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セカンドハウス魔王城 ~悩めるアラフォーおっさんの快適週末異世界暮らし~  作者: 雉子鳥幸太郎


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リアル冒険者

「んん……」


――目が覚めた⁉

ソファに横たわる狼獣人が、ゆっくりと瞼を開いた。

俺とルートは顔を見合わせ、恐る恐る覗き込む。


彼には悪いが、念のため手足を拘束させてもらっている。

見知らぬ獣人が暴れたら、俺たちではとてもじゃないが歯が立たないだろうし……。


「――!」

俺と目が合った瞬間、彼が上体を起こしかけた。


「ひぃっ⁉」


思わず後ずさる。

ルートは低く唸りながらも、じっと相手を見据えていた。


「ブラック・コボルトか……珍しいな」


低く響く声。

ルートを見る眼差しは、不思議と穏やかだった。

わ、悪い人じゃなさそう……かな?


「あ、あの……拘束してしまってすみません。どんな方かわからなかったもので……」

「ワウワウ」


「……かまわん。警戒して当然だ」

そう言って、彼は深く息を吐く。


「あの、私は倉城といいます。こっちはルート。簡単ですが、応急手当はしておきました」

「感謝する……。オレはバルト、冒険者だ」


「ぼ、冒険者さん――⁉」


なんと、リアル冒険者か! すごいな、本当にいるんだ……!


「ギルドで身元も証明できる。何もしないと約束するから、これを外してもいいか?」

そう言いながら、さんが「ムンッ!」と、腕を軽く動かした。


――ブチィッ!!


「ひぇぇっ⁉」

「キャイッ⁉」


拘束していたロープが音を立てて弾け飛んだ。


反射的に部屋の隅まで飛び退いた俺とルートは、お互いに抱き合った。

おいおい嘘だろ……ロープって、切れないからロープなのに……っ!


「すまんな、怖がらせてしまったか……」


バルトさんは申し訳なさそうに頭を掻いた。


「い、いえ……ロープを手で千切った人を初めてみたもので……」

「ああ、そうか、獣化したままだったな」


次の瞬間、バルトさんは灰色の髪をした人間の姿になった。


「す、すごい……!」

「ワウッ……!」


「オレは人狼族だからな、普段はこっちさ」

「人狼族……」


バルトさんは物珍しそうに、部屋の中を見回した。


「ところでクラキ……ここはどこなんだ?」

「えーっと、私の……城、ですね」


「城⁉ も、もしかして……貴族の方ですか⁉」

慌てた様子のバルトさん。


「いえ、ち、違いますっ! ごく普通の庶民ですから!」と、両手を向ける。

「……そうか、良かった。なら、話し方はこのままでいいよな?」

バルトさんが安堵したように微笑む。


「ええ、もちろんです」


その時、バルトさんがハッと何かを思い出したように目を見開いた。


「そうだホークは……! 俺の走竜を知らないか⁉」

「それなら、表に繋いでいます。一応、お水だけ飲ませました」

「良かった、無事だったか……ありがとう、何から何まで本当に助かった」


バルトさんは丁寧に頭を下げた。


「い、いえ、それより、何があったんですか?」

「ああ、ギルドの依頼で大森林の魔窟を調査していてな……。うっかり、魔物溜まりに落ちてしまって、命からがら逃げ出して来たのさ」


「すみません、魔物溜まりというのは?」

「……魔窟はわかるか?」


「ええと、魔物が棲みついた洞窟みたいなものでしょうか?」

「そうだ。その中で、稀に魔物が集まっている場所がある。それを魔物溜まりと呼ぶんだ」


「なるほど……。えぇっ⁉ よく助かりましたね……」

「まあ、こいつがあったから獣化もできたし、俺は運が良いからな」


バルトさんが割れた石を見せて笑う。


「これって何の石です?」

月光石(ルナ・ストーン)、こいつは月の力を吸収した魔石でな。オレたち人狼族は月の光で獣化するんだが、こいつがあれば一回切りだが、獣化ができるのさ」


「なるほど……」

うわぁ、魔石サーチしてみたい……。


「さて、ギルドに報告しないとな……ここからタイレルまでは近いか?」

「あ、はい、えっと……飛竜なら数時間で、竜車なら半日だと聞きました」

「《《聞いた》》……?」


訝しげな目で俺を見るバルトさん。

しまった、怪しまれてしまったのかも……。


「あ、じ、実は引っ越してきたばかりで、あまり土地勘がないもので……。ウェザーマートの配達員の方から聞いたんです」

「ふむ……」

「ワウ~ン」

ルートがバルトさんに頭を擦りつけた。

バルトさんは優しく頭を撫でる。


「……良い子だな」

「はい、そりゃあもう! とっても賢くて、可愛いんですよねぇ~」


バルトさんの表情が柔らかくなった。


「ははは、そうか。こいつは希少種だからな、鍛えれば相当強くなるぞ」

「そうなんですね……」


たしか、アナさんと袋小路さんも同じようなことを言ってたな……。


「すまんが、ギルドに報告して来てもいいか?」

「ええ、もちろんです」


バルトさんは、魔晶端末を手に立ち上がると、ルーフバルコニーへ出て行った。

まだ、体が痛むのだろう……歩くのが辛そうだ。


「バルトさんが助かって良かったな。お手柄だぞ、ルート?」

「ワウッ!」


ルートを撫でていると、バルトさんが血相を変えて戻ってきた。


「ク、クラキ! ここは……アイレムの魔王城じゃないのか⁉」


あー、ご存じでしたか……。


「えっと……はい、そうですね。あはは……」

「も、もしかして……お前は、魔王……」


バルトさんが身を低くして、腰の後ろの短剣の柄を握る。


「ちょ⁉ ちち、違いますっ! 決して魔王ではありませんっ!」


「だ、だが……」

バルトさんは警戒態勢を取ったままだ。


「ここは買ったんです! たしかに魔王さんが住んでたそうなんですが、私はお会いしたこともないですし……」


「か、買う?? 魔王城を……???」

バルトさんは困惑した表情を浮かべている。


「ワゥ~……」

ルートもどうしたものかと困っているようだった。


「あ、あのぉ……バルトさん?」

「う、うむ……。まあ、部屋に生活感もあるし……クラキから悪意も感じないが……」


「で、ですよねっ! 私は真面目だけが取り柄で……ほ、ほら、この家具もタイレルのタシュ&ウルーというお店で買ったんですよ!」

「おぉ……! タシュ&ウルーか! あの兄弟が、ここに?」


「はい! 壁の本棚はここで作っていただいたんですよ!」

「そうか……わかった。魔王ではないと信じよう」


バルトさんが、ようやく短剣から手を離してくれた。

良かったぁ……怖すぎる……。


「すまんクラキ、迷惑ついでに頼みがあるんだが……」

「ええ、何でしょう?」

「まだ少し体が痛むのでな……数日、ここで休ませてもらえないだろうか?」


このまま放り出すわけにもいかないもんな……。

仕方ない……有休を取ろう。


「わかりました、構いませんよ」

「おぉ! 本当に助かる! 何か礼をしたいんだが……」


お礼か……特にwzには困ってないしなぁ。

ん? 冒険者……だよな?


これは……護身術の先生を見つけたかも⁉


「あ、あの、もし良ければ、私に戦い方を教えてもらえないでしょうか?」

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