畑作り開始
城の外へ出た俺とルートは、畑に良さそうな場所を探した。
「陽当たり良さそうだし、この辺にするか」
「ワウ!」
んー、広さはどのくらいが適切なんだろうか……。
持ってきた本を開いて確認すると、30平米くらいで十分、家庭菜園として季節の野菜が楽しめると書いてある。部屋でいうと……18畳くらいか?
「あんまり大きいと、一人じゃ管理できないもんなぁ……」
まあ、最初だし、本の通りにやってみよう。
「……さん、よん、ごー、ろく、ななっと」
ルートが俺の顔を見上げながらついてくる。
「よしルート、次は横だな。いち、にー、さん……」
「ワウ、ワウ、ワウ!」
俺の数える数に合わせて、ルートがジャンプする。
「ははは! すごいなぁ、数もわかるのか?」
「ワウ!」
後は、足で軽く地面に線を引いて……。
「うん、こんなもんか。ほら、ルート、この線の中に畑をつくるんだ」
「ワウ」
さてさて、俺の腰が持つかどうか……。
ぎっくりなんてやったら大変だし、あまり無理はしないようにしないと。
軍手をはめ、ルーン付の平鍬を持つ。
「いざ!」
「ワウ!」
――サクッ。
「えぇっ⁉ な、なんだこれ⁉」
鍬を振り下ろすと、まるで地面が発泡スチロールになったような感触が⁉
俺は、まじまじと鍬先を見つめる。
――ルーンの威力凄すぎでは?
見た感じ、模様が入ってるだけなんだが……。
「よーし、これなら今日中に全部耕せそうだ!」
勢いに乗った俺は、あっという間に予定範囲の土を耕してしまった。
「ふぅ……腰も全然大丈夫だし、この勢いで畝も作っちゃうかな」
ルートは掘り返した土に鼻を突っ込んで転がり、まるで子どもみたいに遊んでいる。ふふっ、楽しそうで良かった。
「えーっと、畝は……」
本を開き、畝の作り方を確認する。
えー、ピーマン、ミニトマト、キュウリ、イチゴは高さ15~20㎝くらい。
ホウレンソウやニンジンは少し低めに。
で、作物のレイアウトを決めましょう――か、なるほどね。
なら、畝は5本だな……。そのうち1本は二分割して、ホウレンソウとニンジンコーナーにしよう。
「よしっ!」
畝を作っていくと、ルートが飛び越えたり、掘り返したりする。
「ルート、畝を崩しちゃ駄目だよー?」
「ワウ!」
あとで、こっちの季節も一応調べておくか。
まあ、大抵同じだと思うから、たぶんこれから秋かな? なら、イチゴとかホウレンソウ、ニンジンか……。で、春頃には、ピーマンやミニトマト……。
ふふっ、楽しみだなぁ~。
「ふぅー、こんなもんか」
できあがった畝を眺める。
うんうん、初めてにしては、結構バランスいいんじゃないか?
土の匂いも新鮮だし、体を動かすのも楽しい……。
何より、自分でやったっていう達成感があるよなぁ。
「ワウワウ!」
「へへ、どうだルート? 上手くできたよな?」
「ワゥ?」
突然、ルートが耳を立て、何かを見つけたように首を伸ばした。
「ん? どうした?」
ルートの目線を追うと、小さな影が……。
「んん? 何だあれは……?」
こっちに近づいて来ている……。
ルートも警戒しているようだ。
「ルート、確認しよう!」
俺はすぐにルートを連れ、魔王城の入り口にあるコンソールパネルに走った。
操作して近づいて来ているものが何かを調べる。
マップに表示された光点が、ゆっくりと近づいて来ていた。
光点をタップすると、望遠カメラなのかなんなのか、映像に切り替わった。
「走竜……⁉ あ、だれか乗ってる!」
映像に目を凝らすと、狼のような耳が――。
お、狼獣人……⁉
何かぐったりしているな……。
走竜の首に、かろうじて引っかかっている感じだ。
意識がないのかも知れない。
助けなきゃ――いや待て、大丈夫なのか?
もし、何かの罠とか、危険な相手だと……。
「ワウワウ!」
「ルート……」
ルートが自分が行くと言わんばかりに、その場を行ったり来たりする。
よ、よし……!
俺は目線をルートに合わせる。
「いいかルート、危ないと思ったらすぐに逃げるんだぞ。俺はクマスプレーを用意しておく。ゆっくりと走竜を城へ誘導するんだ、いいな?」
「ワウ!」
「よし、頼んだぞ!」
「ワウワウ!」
ルートが凄い勢いで走竜に向かって駆けていく。
もし、危険な相手なら城へ逃げ込もう。
俺の許可無く入れないはずだ……。
「急げ急げ……」
俺は城へ戻り、クマスプレーと、ルーン付のピッケルを持って外に飛び出した。
このピッケルなら軽いし、かなりの攻撃力があるはずだ……。
ルートは、まるで牧羊犬のように走竜を誘導していた。
やっぱりルートは凄いな……誰に教えられたわけでもないのに。
ルートがスピードを上げ、俺の側へ戻ってきた。
「ワウワウッ!」
「よーし、よくやったぞルート、さすが俺の相棒だな」
黒い背を軽く叩く。
走竜はもうすぐそこだ……。
ピッケルを握る手に力が入る。
「よし、来るぞ……気を抜くなよ、ルート」
「ウウゥ……」
ルートが身を低くして警戒態勢になる。
俺はピッケルを握りしめ、走竜が来るのを待った。




