初報酬
「えっ⁉ スタンダードですかっ⁉」
「はい、おめでとうございます」
画面の向こうで袋小路さんがニコッと笑みを向ける。
買取りを依頼した魔石5個の査定が出たのだ。
内訳は、黄色2個はただの石、赤はコモンクラスで、ただの石だと思っていた黒い石がスタンダードクラスの魔石とのこと。
「それにしても倉城さん。初めての採掘、しかもあの資料だけの情報で良く採れましたね~すごいです!」
「い、いえ、ただ綺麗だと思った石を拾っただけで……」
「なるほど、魔石は魔力を含んでいますから、直感みたいなもので感じ取られたのかも知れませんねー」と、袋小路さんが何度か頷き、「でも、もっと効率的に鑑定する道具がありますよ」と何かを取り出した。
袋小路さんが見せてくれたのは、魔晶端末の画面だった。
「魔晶端末を買われたのでしたら、こちらのアプリを投影していただけますか?」
アプリは輝く宝石が描かれたアイコンで、名前は『魔石サーチ』と書かれていた。
「ちょっと探してみますね……」
俺は自分の魔晶端末から『魔石サーチ』を探す。
お、あったあった……投影っと。
「入りました」
端末の画面にを見せると、袋小路さんが頷く。
「ありがとうございます、ではアプリを立ち上げてみましょう」
アイコンをタップすると、QRコードを読み込むような画面になった。
ただ、枠が高そうな額縁みたいで、なかなかデザイン性が高い。
「使い方は簡単です、この枠内に魔石を入れてサーチボタンをタップするだけです」
「へぇ……」
「試しに倉城さんからお預かりした、こちらの魔石をサーチしてみましょう」
袋小路さんがあの黒い石を俺に見せた後、魔晶端末を石に向けた。
「はい、OKです。鑑定画面はこんな感じになります」
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◇◆魔石サーチ結果◆◇
クラス:スタンダード
推定内包魔力:890~1200
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「へぇ、シンプルですね」
「はい、高機能なアプリもあるんですが、技術者向けですね。採掘には、こちらの方がわかりやすいと思います。この推定内包魔力が高いほど、クラスが上がります」
「なるほど……」
査定額も上がるってわけか……。
「今回は、近場の河原でお見つけになったんですよね?」
「ええ、そうです」
「例えば、大きめの岩や石を割ると、中に魔石が含まれていることがあります。大抵、そういう方がクラスが高かったりしますね」
「そうだ、普通の石をサーチして、中に魔石があるか確認できたりしますか?」
「どうでしょうか……そういう使い方をされた話は聞いたことがないです。申し訳ございません」
「あ、いえいえ大丈夫です、今度試してみますので」
「ありがとうございます。では、査定結果ですが……コモンクラスの赤魔石が一個800円、スタンダードクラスの黒魔石が一個、45万円のお見積もりとなります」
「よよ……四十……五まんえぇんっ⁉⁉」
俺のリアクションに、袋小路さんが苦笑いを浮かべる。
「は、はい、黒魔石は15グラムでした。スタンダードクラスは、現在グラム3万程度の相場で買い取らせていただきますので……」
45万とんで800円……だと?
おいおい、やべぇぞ魔石ビジネス……!
あれ? 急に部屋が明るく感じるけど……瞳孔開いてんのか?
「えぇと、倉城さん?」
「あ、はい! すみません、あまりの衝撃で……あははは」
「そうですよね、でも、もっともっと上も狙えますので頑張っていきましょう!」
「はいっ! 頑張ります!」
「それでは明日、振り込みが反映されますので、口座をご確認ください」
「わかりました」
「あと、何かご質問はありますか?」
「えー……あ! 人を雇うって話がありましたが、こっちで知り合った配達員さんによると、結構、危ない人が多いみたいなんですよね。そういう問題って大丈夫なんでしょうか?」
「確かに……地球と比較すると荒っぽい方が多いです。特に倉城さんは日本で生活されてますから、馴染みにくいかも知れませんね」
「なるほど……」
となると、人を雇うのも考えものだな。
あのスタンダード一個で45万だし、無理に手を広げなくてもいいかもな。
「あ、でも、現地ギルドを通すので、そうそう変な人には当たらないとは思いますが……絶対かと言われると、保証はできないというのが本音です……」
「わかりました、自分の方でも調べてみます」
「力不足ですみません、それにしても倉城さんは本当に順応性が高いというか、素晴らしいですね」
「いえ、とんでもない。こうして相談に乗っていただけるので本当に助かってます、ありがとうございます」
「そう言っていただけると嬉しいです」
「では、また魔石が採れたらご連絡します」
「はい、かしこまりました。頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
俺は画面に向かって頭を下げ、通信を切った。
そのままリビングの床に寝転がり天井を見つめる。
「ふぅ……45万か……くくっ……ふふふっ……はははは!」
飛び起きて部屋の中を小踊りしながらぐるぐる回った。
「よんじゅうごっ」
「よんじゅーご!」
「あ、それ、よんじゅーご!」
「いやぁ~45万かぁ! こりゃあ、深山くんに肉正宗でも奢っちゃおうかなぁ~」
ピタッと足を止める。
いやいや、まてまて。
今回がまぐれだっただけかも知れない。
全部コモンクラスなら良くて数千円だったわけだし……。
そうだ、たかが45万じゃないか、浮かれすぎだぞ俺っ!
無駄遣いして無くなる前に、軽トラのローンでも前倒しで払っておくか……。
さて、来週は家具も届くからな。
少し掃除して、来週分の食材発注も済ませておこう。
タシュさんとウルーさんも飲める口かな?
ま、とりあえずみんなの分の酒も注文しておくか。
俺はウェザーマートアプリから来週分の買い物を済ませた。
「これでよし」
さて、現実に戻りますか。
さらば魔王城、また来週だ――。
俺は荷物を持って、魔王城を後にした。




