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Crimson Field   作者: Ritchel
Welcome and Goodbye
2/7

信ずる力


 ピチョン…ピチョン……


「…おーい、無事か?」

「何も見えないよ〜」

「ええと、灯りない?」

「ああ、それなら」


 暗闇に二つの光源が現れ、互いの姿が見えた。リャックは手のひらから鈍く光る玉を出しているし、レドはランプを持っている。


「緊急事態だ。ゴールまでの道は瓦礫で塞がれている。非常口まで引き返すぞ」

「…ああ」


 スージャは冷静に見えるが、やはり内心焦っているのだろう。視線は忙しなくあちこちを向き、刀を握りしめている。リャックはそのスージャを不安げに見つめている。


「トワ、刀をいつでも抜けるようにしておけ。壁や天井に穴が空いて繋がった空間から奴らが来るかもしれない」

「え、ええ」


 刀を抜いたものの、視界が悪くあちこちから水音がする。ただの滴る水滴か、それともーー


パシャリ、パシャリ。


 バッとスージャとトワが刀を向ける。暗闇からぼんやりと光が揺れる。


「おい、俺は敵ではない。共に行動していいか?」


 近寄ってきたのは先ほどすれ違った受験生だった。というか、先ほどの教室で質問をしていた落ち着いた緑の髪に黒縁のメガネをかけた男子だ。


「ああ、中間地点にあった非常口を目指す。警戒体制で行く。俺が先頭、次にスージャとトワ、リャックを挟んで後ろを頼む」


 レドがごく冷静に対応すると、その男子は「君が指揮を取るのか」と眉を顰めた。


「俺には経験がある。この第三都市の外で狩ったことがある。俺が指揮をとった方が安全だと思うが」

「それなら何故同行を申し出た」

「…」


 二人の空気が険悪になってきた。レドは今までスージャの指示に対しても静観していたが、この場になり急に自主的な行動を始めた。それ自体は違和感があるものの、人となりを知らないこの受験生よりは信頼できる。そう思い、トワはリャックとともに口を挟まず成り行きを見守っている…と、スージャが一歩踏み出した。


「なぁレド…お前、いや貴方は…」


 スージャの声は僅かに震えていた。


「試験官なんじゃありませんか」


 微かな声だが、やけに響いた。レドはやけに表情が抜け落ちた顔をスージャに向けた。


「何故そう思った?」

「…崩落が起きた時に、これは試験ではないと言っていました。それだけならまぁ、分かるんですが、『穴が空いて繋がった空間』については地下の構造ーー試験会場をを知っているとしか思えない。そう考えれば今までのあなたの行動も納得がいきます」


 レドはニヤリと笑みを浮かべた。刀を持ち上げると、背後に広がる暗闇に向かって投擲した。


「えっ!」


 レドがランプを持って振り向けば、そこにはとても8級や7級には見えない、大きな怪物がいた。


「うそ…気が付かなかった…こんなに近くにいたのに…!」

「なるほど。正解だ。これで俺に従ってくれるな?ーーーデドイ・シジャス受験生」


 刀を回収したレドが再び向き直る。緑髪の受験生、デドイは少し思案した後、「勿論です」と答えた。


「え、ええと、レド、さん?」

「レドでいいぞ」


 トワは恐る恐る声をかけて、今までと何ら変わらぬ態度に安堵した。


「その、ごめんなさい、いろいろ迷惑かけて」

「迷惑がかかった覚えはないが。喋っている暇はない。俺たちは非常口を目指す。そこにある程度他の受験生も集まっているだろう。その後の指示はそれからだ。いくぞ」


 デドイもおとなしく言われた陣形の一部となり、小走りで一行は進んだ。レドは前方の索敵をしながら服の下にしまってあったドッグタグを垂らし、胸ポケットから金色のバッジを出し服に取り付け、さらに上着の下の携帯鞄から機械を取り出した。


「…聞こえるか。こちらコード001、潜入試験官レドだ。状況を教えてくれ」


 しばらくジジジ…とノイズがした後、人の声が聞こえる。どうやら機械は通信機のようだ。


「こちら217、ゾグだ。俺も状況が把握できていない。スタート地点には二人受験者がいる。一人は棄権だが、もう一人はガレキで進めなかったらしい」


「なるほど…つまりゴール地点付近と俺たちのいる中央、スタート地点に分断されたのか、いや、非常口付近でさらに分断されている可能性もある…。俺は受験者4名と非常口に向かっている。受験者の数と状況を後程報告する。ああ、それか「こちらコード201!聞こえるか!」


 大声での割り込みに、レドは思わず通信機を遠ざける。


「うるさいな、会話中か確かめてから入れ」

「…っと悪い、だが試験会場の責任者は俺なんだよ、俺のとこにゃ7人受験生がいる。そっちはどうなってる」

「了解、じゃあ俺のところと合わせて9人は確認が取れたわけだぁ」

「俺は非常口に受験者4名と向かっている。到着し次第再び連絡する」

「了解。本部の方には先に緊急事態が起きたことを報告しておいた。そのうち救援が来ると思う」


 ぽんぽんと会話が繰り広げられる。レドの気遣いか、トワたちにも聞こえる音量になっており、救援が来ることに安堵の息を漏らした。


「さて、疲れてるならすぐに言えよ」

「言ってどうなるんです?」


 スージャの問いかけに、レドは振り返って当然のように告げた。


「俺がおぶる」

「…その状態で戦えるんですか?」

「お前なぁ…そんなに俺が信用ならないか?」

「ええ」


 デドイのレドを見る目はどこか警戒の色を秘めている。全身をジロジロと見下ろし、不遜な態度で口を開く。


「あなた、何歳ですか?その若さでそのバッジ…」

「なるほど、コネ入隊だと思っているのか。そういうのは態度に出さないほうがいいぞ。さて、そろそろ非常口に着く。俺は受験生の人数を確認して報告したらスタート側を見て回る。デドイ・シジャス受験生、お前の腕前見せてもらおう」


 暗闇の中で光る非常口付近には、ある程度の受験生がわあわあと騒いでいた。レドたちの姿を見てとると、不安げな目と共に疑問を投げかけてくる。


「なぁ、非常口が開かないんだ!鍵がかかってるんだ!テッザ試験官に会ったか?」


 四人の視線が自然とレドに集まる。レドは鞄から鍵の束を取り出した。


「退いてくれ。非常口だから開いてるはずなんだがな…」


 鍵は鍵穴にはまった。ほ、と受験者たちが表情を緩めた。しかしレドの顔は硬いままだ。ガチャガチャと鍵を回すが、なんの手応えもない。


「やはりドアは最初から開いている」

「?どういうことだ。ていうかなんで鍵なんか持って…」

「離れてろ」


 レドは離れるように指示を出し、刀を構えた。


 シャッ!!


 金属の切断音とはかけ離れた鋭く、しかし滑らかな音がした。ドアはズ、と斜めにずれ、ただの瓦礫となった。しかし、その向こう側にあるのもまた瓦礫であった。


「開かなかったのは向こう側が塞がれているからだ。非常口付近が壊れるなんて、とんだ手抜き工事だな」

「…ど、どうすんだよ!連絡手段もない、そりゃこの事態には気付いてるだろうけど、どれだけ待てばーー」

「そう怯えるな。全員、俺の指示に従ってもらう」


 レドは首元のドッグタグをつかみ、受験者からよく見えるように突き出した。


「俺は試験官、レド・ハドゥアだ。救助要請はすでにしてある。ここで待機しておけば大丈夫だ」


 受験生が一瞬の静寂の後再びざわめき出し、レドは続いて再び通信機に話しかける。


「こちらレド、非常口に到着。内部も崩落しているようで開かないが、受験生を確認できた。合流した人数は14人だ」

「OK、ってことはスタートとゴールに9人、お前入れて…今そこに19人いるんだな。不明なのは二人…」

「俺が状況を確かめてくる。受験生は待機させておく」

「おいおい、そりゃ大丈夫か?」

「神力使いもいるし、骨のありそうな奴もいる。まぁ、守りも渡しておくし大丈夫だろ」


 レドは振り返り、デドイに笑いかけた。


「デドイ、ここはお前が指揮をとって守れ」

「「!?」」

「行動を起こすときはスージャとも相談しろ。神力が使えるやつはどれくらいいる?」


 パラパラと手が上がった。


「4人か。お前たちは交代で戦闘のサポートをしろ。それ以外の奴らも3人ずつ定期的に見張りを代われ。敵が来なければいいんだが…」


 レドはゴソゴソと鞄を漁ると、札のようなものを取り出しドアに貼った。とたん、光の幕が辺りに広がった。


「この護符は半径10mほどの結界を30分間張る。激しい攻撃を受け続けない限りな。それまでに俺はスタート側を見てくる。何か質問は?」


 誰も手を挙げるものはいない。レドは範囲外にいた受験生を光の中に押し込むと、デドイを手招きした 。


「迅速な行動には統率力が必要だ。統率力は信頼と直結する」

「何が言いたいんです?」

「ま、自分が信頼に値する人間であることを示せってことだ」

「…」

「自衛だからな、敵いそうになかったり怪我人が出たらすぐに結界の中に撤退しろ。この結界はやわじゃないからな」


 他の受験生にも聞こえるように大声で言い、「何かあったらこれ見せろ」とバッジをデドイに渡すとレドは暗闇の中に吸い込まれていった。

 残された受験生たちは再びヒソヒソと囁き始める。


「交代で見張れと言ってたけど…どうやって決める?」

「そもそもどれくらいランプがあるんだ?」


 デドイはジロリと辺りを見渡し、ため息をついた。


「おい、聞こえるようなため息をつくな」

「聞こえてもいい」


 今度は注意をしたスージャが呆れたようなため息をつく。デドイは眉を顰める。


「お前が今不快に思ったように、俺たちもそう思うんだよ。お前が指揮官なんだ。堂々としてろ」

「なるほど、分かった」


 妙に素直な様子にスージャは拍子抜けする。デドイは柏手を叩くと声を大きくしていった。


「神力使いを除いた3人組を作る。遠距離攻撃できるものはいないか?」

「刀以上の範囲という話だ」


 スージャが補足する。確かに、この暗闇では弓などあまり役に立たないだろう。槍やそれに類するものが何人かいたようだ。


「お前たちはバラバラになってくれ。刀が二人づつで1組だ」

「デドイ、これはあくまで意見だが、残りの二人は自分たちで組ませた方がいい。知ってる奴らの方が連携が取れる」

「ふむ、採用だ。ああ、灯りの問題もあるな。二つは結界の外において接敵がわかるようにするか。ランプは幾つある?」


 見たところ、ランプを持っていない受験生もかなりいる。リャックは神力使いだから灯りを生み出せるがあれはランプではなく神力をじわじわと消費するため緊急時以外選択肢にはならない。トワも所持していないが、想定しろという方が酷だろう。むしろスージャやデドイはどれだけ用意周到なのか。他にランプに類するものを持っているのは二人だけだった。


「しょうがない。俺とお前のものを警戒ようにする。一つは結界内においてもう一つは温存だ」


 デドイは明るいランプを持っている一人に近づくと、「それを使う」と言った。


「は…?なんで俺の?」

「ランプは四つしかない。俺とスージャのものはもう使っている」

「いや、もう一人のでいいじゃんか」

「どちらにせよ同じことだ」


 渡すのを渋っていた受験生はさらに表情を硬くする。スージャは天を仰いだ。まぁ、ぼんやりと硬く重苦しい天井が見えるだけだが。


「だいたいなんだよお前?試験官に偶然任されただけのくせに!」

「…」

「あーあ、これはヒートアップするな」


 スージャは小声でトワにこぼす。しかしトワは思うのだ。レドはデドイに任せた。トワだったらスージャに任せる。そこに何か、理由があるのではないかと。


『ーーお前の腕前見せてもらおう』


 金色に輝くバッジが高々と掲げられた。


「見ろ、これを」


 問答していた受験生でなく、ほぼ全ての受験生の視線が吸い寄せられた。星のような五芒星の形をしているバッジは僅かな光ですら反射し輝いていた。


「俺はこれをレド試験官から預けられた。このバッジの意味を知っているか?ーー隊長だ。あの人はただの人類解放戦線の一兵士ではない。この第三都市の戦闘部隊において隊長を任されている。その証であるバッジを俺に預けたんだ」


 デドイは一区切りし、息を吸い込んだ。


「そして俺は外での経験がある。言っている意味はわかるな?どうせ誰かがここの指揮を取らねばならない。お前が取るか?出来るのか、お前に」


 距離を詰められた例の受験生はサッと目を逸らした。


「…俺を信じろ」


 先ほどより声は大きくなかったが、低い声はよく響いた。スージャは後ろでにこにこというほどではないが、微笑をたたえていた。


「なんだあいつ、やっぱり結構素直だな」

「そうなんですかね…」

「ああ、そうだよ。レドさんの言ったことを考えて行動できる奴だ。どうせ、チームでの戦いの経験が欠けてたんだろう」

 

 頭の後ろで腕を組み、スージャはデドイを眺める。


「俺もそうだった。リャックが自分みたいに動けないのをイライラして…努力が足りないって当たったり。あいつと俺のできることがちがうのは当たり前なのにな」


 その顔は昔を思い出しているのだろう、デドイではない誰かを見ている。過去の自分だろうか。


「リャックさんと長いんですね」

「ああ、言ってなかったか、あいつは俺の弟なんだ」

「へぇ…」


 ぱっと見が似ていないので気が付かなかったが、言われてみればどちらも黒い瞳をいる。が、共通点はそれしかなく、黒い目などありふれたものだ。気づけという方が無理だ。

 トワとスージャが雑談しているうちに色々と決まったらしく、スージャとデドイは自分たちのランプを通路に置き、連携を取り慣れているリャックがサポートに入った。なんの因果か、遠距離の人数が少なく、スージャたち以外に知り合いもいないためトワも一緒だ。

 デドイの組が一番最初なのは本人曰く、「指揮官たるもの、腕が立つことを証明せねば」だそうだ。18人6組であるため、30分間5分ごとに交代となった。

 しばらくは試験中も見かけたような低級が時たま這ってくるだけであった。結界内の受験者も大人しくしている。飲み物もレドが戻ってくるまでは各自の管理になった。


 …ズ、…ズズ


「何か来たな」

「ああ」


 デドイのランプに揺られて、怪物の影が踊る。姿を現したのは、レドが倒したものと同型のものだった。

 結界内の受験生から悲鳴が上がる。5級はあるだろう。鰐のような、馬のような…。ぼさぼさの緑の立髪は風に揺られてはためき、飛び出た目は白目が黄色く瞳孔が赤い。何より、その全身は鱗に覆われていた。上手く使わなければ刀の方が弾かれ、最悪折れてしまうだろう。

 いくらなんでも、デドイ一人で対処できる相手ではない。スージャも救援に向かう。


「倒せそうになかったらいつでも結界内に引っ込んでいいんだからな」

「ぬかせ」


 デドイが切り掛かった。普通の刀よりも、厚く長い。重みのあるはずのそれを、普通の刀の如く扱いガンッ!と鈍い音を響かせた。


「チッ!顔を狙ったんだがな!」


 跳躍から着地したデドイに尾が襲いかかる。咄嗟にデドイは刀で防御した。

 その隙をスージャが見逃すはずがなく、振り返った異形のものに二度の斬撃を与える。片目が潰れた。


(行ける…俺は実践経験はあまりない、気を引いて少し傷を与えるだけでいい。デドイをサポートするんだ)


 トワは、震えていた。彼女はまだ復讐の炎が滾っていた時から道場に通い始めた。自衛のために通っている人もいたし、人類解放戦線への就職を志し通う者もいた。ある程度の腕になれば、時々実践として7、8級と戦うのだ。

 しかし、今は安全が保障されていない、本番だ。デドイとスージャに加勢すべき?足手纏いになるかもしれない。それよりもスージャが抜けた右側を警戒している方が、まだ…。

 そこまで思考しトワはチラリ、と異形のものを見た。


(…?)


 微かな違和感。


(どこ、どこ、どこが変?…あれも元は動物だったはず…。今まで見た似てる動物。馬?牛?…!!)


「首よ!!」


 考えるより早く、トワの口は叫んでいた。


「首が全然動いてないわ!」


 その言葉を聞き、スージャが素早く後ろに回り込み、その頭が動きを追おうとした瞬間、デドイは首に刀を叩きつけた。


「なるほど、首に治りかけの傷がある。そこに鱗はない」


 首からどくどくと表しようのない色をした液体が流れ出る。


「スージャ、もう一度…スージャ?」


 顔を上げることもせず蹲る影。長い髪がさらにその表情を見にくくしている。


「…足を挫いたみたいだ。すまないデドイ。俺はいい。あいつの気を引いてくれ」

「何を言っている!怪我人が出たら結界の中へ引き込むことに決まっている!」

「デドイ!!」


 スージャの叫びは土煙に巻き込まれた。


「げほっげほ!」


 デドイがなんとかスージャを運び、なんとか無事なようだ。


(まずい…どうすればいい?落ち着け、スージャは足を捻っただけだ。大怪我をしたわけではない。結界に運ぶ。だがこいつをどうするか。見たところ、対抗できそうなやつはほぼいない。籠るか、レド隊長が戻ってくるまで)


「デドイ、まだ来るぞ…」

「分かっている。お前は邪魔だ。結界内にいろ」

「言い方…」


 スージャは力無く笑う。どこか他の部位も打ったのだろうか。体の動きは全体的に緩慢だ。


 ヒュッ


 石がコツリ、と異形のものに当たった。


「こっちよ!」


 トワは再び石ーー瓦礫の破片を投げ、声を張り上げた。

 巨体はゆっくりと振り向く。その鋭い隻眼がトワの姿を捉える。


「ひっ」


 体が縛られたように動かない。


(お願い…動いて……!)


 腕は震えながらも刀を掴んだ。しかし、まともに戦えるかどうかは非常に怪しい。時間を稼ぐだけでいい、とトワが心を決めた瞬間…


 ビュッ!


 トワの背後からさらに石が飛んだ。


「あいつらだけにカッコつけられてたまるかよ!」


 一人が結界から飛び出しさらに別の方向に注意を引いた。


「そ、そうだ、俺たちだって人類のために戦うんだ!」


 受験生たちが一斉に結界から出て雨のような礫を降らせた。敵が急に増えたことを察知したのか、異形のものは背を向けて防御する。そう、必然的にデドイとスージャの方を向いた。


「…!!」


 慌てて担いで逃げようとしたデドイをスージャは手で静止した。


「いい、俺たちは勝てる。お前は気を引いてくれ」

「何を言っている、数で押し切れても死者が出た時点で敗北だ!」

「…俺を信じろ」


 手は、自然と離れた。


(気を引くしかない!!)


 素早く動くデドイを異形のものは目で追った。チラリとスージャを見れば壁際までゆっくりと退避しているのが確認できた。だが目をつけられればお終いだ。やはり無理矢理でも結果以内に連れて行くのがよかっ


「「「ーーファルメ!」」」



 光の輪が、空間を満たした。星の軌道を描くように拡がり、そして堕ちていくように一点に集中。


「綺麗だ…」


 誰かがつぶやいた。

 数秒にも満たない間に存在した宇宙は収束し、光に縛られた異形のものだけが残った。


「…」


 デドイは息を切らしながらも刀を手に近づき、その首に突き立てた。

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