ラグナアント掃討作戦(4)
『B09よりB02へ、作戦ポイントを目視』
先頭のB09が高い丘を越えると目標地点確認の報告が入る。
「B02よりB07及びB08へラインを上げてB09を支援。作戦ポイントの安全を確保せよ。指揮管制、坑道探索用のドローンによる先行探査を要請」
『了。探査用ドローン射出、坑道内の探査開始する』
指示と同時に、左右に展開していた2機のラグーンと6機の戦闘ボットがB09に合流するために増速する。
同時に背後からいくつもの射出音が響く。指揮車よりドローンが射出された音だ。太い矢尻のような物体が空中で展開し飛んでいく。
クオンの頭上を越えていくつものドローンが丘の先へと消えていく。
「サクヤ、01及び02ボットを両名のポジションへ配置」
『両名の代わりに周辺警戒に入ります』
「地表データを解析結果は?」
『観測データに異常なし。周辺の地盤は安定しているようです』
各ユニットが収集したデータを纏めたサクヤが報告を上げる。
メットのスクリーンに各種情報が映し出される。
比較データとして事前調査データも一緒に表示されている。
「B02よりB01へ搾取周辺の地盤は安定している模様。予定通り丘の登頂部に陣地を築くのが最適と思われます」
データに目を通し異常がない事を確認したクオンは指揮所へ報告する。
『予定ポイントにて陣地を設営します。B02は作戦ポイント及び設営ポイントの安全を確保せよ』
「了。B07からB09については作戦ポイントの確保を継続。本機を含む残りユニットは、設営ポイントの安全を確保する。尚、周辺1㎞に敵対生物が存在しないことを確認するまで戦闘隊形を維持」
『『『『『『了』』』』』
クオンのラグーンが丘を越える。
前方ではB09をはじめとするグループが、作戦ポイントである巣穴の入り口へと向かっていく。今のところ周辺には少数のラグナアントしか確認できない。
「これだけ巣穴に近づいているのに探知に掛かる数が少ない。サクヤ、中はどうなっているの?」
『入口付近に少数の群と接敵しましたがドローンの兵装で処理できる程度です。現在、内部を索敵していますが、大規模な群やコロニーの発見には至っていません』
ここに至るまで小規模の群を潰して来たが百を超すような群には遭遇していない。
ラグナアントは敵性生物を見つけた際には百を優に超す群れで攻撃をするとあり、攻撃性も非常に高いとの情報を得ている。
本格的に巣をつつく前なのでこんなモノかもしれないが、クオンは妙にひっかかった。
「他の部隊の遭遇情報は?」
『取得可能な範囲では、ここから北へ50㎞地点で中規模の群を発見。掃討したとの報告が入っています』
「1件だけ?」
『肯定。中規模の群の発見情報は1件のみです』
「広域マップを表示、全ての交戦ポイントをMAPに反映」
『了』
MAP表示が広域表示へと切り替わり、交戦ポイントに×印が付けられる。
五十を超える印が各部隊の移動経路を中心に表示されており、各部隊とも順調に掃討を進めていることが見て取れる。
MAP上に表示された情報を見ておかしな点がないかと確認するクオンだったが、不審な点は見つけられなかった。
『B01より指揮下ユニットへ、設営開始せよ』
『『『『『『了』』』』』
丘を登り切った指揮車両群が停車して、荷下ろしが開始される。
最初は白い長方形コンテナを積載してきた車両からだ。
完全に接地するとコンテナからパイルが複数本地面に打ち込まれ、コンテナをその場に固定していく。その後、左右の壁が開かれ中から新しい壁が押し出されていく。更に縦方向にもコンテナ一つ分の広がりを見せた。
展開が完了すると、そこには元のコンテナの六倍容積を誇る建物が完成していた。
簡易の倉庫兼居住空間だ。ラグナアントの掃討が完了するまで、ここがクオン達の寝床となる。
荷台が空いたコンテナ車両はその場に留まり、施設へのエネルギー供給装置として役目と監視台として有効活用されることになる。
わずかの間に、簡易の施設が設営されていく。
クオンはその設営の様子を見守りながら警戒を続ける。すると作戦ポイントを確保に動いていたフロントから小さな発砲音が届いた。
「B09、発砲音を確認した状況を知らせよ」
『B09よりB02へ、岩の隙間に潜り込んでいたラグナアントを確認処理した。現在、他の個体が紛れていないかボットに確認させている。巣穴の入り口については、火炎放射装備のボットを張り付けて警戒させている』
「了」
報告を受けたクオンは、周囲に大きな岩場などが無いかを確認する。
「B02より指揮下ユニットへ、ターゲットが隠れている可能性がある岩場をボットにて確認せよ。ターゲットを発見した場合、すみやかに処理」
『『『『了』』』
クオン自身も通常兵装である3機のボットに実行命令を出し処理をさせる。
すると何機かがラグナアントを発見する。どうやらB09が発見したラグナアントは岩の隙間に偶然潜り込んだ訳ではないようだ。
「サクヤ、この情報をネットワークに警戒情報としてアップ可能?」
『肯定』
「なら即座に実行」
『了』
ラグーンのモニターにデータリンクの推移を知らせるバーが映し出されるが、あっと言う間にバーの隙間が埋まりリンクが完了する。
表示する必要があるのかとクオンは疑問になったが、無駄口を叩くと評価に影響が出そうなので言葉を嚙み殺した。
『B01よりB02へ、警戒デッキの構築を完了した』
「了。B02よりB05へ、ラグーンからの降車し警戒デッキにて全周警戒」
「了」
1機のラグーンが停車し、B05と呼ばれたスレイブユニットが設営された警戒デッキに上る。武装は携帯と連射性に優れたスナイパーライフルだ。
B05は指揮下で最も遠距離射撃の評価値が高いため、この役割を与えた。
もっとも後続として残ったユニットは、中&遠距離射撃を得意とする者で構成されているので誰が上がっても似たり寄ったりだったりする。
警戒デッキが1つできあがる度に、ユニットがラグーンから下車しデッキに挙がっていく。3つ目の警戒デッキが出来上がると程なく簡易拠点が完成する。
それを証明するように小さな光が各所に灯る。
作戦ポイントと設営ポイントの安全が確認され、クオンがラグーンから降車したのはそれから三十分後の事だった。




