわしなく動きながら観察する。

ドランは完全にラニスさんを無視をしていた。


「よう、ラニス」

門兵さんが声を掛ける。


「あぁ、ハーミットさん、どうも」

「良い地竜だよなぁ」

「ええ、かなり経験積んでますよねぇ、羨ましい……」


「見てわかるものなんですか?」

「わかりますよ、他の地竜を見てください」


そう言われて、俺は竜車置き場にいる地竜たちを見回した。

うーん、これといって違いはない気がする。


考えていると、ラニスさんがおもむろに柏手を打った。


――パンッ!


一斉に地竜たちが振り向く。

そして、ほとんどの地竜は落ち着かず、辺りを見回している。

中には動じず、そのままじっとしている地竜もいた。


「何頭か、じっとしていますよね? あれが経験を積んだ地竜です」

「へぇ……」


「経験の浅い地竜は、口元がずっと動いていたり、やたらと周りを気にしたりしてるんですよ。その点、クラキさんの地竜を見てください! この岩のような安定感……私が近くで動いているのに反応すら見せませんでした、これは相当に経験を積んでいる証拠なんですよ!」


やや興奮気味にラニスさんが言う。

なるほど、何事にも動じないのが経験の証、か……。

たしかに、ドランは厩舎の中でも岩みたいにじっとしてたもんな。


「そうなんですね、知りませんでした……」


「いやぁ、しかし、よく手に入れられましたねぇ。魔導車といい、この地竜といい、本当にクラキさんの人脈は凄いです」

「い、いや、本当にたまたまなんですよ……ははは」


「ラニスも早く竜車を買えよ」と、ハーミットさん。

「そんな簡単に言わないでくださいよ……いくらすると思ってるんですか」


ラニスさんがため息をつく。

たしかに、俺は円の換金チートがあるから買えたが、こっちの稼ぎだけで買うとなると高いよなぁ……。


「そりゃそうか、はっはっは」

「ちなみに……ラニスさん、もうファームを決めてあるんですか?」


「いやぁ、これがなかなか……有名どころは殆どが紹介制ですから。ギルドに紹介してもらうにも、実績がまだ足りませんし……」


そうか、いろいろ大変なんだな……。

せっかくだからドラ爺さんのところを紹介してみようかな。

お客さんが増えればドラ爺さんも喜んでくれそうだし。


「もし、良かったら私がお世話になったファームを紹介しますよ」

「えっ⁉ いいんですか⁉」


ラニスさんは目を丸くしている。

そんなに驚くことなんだろうか……。


「一応、確認してみますけど、たぶん大丈夫だと思いますよ。とても気さくな方でしたし……」

「えっ……もしかして、こ、個人ファームなんですかっ⁉」

「個人? どうなんでしょう……。もしかすると、従業員の方がいらっしゃるのかも知れませんが……私が見た限りではお爺さんが一人でやられているようでした」


ラニスさんとハーミットさんが顔を見合わせた。


「あの、クラキさん、まさかとは思うのですが……それって、ドラ・オブライエンのファームじゃないですよね?」


「すみません、オブライエンという名前かどうかはわからないんですが……紹介してくださった方がドラ爺さんとお呼びしていたので、私もドラ爺さんと……」


「この国の個人ファームで『ドラ』の名がつくファームは一つだけですが……」

「ああ、じゃあきっとそうです、そのファームですね」


ラニスさんが額に手を当て、ハーミットさんはなぜか笑いだした。


「え、ど、どうかしましたか?」

「……クラキさん、ドラ・オブライエンは、地竜育成師の頂点と言われるお方です」


「えぇっ⁉」


ドラ爺さんって、凄い人だったんだ……。

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