はじめての魔石採掘
翌日、朝風呂ならぬ朝プールですっかり目を覚ました俺。
こんな贅沢な目覚めが出来るようになるなんて、本当に魔王城様々だな。
「ふぅ~」
タオルで髪を拭きながら、朝食用に買っておいたゴブリンチーズと香味野菜サンドを頬張る。
「ん⁉ これはイケるな……」
俺は平気だが、このゴブリンチーズの癖のある匂いは好き嫌いが別れそう。
バゲットも硬めだけど、噛むと香ばしい風味があって旨い。
それに、コーヒーとの相性も抜群だ。
今度、このバゲットだけ買って、竜肉サンドでも作ってみるかな……。
今日はいよいよ森に入ろうと思っている。
朝食は軽く済ませて、ゴブチーサンドの残りは昼食用に持って行くことにした。
諸々の道具を確認した後、タイタンのリュックを背負って、その場で跳ねたり、少しリビングを歩いてみる。
「ほんとに凄いな、全然、重さを感じないわ……」
よし、行くか!
軽トラに乗り、俺は森を目指した。
地面も凹凸が殆どないし、片道10分程度なので気楽なもんだが。
窓から入ってくる心地よい風と目の前に広がる美しい草原。
このまま、ずっと車を走らせたくなるなぁ。
すぐに森が見えてくる。
森の手前で車を降り、俺は森を見上げた。
「樹齢何年だよ……すげぇな」
後ろを振り返ると、小さい魔王城が見えた。
うん、何かあっても森さえ出られれば城が目印になるだろう。
「いざ、出発!」
森に足を踏み入れる。
日陰になり、少しひんやりとした空気に変わったような気がした。
今日は川を目指そう。
河原にはコモンクラスの魔石が落ちていることが多いとある。
まずは、現物を実際に見てみないとな。
大きな木の間を進んでいく。
思っていたよりも平坦で歩きやすい。
俺は魔晶端末を取り出し、位置を確認した。
魔王城のコンソールと連携したので、魔晶端末からも地図が確認できる。
地図に表示された青い点が俺だ。
UNKNOWNだった軽トラもちゃんと登録して『軽トラ』となっている。
「これは便利すぎる……」
昨日の夜、コンソールパネルとにらめっこした甲斐があったな。
お陰で個別に登録できることもわかったし、たぶん探せばもっと色々な機能があるはずだ。元オーナーの魔王さんに感謝しなければ。
バサバサバサッ……。
「うぉっ⁉」
数羽の鳥が足下から飛び立った。
「びっくりしたぁ……」
危ない危ない、普通の道じゃないからな。
しっかり見て歩かないと……。
キョロキョロしながら、川の方へ向かって進んでいく。
川を越えた森には魔獣が出るらしいからな……絶対に渡らないようにしよう。
いくら荷物が軽いとはいえ、さすがに数時間歩くと足が痛くなってきた。
「少し休むか……」
手頃な木陰に腰を下ろし、持ってきた水を飲む。
砂糖と塩を入れて、経口補水液にしてある。
以前、熱中症対策が話題になった時、ネットに書いてあったやつだ。
水は少しずつ、一気に飲まないようにっと……。
「ふぅ……」
大きな木に凭れ、上を見上げる。
葉の天蓋に覆われ、所々にしか空は見えない。
地面の湿った土に触れる。
懐かしい腐葉土の匂いがした。
小さい頃、学校の花壇で触って以来だな……。
不思議と心が落ち着いている。
普段感じているようなイライラやソワソワするような感じがない。
なんというか、どっしりと心が座っているというか……。
「さて、そろそろ行くか……」
少し休んだ後、俺は再び川を目指して歩き始めた。
水の流れる音が聞こえる。
足を速め、音のする方へ向かうと、木々の隙間から大きな川が見えた。
「あった!」
森を出ると一気に視界が広がった。
川幅は広く、水深は浅い。
河原には大小さまざまな石や岩がごろごろと転がっていた。
これほど石が豊富にあるなら、きっと魔石も見つかるに違いない。
「よし、やるか!」
俺は袋小路さんからもらった資料を見ながら、グローブを嵌め、ミニスコップ片手に河原で魔石を探し始めた。
見たところ、普通の石しかなさそうだが……。
まあ、そんなに簡単に見つかれば苦労しないか。
しばらく探していると、石の隙間に綺麗な石が挟まっているのを見つけた。
「あっ……⁉」
スコップで掘り出し、土を払う。
黄色っぽい色の石だ。
これが魔石なんだろうか……?
ガイドブックと見比べる。
うーん、正直あまり自信がないが、明らかに他の石とは違う感じがする。
まあ、最初だし、とりあえず持って帰って買取査定に出してみるか。
俺は川の水で石を洗った後、絶縁袋に入れた。
ぐぅうう……。
お腹が鳴る。とりあえず昼メシにしよう。
適当な岩に座り、リュックから持ってきたゴブチーサンドを取り出した。
川のせせらぎに耳を傾けながら、ゆっくりとした時間の流れを満喫する。
うん、やっぱ体を動かすのは楽しいな。
川までなら特に危険もなく通えそうだし、こうやって実際に来たことで質問する解像度もあがる。
やはり、一番の問題は魔石の鑑定だよなぁ……。
ウェザーマートで何か良い道具を売ってるかもしれない。戻ったら袋小路さんに聞いてみるか……。
ゴブチーサンドを食べ終え、少し休憩を取った後、小一時間ほど辺りを探すと、全部で5個の綺麗な石を見つけることができた。
黄色が二個、赤一個、黒一個か。
黒はただの石に見えるが、光沢もあるし、なんとなく気になるので入れてみた。
「よし、暗くならないうちに帰るかな……」
俺は道具をリュックに片付け、魔王城へ帰ることにした。
ありがとうございます。
気に入ってくれた方、ブクマや評価などいただけると励みになります!
よろしくお願いします!




