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セカンドハウス魔王城 ~悩めるアラフォーおっさんの快適週末異世界暮らし~  作者: 雉子鳥幸太郎


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家族

倉庫へ入ると、コボルトが毛布の上にお座りをしていた。


「おぉ! ずいぶんと良くなったな!」


近づこうとして、思いとどまる。

焦っちゃ駄目だよな……。


俺は少し離れた場所に座った。


「なぁ、元気になったら森へ帰りたいか?」

『……』


「実は……俺の相棒になって欲しくてさ、って……恥ずかしいな、ははは。もちろん、お前さえ良ければの話だよ?」

『……』


コボルトは何も言わずに俺を見つめている。

その目から敵意は感じられない。


「んー、メリットは……そうだ! 肉なら好きなだけ食べて良いぞ」

『……!』

「ん?」

いま何か目が鋭くなった気がしたが、まあいいか……。


「そうだなぁ……自分のことを話すのは苦手なんだが……まあ、体が治るまでの暇つぶしだと思って聞いて欲しい」


それから俺は、自分がどこから来て、なぜこの城に住んでいるのか、これからどうしたいのか、どんな人生を歩んで来たのかを話した。


「そんなわけでさ、いずれはこっちで暮らせればいいなーって思ってる」

『……』


「で、何が言いたいかっていうと……まあ、その、俺の家族になって欲しいんだ」

『……!』


「これと言って取り柄なんてものはないんだが……。俺はお前を絶対に裏切らない、これだけは約束できる! だから、お互い……助け合って生きていかないか?」

『……』


コボルトは黙ったまま、くるくるっとその場で回り、毛布の上で背中を向けて丸くなってしまった。


駄目か……。

まあ、言いたいことは全部言えた。


あとはコボルト次第だな……。


「俺の言いたいことはそれだけだ。森に帰りたければ、ちゃんと送って行ってやるから安心してくれ。じゃあ、後でまたごはん持ってくるからな」


俺はコボルトの丸い背に声を掛け、そっと倉庫の扉を閉めた。


リビングに戻り、俺は気分転換にプールに入ることにした。

冷蔵庫からビールを取って階段を上がる。


服を脱ぎ捨て、プールに飛び込んだ。


「ぷはぁ!」


少し泳いだ後、大の字になって浮かぶ。

あー、気持ち良い。


何だってこんな天気が良いんだろう……。

あいつもそろそろ風呂に入れてやるかな……だが、触らせてくれるかどうか……。


「ふぅ……」


その時、突然目の前を影が横切ったかと思うと、派手な水飛沫が上がった。


「うわぁ! な、なんだぁ⁉」


溺れそうになりながら水面に出ると、そこには嬉しそうなコボルトがいた。


「お、お前……⁉」

『ワン!』


「え? ど、どうやってここに?」

『ワウ!』


コボルトが俺に飛びかかって来た。

顔をベロベロと舐められる。


「ちょ、うわっ、や、やめ……くすぐったいよ」

『ワウワウ!』


こ、これは、受け入れてくれたってことなのか⁉


「ははは! そうか、俺の相棒になってくれるのか?」

『ワウッ!』


コボルトは嬉しそうに頭突きをしてきた。


「そうか、ありがとう! ありがとうな!」


俺はコボルトを抱き上げた。


「お前の名前を考えなきゃな……クロってのも安易すぎるよなぁ……」

『ワウ?』


「はは、よーし、その前に体を洗うか」


俺は丁寧にコボルトの体に付いた泥を洗い落とした。


「こんなもんでいいだろう」


コボルトをプールから出す。

ブルルルッと身震いをすると、美しい黒毛が太陽の光を浴びて輝きを放つ。


「へぇ、お前綺麗だな。格好いいぞ」

『ワウ』


コボルトは当然だと言わんばかりに得意げだ。


「あはは、不思議だなぁ、お前が何を考えてるかわかる気がするよ」

『ワウワウ』


「よーし、体を拭くか」

タオルでコボルトの体を拭く。

この風なら、あっという間に乾くだろう。


「うん、怪我もすっかり治ってる。良かったなぁ」

『ワウー』


尻尾を振って喜んでいる。

こりゃ祝杯だな。


俺はビールを手に取り、喉を鳴らしながら飲んだ。


「ぷはーっ! いやぁ、良かった良かった!」


コボルトは階段の方へ行き、こっちを振り返って吠えた。

『ワウ!』

「ん? 来いって?」


一緒にリビングに降りると、コボルトは赤竜肉の入った冷蔵庫の前に座る。

『ワウ!』


「あー、腹が減ったのか、よしよし、ちょっと待ってくれよ」


俺は赤竜肉を取り出し、細かくミンチにした。

よーし、こんなもんか。


「ほら、竜肉は体に良いんだってさ。たくさん食べるんだぞー」

『ワウワウ!』


コボルトは美味しそうに肉を食べている。

ふふふ……可愛いなぁ。

俺の相棒、家族か……。

コボルトを見ていると、自然と頬がせり上がってくる。


俺はソファに腰を下ろし、スマホで名前の候補を探すことにした。

見た目から黒、出会ったのは森……この辺から連想してみるか。


「……ブラック、オニキス、シャドー、フォレス、ダーク……」


何だかどれも厨二くさいな。

まあ、別に良いんだけど……。


食べ終えたコボルトが俺の隣にトトッと飛び乗ってきた。

そして、俺にぽすっともたれかかってくる。

か、可愛い……なんだろう心が震える……。


「何て名前がいいかなぁ……ほら、色々あるぞ~」

俺はコボルトに画面を見せた。


『ワウ!』

すると、コボルトが画面に手を伸ばす。

そしてひとつの名前を指し示した。


「ん? ルート? ルートが良いのか?」

『ワウワウッ!』


勢いよく返事をした。

すごいな……文字が読めるのか?

俺が言っていることは理解してそうだけど……。


「そうか、これは"根"って意味だな。あと複数形になると"先祖"とか"故郷"なんて意味もある」

『ワウ~』


そうだな、こいつが俺とこの世界を繋ぐ根になってくれれば言うことない。

そういう意味でも良い名前だと思う。


「よし、今日からお前はルートだ! よろしくな、ルート!」

『アウッ!』



今日、異世界に家族ができた。

膝にもたれかかるルートの小さな頭を優しく撫でる。

暖かくて、とても柔らかい……。


俺はこの日の喜びを、決して忘れることはないだろう。

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